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M&Aの相談先・窓口・センターを徹底比較!無料相談の活用方法も解説

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事業承継やM&Aを考え始めたとき、「誰に相談すればいいのか?」「うちの会社に合った相談先はどこだろう?」と迷う経営者は少なくありません。

M&Aの相談先には、仲介会社・コンサルティング会社・金融機関・公的機関などさまざまな選択肢があり、それぞれに特徴や得意分野があります。

この記事では、相談先ごとの違いや選ぶポイントに加えて、無料相談を上手に活用する方法についても、わかりやすく解説していきます。

ジーケーパートナーズでは企業再生や事業承継、M&A支援に加え、債務超過の状態からの再生や、私的整理ガイドラインを活用した事業譲渡などのスキームにも対応しています。

中小企業活性化協議会の外部専門家として培った豊富な実績とノウハウを活かし、一般の仲介会社では対応が難しい複雑な案件でもご相談いただけます。

「うちのケースでも大丈夫かな?」とお悩みの方も、まずはお気軽に無料相談会にご参加ください。

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M&Aとは?読み方・意味を簡単に解説

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」を意味します。

具体的には、複数の会社が一つになる「合併」や、ある企業が他の企業や事業を買い取る「買収」など、会社や事業の枠組みを再編する取り組み全般を指します。

M&Aは、次のようなさまざまな目的で活用されます。

  • 事業の拡大や新分野への参入
  • 後継者問題の解決(事業承継)
  • 経営の立て直しや再建策としての活用

また、買い手側のメリットには、下記の利点があります。

  • 既存事業の拡大
  • 新規事業へのスピード参入
  • 技術・人材の獲得
  • シナジー(相乗効果)の創出

一方、売り手側のメリットには、下記などの大きな魅力があります。

  • 事業承継問題の解決
  • 経営者の負担からの解放
  • 事業の成長と存続
  • 売却益の獲得
  • 非収益事業の整理

主なM&Aの手法は、

  • 経営者の株式譲渡(会社のオーナーが株を売却)
  • 事業譲渡(会社の一部の事業だけを売却)
  • 会社分割(特定の事業を切り出して別会社にする)

などがあり、近年では中小企業の事業承継対策としてもM&Aの活用が広がっています。

 

M&A相談先・相談窓口・センターの種類と特徴

M&Aの相談先は、大きく分けると以下の窓口やセンターがあります。

  • M&A仲介会社/事業承継・M&Aコンサルティング会社
  • 士業(弁護士・公認会計士・税理士など)
  • 金融機関(銀行・証券会社・信用金庫など)
  • 公的機関(事業承継・ 引き継ぎ支援センターなど)

各相談先にはそれぞれ得意分野や支援スタイルの違いがあるため、企業の規模や目的、求めるサポート内容によっては、最適な相談先は変わってきます。

このあとの章では、それぞれの特徴やメリット・注意点について詳しく解説していきます。

関連記事|M&A支援機関とは?M&A支援機関を利用するメリットをご紹介

M&A仲介会社/事業承継・M&Aコンサルティング会社

M&A仲介会社は、売り手と買い手の両方に関与して取引を進めていくのが特徴です。

マッチングから交渉、契約の締結までを一貫してサポートします。

M&Aに特化した専門知識や豊富なネットワークを持ち、企業価値の評価(バリュエーション)、買い手候補の選定、スケジュール管理など、M&A全体をトータルで支援してくれます。

一方で、事業承継・M&Aコンサルティング会社は、M&Aに限らず、経営課題の整理、後継者不在問題の解決、事業承継計画の立案など、より広い視点からの支援が可能です。

実際には、コンサルティング会社がM&A仲介も行っていたり、仲介会社がある程度の経営アドバイスを提供していたりと、両者の業務は重なっている部分も多く、明確な線引きが難しい場合もあります。

M&A仲介会社のメリット:

  • M&Aに特化した高い専門性
  • 相談から成約までのワンストップ対応

M&A仲介会社のデメリット:

  • 仲介手数料が高額になるケースがある
  • 売り手・買い手双方から報酬を受け取るため、完全に中立な立場とも言えません(※依頼者の利益だけを優先するとは限らない)

ジーケーパートナーズでは、企業再生のコンサルティングとM&A仲介の両方に対応できる専門会社です。

また、債務超過企業に特化したM&Aマッチングサイト「Reset M&A」も運営しています。

士業(弁護士・公認会計士・税理士)

弁護士、公認会計士、中小企業診断士などの士業は、それぞれの専門知識を活かしてM&Aを支援します。主な役割は以下のとおりです。

  • 弁護士:M&Aに関連する契約書の作成やリーガルチェック、法的リスクを管理し、トラブル回避のために重要な役割を果たします。
  • 公認会計士:財務・税務デューデリジェンス(調査)や、企業価値の算定、税務上のアドバイスを行います。買収金額の妥当性判断などに不可欠です。
  • 中小企業診断士:経営状況の分析や、事業の引き継ぎに関する助言を提供します。

顧問契約を結んでいる士業がいる場合、自社の事情をよく理解しているため、相談しやすく、依頼者の立場に立ったアドバイスが期待できます。

ただし注意すべきことは、M&A全体のプロセスを一貫して支援できる士業は限られており、買い手・売り手のネットワークも乏しいケースが多いため、M&A仲介会社など他の専門家との連携が必要となります。

金融機関(銀行・信用金庫・証券会社)

銀行や信用金庫などの金融機関も、M&Aを専門とする部署を設けて企業のサポートを行っています。

取引先企業との長年の関係性を活かし、財務に関する知識や広範な企業ネットワークを背景に、買い手・売り手の紹介やマッチングが可能です。

特に大手金融機関には、M&Aに精通した専門人材が在籍しており、資金調達などの面でも強力なサポートが期待できます。

ただし、以下のような点には注意が必要です。

  • 最低手数料が高額なケースが多く、中小企業にとっては利用しづらい場合があります
  • 組織の規模が大きいため、対応に時間がかかるなど、柔軟な動きが取りづらいこともあります

そのため、金融機関を活用する際は、自社の規模や目的に適した支援体制かどうかを見極めることが重要です。

公的機関(商工会議所・事業承継 引き継ぎ支援センター)

事業承継・引継ぎ支援センターは、全国各地の都道府県に設置されている公的な支援機関で、中小企業や小規模事業者のM&A(企業の合併・買収)や事業承継を無料で支援しています。

このセンターは国が運営する事業であるため、特定の利害関係に縛られず、中立的な立場から公正なアドバイスを行います。

必要に応じて、買い手や後継者とのマッチング(引き合わせ)支援も実施しています。

地域密着型の取り組みで、全国に相談窓口があり、小規模なM&Aにも柔軟に対応できるのが大きな特徴です。

一方で、以下のような制約もあります。

  • 大規模なM&Aや複雑な手続き(スキーム)には対応が難しいことがあります
  • プロジェクト全体を細かく管理・進行してくれる体制は十分とは言えない場合があります

そのため、支援の内容や範囲を事前に確認し、自社に合った活用方法を検討することが重要です。

ジーケーパートナーズでは、企業再生のコンサルティングM&A仲介の両方に対応できる専門会社です。

通常のM&A仲介会社では取り扱いが難しい債務超過の案件にも、当社の企業再生ノウハウを活かして、柔軟に対応できます。

「この状況でもM&Aできるのか?」とお悩みの方も、まずはお気軽に無料相談会へご参加ください。

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M&A相談の流れと無料相談の活用法

M&A(企業の合併・買収)は、最初の相談から契約の締結・実行(クロージング)まで、一般的に6つの段階に分かれて進行します。

各ステップでは必要となる専門知識や手続きが異なるため、段階ごとの理解と準備が非常に重要です。

ここでは、

  • M&Aの6つの基本ステップの内容
  • 各段階で注意すべきポイント
  • 無料相談を効果的に活用する方法

について、わかりやすく解説します。

①初回相談・準備段階

M&Aを進める最初のステップは、売り手・買い手のそれぞれが目的を明確にし、専門家に相談することです。

売り手と買い手が準備するポイントは、下記の通りです。

  • 売り手は、事業を売却する理由(後継者不在・事業整理など)や、希望する条件(譲渡金額、タイミング、雇用維持など)を整理します。
  • 買い手は、買収の目的(事業拡大、シナジー獲得など)や、希望する業種・地域・企業規模などを具体化しておくことが重要です。

この段階では、M&A仲介会社、弁護士などの専門家と面談し、M&Aの流れや利点・注意点を理解することが大切です。

自社の状況に合った戦略や選択肢を検討するための貴重な機会になります。

また、多くのM&A仲介会社や公的機関では無料相談を実施しています。

相談の効果を最大化するためには、事前に以下の点の確認・準備をしておきましょう。

  • 自社の財務状況・事業内容・M&Aを検討する理由を簡潔に整理しておく
  • 相談先の報酬体系(着手金・中間金・成功報酬など)を詳しく確認する
  • 匿名での相談が可能な場合もあるので、情報漏洩が不安な方は活用を検討
  • オンライン相談や出張対応があるかも確認し、柔軟に選ぶ

無料相談をうまく活用すれば、M&Aの基本的な理解が深まり、自社にとって最適なパートナーや進め方を見つける手がかりになるでしょう。

関連記事|M&A仲介会社の選び方!FAとの違いやトラブルの回避方法を徹底解説

②企業価値の評価

M&Aを進めるうえで次に重要になるのは、適正な取引価格の算定です。そのためには、対象企業の財務的な価値や将来性を数値として評価する必要があります。

この評価では、企業が保有する資産の内容や収益力だけでなく、将来の成長可能性、業界の市場環境、経営戦略といった非財務的な要素も含めて総合的に判断します。

企業価値の評価には、次のような3つの主要なアプローチがあります。

  • コストアプローチ(原価法):企業が保有する資産を現在の時価で評価します。不動産や設備などの価値を基準とする方法です。
  • マーケットアプローチ(市場比較法):同じ業種・規模の類似企業のM&A事例や株式価値などを参考にして評価します。
  • インカムアプローチ(収益還元法):将来にわたって得られると見込まれるキャッシュフロー(現金収入)を、現在の価値に割り引いて評価する方法です。将来性を重視する際に用いられます。

これらの評価は、公認会計士やM&Aアドバイザーなどの専門家が客観的かつ正確に行うことが重要です。

正しい企業価値を把握することで、適正価格での交渉やトラブルの防止につながります。

③候補企業の選定

企業価値の評価が終わったら、次のステップは売り手・買い手それぞれにとって最適な相手企業を探す「マッチング」プロセスに進みます。

  1. ロングリストの作成(候補の幅広い抽出)

まずは、買収・譲渡の対象となる企業候補をできるだけ幅広くリストアップし、「ロングリスト」を作成します。この段階では、自社の事業戦略や条件に合致する可能性のある企業を広く選定します。

  1. ショートリストへの絞り込み

次に、抽出した候補を以下のような複数の視点から評価・選別していきます。

  • 事業内容や顧客層の相性
  • 地域・業種の重なり
  • 経営陣や従業員の意向 など

これにより、よりマッチ度の高い候補を絞り込んだ「ショートリスト」が完成します。

  1. 売り手・買い手それぞれのアプローチ

売り手側では、まず自社の情報を特定されない形でまとめた「ノンネームシート(匿名の企業概要書)」を作成し、候補の買い手企業に提示します。

関心があるかどうかを確認するための第一歩です。

買い手側は、業界動向や競合状況などの市場調査や業界分析を通じて、戦略的価値の高い企業を特定し、アプローチしていきます。

  1. 情報管理の重要性

このマッチングの段階では、秘密保持が非常に重要です。

情報が漏洩すると従業員や取引先との関係に悪影響が出る恐れがあるため、情報開示の範囲やタイミングに注意しながら、慎重かつ効率的にマッチングを進めることが成功のカギとなります。

④交渉・基本合意の段階

この段階では、売り手と買い手がM&Aの基本的な条件について本格的な交渉を行い、取引の枠組みを固めていきます。

まず、企業概要書(IM:インフォメーション・メモランダム)の提示を受けた買い手は、トップ同士の面談や現地訪問(デューデリジェンス前の視察)を通じて、企業の実態を確認します。

そのうえで、以下のような重要事項について協議を行います。

  • 譲渡価格(売却金額)
  • 買収の対象範囲(事業全体か一部か、資産のみか株式か、など)
  • M&Aの実行予定日
  • 独占交渉権の有無(一定期間、他社との交渉を控えるかどうか)
  • 秘密保持に関する取り決め

これらの条件が大筋で合意に至った段階で、「基本合意書(LOI:Letter of Intent)」と呼ばれる文書が作成されます。

基本合意書は、M&Aを進めるうえでの出発点となる重要な文書です。

通常、価格やスキームなど大半の項目には法的拘束力がないことが多いですが、秘密保持条項や独占交渉権など、一部の条項には法的拘束力を持たせることが一般的です。

この基本合意書の段階で条件があいまいなまま進んでしまうと、後の最終契約段階でのトラブルにつながる恐れがあります。

そのため、譲渡価格の考え方やスケジュール、交渉のルールなどをできるだけ明確に定めておくことが重要です。

⑤最終調整・契約締結

基本合意の後に「買収監査(デューデリジェンス)」と呼ばれる詳細調査が行われ、その結果をもとに最終的な取引条件を詰めて契約を締結する段階へと進みます。

デューデリジェンスとは、買い手側が対象企業の財務・法務・税務・労務・ビジネス面の実態を詳しく調査するプロセスです。

ここで発見された課題やリスクに基づいて、以下のような調整や交渉が行われます。

  • M&A価格の見直しや減額の提案
  • 契約締結前に解決しておくべき問題点の指摘
  • 契約条件の再確認や修正要求 など

また、買い手からの提案に対し、売り手はその内容を精査し、納得できない点については交渉を行う必要があります。

特に、金額の調整やリスク分担の範囲については、丁寧なすり合わせが求められます。

そして、最終的な条件に双方が合意すれば、法的拘束力を持つ「最終契約書(最終譲渡契約書)」を作成・締結します。

この契約は、基本的に締結後のキャンセルはできないため、以下の点が極めて重要です。

  • 契約書の条文を細かい部分まで丁寧に確認する
  • 曖昧な表現を避け、将来のトラブル防止につながる明確な記述とする
  • 専門家(弁護士・公認会計士等)による最終チェックを必ず受ける

⑥クロージング・統合段階

最終契約書を締結したあとは、その契約内容に基づいてM&Aを実行し、企業や事業の権利を正式に移転する最終段階に入ります。これを「クロージング」と呼びます。

権利の移転のための取引実行(クロージング)の方法はその形態によって異なります。

  • 株式譲渡の場合:株式を買い手に引き渡し、その対価(売却金額)を売り手に支払います
  • 事業譲渡の場合:設備・顧客・契約など、譲渡対象となる事業資産の移転手続きを行います

あわせて、以下のような法的・実務的な手続きも進めていく必要があります。

  • 独占禁止法に基づく公正取引委員会への届出(一定規模以上のM&A)
  • 株主や債権者への通知・承諾取得
  • 従業員の雇用契約の引き継ぎ(事業譲渡の場合は再契約が必要)

ただし、M&Aの完了はあくまで「スタート」に過ぎません。

取引成立後は、PMI(Post Merger Integration/ポスト・マージャー・インテグレーション)=統合プロセスが重要となります。

PMIでは次のような対応を行います。

  • 組織や人員体制の再編・統合
  • ITシステムや業務フローの整合・統一
  • 企業文化・価値観の融合
  • ブランド・顧客対応の調整 など

この段階では、継続的なモニタリング柔軟な調整が成功のカギを握ります。

PMIの成否が、M&A全体の成果やシナジー効果の実現に大きく影響するため、計画的かつ丁寧な対応が求められます。

 

まとめ

M&A成功のカギは、自社に合った適切な相談先を選ぶことです。

M&Aの支援を行う専門家にはさまざまな種類があり、それぞれに得意分野や特徴があります。

  • M&A仲介会社:交渉・マッチングの専門家
  • 士業(弁護士、公認会計士、税理士など):契約や財務・法務のプロ
  • 金融機関:資金調達や企業ネットワークに強み
  • 公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター等):中立的で費用負担が少ない支援が可能

そのため、自社の目的(事業承継、成長戦略など)や規模、状況に応じて、最適な専門家を見極めて選ぶことが必要不可欠です。

M&Aは「初回相談」から「クロージング(取引完了)」までいくつかの段階に分かれて進みます。

それぞれの段階で必要となる専門知識や実務対応を事前に理解しておけば、手続きもスムーズに進められます。

特に初期段階では、無料相談を活用して複数の専門家の意見を比較検討することが重要です。

さまざまな立場の意見を聞くことで、偏りのない判断材料が得られ、自社にとって最適な進め方を見つけやすくなります。

 

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債務超過企業を買収するメリットは?価格設定やポイントを徹底解説

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債務超過に陥った企業の買収は、一般的には買い手にとってリスクが高いと思われがちです。

しかし実際には、買い手にとって大きなメリットがあるケースも多く存在します。

本記事では、債務超過企業のM&Aについて基本的な考え方買い手側のメリット価格の決め方会計処理の注意点といった重要なポイントを、わかりやすく解説しています。

債務超過企業の買収や再生に関心のある方は、ぜひご一読ください。

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債務超過とは?

債務超過とは、会社が抱えている負債の合計が、保有する資産の合計を上回っている状態を指します。

つまり、すべての資産を売却しても、借金を返しきれない状況のことです。

債務超過かどうかは、貸借対照表(バランスシート)を見れば判断できます。

資産合計から負債合計を引いた結果である「純資産」がマイナスになっていれば、その会社は債務超過の状態にあるといえます。

たとえば、資産が1億円、負債が1億2,000万円ある場合、純資産は -2,000万円となり、債務超過に陥っていることになります。

この状態は、「株主資本(出資)」が失われており、株主が出資したお金以上の損失が発生していることを意味します。企業の財務状態としては、非常に深刻な状況です。

債務超過は即倒産ではない

債務超過に陥ったからといって、すぐに倒産するとは限りません。

実際には、債務超過の状態でも事業を継続している企業は数多く存在します。

債務超過を解消する方法には、以下のような選択肢があります。

  • 本業による利益の積み上げ
  • 増資による自己資本の強化
  • 債権者との交渉による債務免除
  • 不動産や株式などの資産の再評価 など

こうした手段を組み合わせることで、債務超過を解消できる可能性は十分にあります。

最も重要なのは、キャッシュフロー(資金の流れ)をしっかり確保しながら、計画的に財務改善を進めることです。

冷静に現状を見つめ、適切な対策を講じることで、事業再建への道は開けます。

中小企業の債務超過は珍しくない

中小企業が債務超過に陥ることは、実はそれほど珍しいことではありません。

その背景には、以下のようなさまざまな要因があります。

  • 景気変動の影響を受けやすい事業構造
  • 設備投資や新規事業の失敗
  • 主要取引先の突然の倒産
  • 経営者の病気や不慮の事態による経営機能の低下

また、中小企業は大企業に比べて資本基盤が弱く、わずかな赤字やトラブルでも債務超過に陥りやすい傾向があります。

しかし、その一方で、中小企業は意思決定のスピードが早く、柔軟な対応が可能です。

加えて、金融機関や支援機関からのサポートを得られれば、再建できるケースも多くあります。

大切なのは、問題を抱え込まず早めに専門家に相談し、的確な対応をとることです。

関連記事|債務超過とは?原因と解決策を解説|債務超過の解決策も紹介

 

債務超過企業を買収するメリット

債務超過の企業を買収することは、一見リスクが高いように思われがちですが、実は買い手側にとって多くのメリットがあります。

特に、コストや税務面、事業成長の観点から、意外なほどの効果が得られるケースも少なくありません。

主なメリットは次の通りです。

  • 資産の取得コストを大幅に抑えられる
  • 合併の場合、一定の条件を満たせば節税効果により将来の税負担を軽減できる
  • 事業シナジーによって相乗効果が得られる
  • 短期間での事業拡大が実現できる

以下で詳しい内容を解説します。

1. 資産の取得コストを大幅に抑えられる

債務超過の企業は財務的に厳しい状況にあるため、保有する資産を市場価格よりも大幅に安い金額で売却せざるを得ないケースが多く見られます。

このような状況をうまく活用すれば、買い手企業は、通常よりもはるかに低いコストで、価値の高い資産(不動産、設備、知的財産など)を取得することが可能になります。

特に、売り手企業が早急に資金を確保したい事情を抱えている場合には、売却価格がさらに下がることもあり、買収側にとっては非常に有利な条件で交渉を進められるチャンスとなります。

2. 合併の場合、一定の条件を満たせば節税効果により将来の税負担を軽減できる

債務超過の企業は、一般的に過去の赤字による「繰越欠損金」を多く抱えていることが特徴です。

この企業を買収し、合併した後に事業が黒字化すれば、一定の条件を満たすことで、その繰越欠損金を将来の利益と相殺することが可能になります。

その結果、法人税の課税対象となる所得が減るため、税金の負担を大幅に軽減できる可能性があります。

この節税効果により、買収後の数年間にわたってキャッシュフローの改善が見込める点は、買い手企業にとって大きなメリットとなります。

3. 事業シナジーによって相乗効果が得られる

債務超過の企業であっても、優れた技術力、安定した顧客基盤、ブランド力などの無形資産を保有している場合があります。

こうした経営資源を自社の事業と組み合わせることで、相互に補い合う「シナジー効果」を期待できる点も、大きなメリットの一つです。

たとえば、売り手企業の研究開発部門に高い専門性があれば、自社が不足している分野をすぐに強化できる可能性があります。

また、売り手の顧客ネットワークを引き継ぐことで、自社製品の販路を拡大し、市場シェアを広げることも可能になります。

このように、財務状況だけでは見えない「隠れた価値」に着目することで、戦略的な成長につなげることができます。

4. 短期間での事業拡大が実現できる

新たに事業を立ち上げる場合、人材の採用、設備の整備、市場の開拓などに多くの時間とコストがかかります。

ゼロからのスタートは、リスクも大きく、成果が出るまでに長い時間を要するのが一般的です。

しかし、債務超過の企業を買収すれば、既に整っている事業基盤(人材・設備・顧客・ノウハウなど)をそのまま活用できるため、初期コストを抑えながら、短期間で事業を拡大することが可能になります。

特に、新しい市場への参入や事業領域の拡大を目指している企業にとっては、このような「時間的な優位性」は、競争力を高めるうえで非常に大きな価値を持ちます。

 

債務超過企業の買収価格はいくら?

債務超過企業の株式譲渡価格は、一般的に1円または実質0円で設定されることが多いです。

これは、企業の負債が資産を上回っており、帳簿上の純資産がマイナスになっているためですが、実際には企業の将来性や保有する資産の内容によって、一定の価格が付くケースもあります。

たとえば、有望な技術、人材、ブランド、取引先との契約などが評価される場合です。

詳しくはこのあと解説しますので、ぜひ参考にしてください。

基本価格は1円が一般的

債務超過の企業では、資産より負債の方が多いため、株式には実質的な価値がないと判断されます。

そのため、株式の譲渡価格は「1円」で取引されるケースが非常に多いのが実情です。

この「1円」は、会計上では「備忘価額(びぼうかがく)」と呼ばれ、帳簿上に資産がまったくないわけではないものの、価値がほぼゼロであることを示す象徴的な金額です。

実際のM&Aの現場でも、債務超過企業の株式はこの備忘価額で譲渡される例が数多くあります。

そのうえで、別途債務整理や再生スキームを組み合わせて取引が成立するケースが一般的です。

将来性や資産価値で価格が変動する

一方で、債務超過の企業であっても、独自の技術力、優良な顧客基盤、ブランド力など、将来的な収益につながる資産を持っている場合は、株式の譲渡価格が1円や実質0円ではなく、一定の価値が認められるケースもあります。

特に、買収側がその企業の将来性や自社とのシナジー効果(相乗効果)を高く評価した場合、実際の譲渡価格が上昇することも珍しくありません。

このように、財務状況だけでなく、企業が持つ無形の強み成長ポテンシャルが、価格に大きく影響することがあります。

債務超過の状態は、放置すると状況が悪化しやすいため、早期の対応がとても重要です。

ジーケーパートナーズでは、負債整理から事業再生まで、会社の状況に合わせた最適な解決策をご提案しています。
専門家が丁寧にサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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債務超過企業買収時の会計処理4つのポイント

債務超過の企業を買収する際には、会計処理に関していくつか重要なポイントがあります。

これらを正しく理解し、適切に対応することが、買収後の財務リスクを回避するために欠かせません。

主な注意点は以下のとおりです。

  • 連結決算時の「のれん」の計上額は、債務超過の金額に連動する
  • 「のれん」の償却費が、決算における営業利益に影響を与える
  • 株式譲渡時の税務処理には慎重な対応が必要
  • デューデリジェンスで隠れた債務やリスクを洗い出すことが不可欠

これらのポイントについて、以下で詳しく解説していきます。

買収を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

1. 連結決算時の「のれん」の計上額は債務超過の金額に連動する

債務超過企業を買収する際、連結決算時の「のれん(営業権)」の金額は、債務超過の大きさと関係しています。

たとえば、債務超過企業を買収した場合、その企業の債務超過額と同じ金額ののれんが計上されるのが一般的です。

このように、買収金額と債務超過額の合計がのれんに反映されるため、財務への影響を事前に把握し、慎重に検討することが重要です。

2. 「のれん」の償却費が、決算における営業利益に影響を与える

買収によって計上された「のれん(営業権)」は、一定期間にわたって費用として償却する必要があります。

のれんは会計上では20年償却ですが、5年間で償却するケースが一般的です。

たとえば、のれんが5億円ある場合、5年間で償却すると、年間1億円ののれん償却費が発生することになります。

この償却費は、決算上の費用として処理されるため、営業利益を直接押し下げる要因になります。

そのため、買収を検討する際には、のれん償却による利益への影響をあらかじめ収益計画に織り込んでおくことが重要です。

3. 株式譲渡時の税務処理には慎重な対応が必要

債務超過企業の株式を譲渡する際には、通常のM&Aとは異なる税務上の取り扱いに注意が必要です。

特に重要なのが、株式の譲渡価格が1円や0円など極端に低い場合の税務処理です。

税務当局は、時価と大きく乖離した価格での取引について、場合によっては「寄付金(譲渡側)」や「受贈益(取得側)」とみなして、課税の対象とすることがあります。

また、買収後に繰越欠損金(過去の赤字)を活用して節税を図る場合でも、税法上の「引継制限」がかかることがあり、すべての欠損金がそのまま使えるとは限りません。

このように、適切な税務対応をしないまま買収を進めると、想定外の税負担が発生するおそれがあります。

そのため、債務超過企業の株式譲渡を検討する際は、税理士など専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが不可欠です。

4. デューデリジェンスで隠れた負債を確認する

債務超過企業を買収する際は、帳簿には記載されていない「簿外債務」の存在を見落とさないことが非常に重要です。

たとえば、未払残業代、社会保険料の滞納、未開示の訴訟リスクなどが後から発覚すると、それらの負担をすべて買収側が背負うことになる可能性があります。

通常のM&Aでは、こうした簿外債務が見つかった場合、「表明保証違反」として売り手に損害賠償を請求できる仕組みがあります。

しかし、債務超過企業の株式が1円や実質0円など極端に低い価格で譲渡される場合には注意が必要です。

このようなケースでは、損害賠償の上限も株式譲渡価格(=1円)に限定されることが多く、実質的に買い手が全てのリスクを負うことになりかねません。

このリスクを回避するには、会計士や弁護士などの専門家による徹底したデューデリジェンス(調査・精査)が不可欠です。

事前にリスクを把握し、契約条件に盛り込むことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

 

まとめ

債務超過企業の買収は、一見するとリスクが高いように見えるかもしれません。

しかし、適切な事前調査と戦略的な判断があれば、大きなビジネスチャンスに変えることができます。

たとえば、

  • 資産を低コストで取得できる
  • 合併の場合、一定の条件を満たせば繰越欠損金を活用することで、買収後の節税が可能
  • 既存の人材・設備・顧客を活かし、即座に事業を拡大できる

といった、買い手にとって魅力的なメリットが複数あります

一方で、連結決算時の会計面では「のれん」の計上とその償却による利益への影響に注意が必要です。

また、未払債務や法的リスクなど、帳簿に現れない負債(簿外債務)を事前に把握するための徹底したデューデリジェンス(精査)も欠かせません。

債務超過企業の買収を成功させるには、財務・法務・税務の専門知識と実務経験を持つ専門家の支援が不可欠です。

正しくリスクを見極め、的確な判断を行うことが、買収後の成果につながります。

 

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債務超過企業が解散できない3つの理由と解決策

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「債務超過で会社をたたみたいが、どうにもならない…」

そんな悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。

実は、債務超過のままでは通常の清算ができず、会社を解散するにも「壁」があります。

本記事では、その理由と解決策(私的整理・特別清算・事業譲渡を活用した再生型M&A)について、実務経験豊富な専門家が解説します。

ジーケーパートナーズでは、債務超過企業の整理・解散に関して、数多くの実績を持つ専門家が無料個別相談を実施中です。

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債務超過が法的に解散できない根本的理由とは

債務超過のままでは、会社を法的に解散することが難しい場合があります。

その主な理由は、下記の通りです。

  • 債権者への返済ができない限り、会社は消滅できない
  • 通常の清算では対応できず、「特別清算」が必要になる

このように、債務超過の企業がそのまま解散するには多くのハードルがあります。

次の章では、それをどう乗り越えるか—具体的な解決策について解説します。

債権者への返済ができない限り、会社は消滅できない

会社法481条では、会社の清算にあたって「清算人は債権の取立ておよび債務の弁済を行う義務がある」ことが定められています。

しかし、債務超過の会社では、全資産を処分しても借入金や未払い債務を完済することができません。

この返済義務は金融機関だけでなく、経営者や役員からの借入(役員借入金)も含まれます。たとえ1人でも債権者が残っている限り、法的に会社を「消滅」させることはできません。

また、会社法の根幹にあるのは「債権者の権利保護」という原則です。

債務超過の状態で資産が不足しているにもかかわらず、清算を進めれば、債権者が不利益を被る可能性があるため、会社を解散させることは許されません。

通常の清算では対応できず、「特別清算」が必要になる

債務超過の会社が清算を行う場合、資産が不十分なために通常の清算手続きでは債務を処理しきれません。

そのため、清算人が債務超過の可能性を認識した時点で、会社法511条に基づき、地方裁判所に「特別清算」の申し立てを行う必要があります。

この「特別清算」は裁判所の監督下で進められ、債権者の同意や債権放棄(債務免除)などを得ながら、適正な手続きで会社を消滅させる制度です。 つまり、債務超過の状態では、

  • 清算に必要な資産が不足しているので債務の返済ができない
  • 清算をしようとする手続きの中で清算人が債務超過かもしれないと判断したら特別清算の申し立てをする義務がある

といった理由から、法的な解散が難しくなるのです。

関連記事|銀行のリスケ拒否はなぜ起こる?返済猶予を断られたときにとるべき対策

 

債務超過企業が出口を見つけるための方法

債務超過に陥った会社が、経営からの「出口」を見つけるためには、以下のような法的手続きを検討する必要があります。

  • 特別清算
  • 破産
  • 任意整理(私的整理)

これらの手続きにはそれぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。

自社の財務状況や今後の方針に応じて、最適な方法を選ぶことが非常に重要です。

特別清算

特別清算とは、債務超過などの問題を抱えた会社が、裁判所の監督のもとで行う清算手続きです。

通常の清算では対応できない場合に選ばれる方法で、特に「債務の整理」が必要なケースで活用されます。

この手続きを選ぶ際は、あらかじめ債権者(金融機関など)と債務の一部免除(債権放棄)について同意を得ている、または同意が得られる見込みがあることが前提となるケースが多いのが特徴です。

特別清算には、次の2つの進め方があります。

  • 和解型特別清算

債権者一人ひとりと個別に和解契約を結び、それを裁判所が許可することで効力が発生します。柔軟な対応が可能です。

  • 協定型特別清算

すべての債権者を集めた「債権者集会」を開き、多数決によって債務整理の方針(協定案)を決議します。全体で合意形成を行う形式です。

破産

破産とは、会社が「支払い不能」の状態、つまり借金の返済がまったく見込めなくなったときに選ばれる手続きです(破産法第2条11項)。

申立ては、債務者(会社側)だけでなく、債権者(金融機関や取引先)、取締役、あるいは清算人から行うことができます。

破産手続きには次のような特徴があります。

  • 特別清算と異なり、債権者の同意は不要です。

裁判所が破産開始を認めれば、手続きはすべての債権者を対象に強制的に進められます。

  • 破産開始後は、裁判所が選んだ「破産管財人」が手続きを主導します。

破産管財人が会社の資産を換金(売却)し、それを元に債権者へ公平に配当していくのが基本的な流れです。

このように、破産は「会社の財産を清算して終了させる」ための厳格な法的手続きです。

任意整理や特別清算が難しい場合の“最終手段”として選ばれるケースが多く見られます。

任意整理(私的整理)

任意整理は、裁判所を通さずに行う「私的整理」の一種です。

金融機関などの債権者と直接交渉し、借入金の返済条件を見直す手続きです。

任意整理の特徴は下記の通りです。

  • 交渉相手(債権者)と直接話合って進める
    →合意に至るかどうか、またその条件(返済期間・金額など)は、あくまで債権者の判断に委ねられます。
  • すべての債権者と合意を取る必要がある
    →一部の債権者とだけ合意しても、手続き全体は成立しません。全体合意が前提です。

合意内容の例としては下記があげられます。

  • 将来発生する利息のカット
  • 過去の利息についての再計算(利息制限法に基づく)
  • 長期の分割返済への変更
  • 支払いが遅れた際の条件(期限の利益喪失)の設定

ただし、注意点としては、任意整理は法的な手続きではないため、柔軟に対応できる一方で、裁判所の関与がない分、法的な拘束力が弱いという側面があります。

役員借入金の債務免除による解散の方法

債務超過に陥っている会社を解散・整理する際、経営者や役員からの借入金(いわゆる「役員借入金」)を免除することで、会社の帳簿上の債務を圧縮することが可能です。

この手法を活用することで、会社の財務状況を改善し、スムーズな清算手続きにつなげられる場合があります。

ただし、この「債務免除」には税務上のリスクが伴うため、注意が必要です。

会社側・役員個人側のどちらに課税リスクがあるのかをしっかりと見極めた上で、適切に手続きを行うことが求められます。

債務免除益に対する法人税対策

役員借入金を会社が免除してもらうと、以下のような仕訳が帳簿上で発生します。

「借入金 ×× / 債務免除益 ××」

この「債務免除益」は、原則として会社の利益(益金)と見なされ、法人税の課税対象になります。

しかし、必ずしも法人税が発生するわけではありません。

たとえば、会社に過去の赤字(繰越青色欠損金)が残っている場合には、その範囲内で債務免除益と相殺することができ、法人税が課されないケースがあります。

特に重要なのは、通常の事業年度では使用できない「期限切れの欠損金」も、会社の解散後の「清算事業年度」に限って損金として活用できる可能性があるという点です。

この特例は、会社が債務超過で「残余財産が見込めない」場合に適用されます。

そのため、実務上は以下のような判断が重要になります。

  • 繰越欠損金が少なく、期限切れ欠損金が多い場合
    → 債務免除のタイミングを「解散前」ではなく「清算中(清算事業年度)」に行うことで、法人税の負担を軽減できる可能性が高まります。

このような税務上の判断は非常に繊細であり、専門家のサポートを受けながら慎重に判断することが重要です。当社では、公認会計士とも連携して、適切なスキーム構築を支援しています。お気軽にご相談ください。

債務超過解消のタイミング調整

債務免除を行うタイミングは、税務上の影響を大きく左右します。

解散事業年度に債務免除を実施すると、損金として扱えるのは繰越青色欠損金の範囲内に限られますが、清算事業年度に行えば、期限が切れた欠損金も含めて損金算入が可能になる場合があります。

また、債務免除を実施する際には、「債権放棄通知書(内容証明付き)」や「取締役会議事録」など、手続きの正当性を証明できる書類を残すことが重要です。

債権放棄・債務免除は民法519条に基づく手続きであり、会社(債務者)と役員(債権者)の両者の合意が必要とされます。

さらに、債務免除益と繰越欠損金のバランスを踏まえ、債務超過の範囲内で債務免除を行えば、法人税とみなし贈与税の両方の負担を最小限に抑えることができます。

 

債務超過企業が解散するためのポイント

債務超過に陥った会社が解散を成功させるためには、感情的・場当たり的な対応ではなく、計画的で現実的なアプローチが不可欠です。

以下の5つのステップを着実に実行することが、解決への近道となります。

  1. 財務状況を正確に把握する
  2. 専門家に相談し、最適な解決策を見つける
  3. 債権者と誠実に交渉する
  4. 資金繰りの見直しによって財務改善を図る
  5. 計画的な債務免除で税負担を最小限に抑える

以下で詳しい内容を解説します。

財務状況を正確に把握する

債務超過の会社が解散を目指すうえで、まず最初に行うべきなのが現在の財務状況を正確に把握することです。

具体的には、貸借対照表に記載されている資産と負債の内容を丁寧に精査する必要があります。

さらに、帳簿には載っていない簿外債務(例:未記載の借入や保証債務)がないかを確認し、資産についても帳簿上の金額ではなく、実際に売却した場合の価値(時価)を把握することが重要です。

とくに不動産や在庫などは、帳簿価格と実際の売却価格に大きな差が出ることも珍しくありません。

そのため、専門家による適正な資産評価を受けることで、より正確な財務状態を見極めることができます。

また、売掛金(取引先からの未回収金)の回収可能性や、保証債務などのオフバランス(帳簿外)負債も含めて、総合的に財務分析を行うことで、債務超過の実態や解消に必要な金額を明確に把握できるようになります。

専門家に相談し、最適な解決策を見つける

債務超過の会社を解散するには、法律・税務・会計などの幅広い専門知識が求められます。

このため、状況に応じて適切な専門家と連携することが重要です。

たとえば、

  • 弁護士は、債権者との交渉や特別清算・破産といった法的手続きの対応を担当します。
  • 税理士は、債務免除益に対する法人税の対策や、清算時の確定申告の処理など、税務面の対応を行います。
  • 司法書士は、会社の解散登記や清算結了登記など、法務局への各種登記手続きを担います。

とくに債務超過の企業の場合、通常の会社解散とは異なり、債権者保護や破産に準じた手続きが必要となるケースも多くあります。

そのため、破産・清算手続きに詳しい弁護士との連携は不可欠です。

このように、債務超過企業の解散には、それぞれの専門家の役割を理解したうえで、的確に支援を受ける体制を整えることが成功のカギとなります。

ジーケーパートナーズでは、債務超過企業の解散に関する無料個別相談会を実施しています。

当社は、企業再生コンサルティングを専門とし、中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務・事業デューデリジェンスや再生計画の策定支援など、多数の中小企業を支援してきた実績があります。

経験豊富な専門家が、会社の状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

まずはお気軽にご相談ください。

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債権者と誠実に交渉する

債務超過の企業が解散を成功させるためには、債権者との交渉が極めて重要な要素となります。

中でも「特別清算」を選ぶ場合には、債権者からの同意が必須条件となるため、交渉の成否が手続き全体を左右するといっても過言ではありません。

交渉を進めるうえで重要なのは、返済計画の具体性と実現可能性です。

たとえば、少額の債権者に対しては優先的に弁済を行うことや、担保が設定された債権について柔軟に対応するなど、実情に合わせた調整が求められます。

また、交渉の際には、会社の財務状況を正直に開示し、誠実な姿勢で臨むことが何よりも大切です。

このような対応が、債権者との信頼関係を築き、協力を得るための大きな力となります。

信頼と納得を得ながら進めることが、債務超過企業の円滑な解散のカギです。

資金繰りの見直しによって財務改善を図る

会社の解散を決定しても、清算が完了するまでは会社は法的に存続している状態です。

その間も各種費用が発生するため、適切な資金繰りの管理が非常に重要となります。

具体的な対応策としては、

  • 人件費の削減
  • 不要な経費の見直し
  • 業務プロセスの効率化
  • 経営状況の中長期的な再評価

といった手段を通じて、支出を抑える工夫が求められます。

また、清算期間中は、会社の資産を売却し、未回収の債権を回収する必要があります。

売掛金の早期回収、在庫や不要資産の売却などを計画的に実施することで、債務返済に充てる資金を確保できます。

さらに、清算には次のような費用が発生します。

  • 弁護士費用
  • 解散・清算に関わる登記費用
  • 官報公告の掲載費用 など

これらの費用をまかなうための事前の資金計画も極めて重要です。

計画的な債務免除で税負担を最小限に抑える

債務超過の会社では、役員からの借入金を債務免除することがありますが、「債務免除益」が課税対象となるため注意が必要です。

ただし、赤字や繰越欠損金があれば、実際の税負担は発生しない場合も多く、特に清算事業年度では期限切れの欠損金も使えるため、節税効果が期待できます。

また、債務免除で純資産がプラスになると、株主に贈与税がかかる可能性があるため、債務超過の範囲内で行うのが安全です。

実行の際は、弁護士など専門家のサポートを受けて慎重に進めましょう。

関連記事|M&Aアドバイザリー会社とは?業務内容や契約書についても徹底解説

 

まとめ

債務超過の会社を解散するには、法律や税務に関する複雑な問題が伴うため、適切に進めるには専門家のサポートが不可欠です。

会社を円滑に解散するためには、まずは財務状況を正確に把握することが重要です。

そのうえで、債権者との誠実な交渉を行い、必要に応じて計画的な債務免除を実施することで、解散に向けた道筋が見えてきます。

これらのステップをしっかり踏むことで、経営者の精神的・金銭的負担を最小限に抑えつつ、会社を適切に終了させる可能性が高まります。

不安や疑問を抱えたまま進めるのではなく、専門家と連携しながら最適な方法を選ぶことが、成功のカギとなります。

ジーケーパートナーズでは、債務超過企業の解散に関する無料個別相談会を随時開催しています。

当社は企業再生コンサルティングを専門としており、中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務・事業デューデリジェンスや再生計画の策定支援など、中小企業の支援において豊富な実績を持つプロフェッショナル集団です。

経験豊富な専門家が、それぞれの会社の状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

債務整理や清算、M&Aを含めた幅広い選択肢をご案内できますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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債務超過と赤字の違いを図解で徹底解説!判断基準・実例・解消法5選

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「債務超過」と「赤字」は、どちらも企業経営において避けたい状況ですが、それぞれ意味がまったく異なります。

この記事では、債務超過と赤字の違いをわかりやすく解説します。

また、自社が債務超過かどうかを判断する方法や、債務超過から脱するための具体的な解決策もご紹介します。

経営の改善を目指す経営者の方にとって、きっと役立つ内容ですので、ぜひご参考ください。

もし債務超過の解消をお考えであれば、まずは専門家に相談し、自社に合った最適な対応をとることが重要です。

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債務超過と赤字の2つの違いとは?

債務超過と赤字は、混同されることが多いですが、実際にはまったく異なるものです。

判断に使う財務諸表、意味する内容、そして経営への影響などに、はっきりとした違いがあります。

ここでは、その違いを2つのポイントに分けて詳しく解説します。

1.判断基準が異なる

債務超過と赤字は、それぞれ確認する財務諸表が異なり、意味する内容もまったく違います。

債務超過は、バランスシート(B/S・貸借対照表)で判断します。これは、会社の資産よりも負債が多い状態を指します。

一方、赤字は損益計算書(P/L)で判断され、売上から費用を差し引いた結果がマイナスになっている状態です。

バランスシートは、ある時点での会社の財政状態を示す「ストック情報」で、資産・負債・純資産のバランスを表します。

それに対して、損益計算書は一定期間の業績を示す「フロー情報」で、売上や費用、利益の動きを表します。

つまり、債務超過は会社の“状態”を、赤字はその期間の“活動結果”を表しているという点が、大きな違いです。

2.意味する状態が異なる

債務超過と赤字は、どちらも会社の財務に関わる重要な指標ですが、意味する内容は本質的に異なります。

債務超過とは、会社の純資産がマイナスになっている状態を指し、長期間にわたる経営の積み重ねによって生じた財政状態を表しています。

一方、赤字は、特定の会計期間(通常は1年間)の収支がマイナスであったことを意味し、その期間の経営活動の成果を示すものです。

単年度で赤字になっても、すぐに債務超過に陥るわけではありません。

たとえば、創業したばかりの企業や新規事業に積極投資している企業は、赤字になることがありますが、資本金や過去の利益(内部留保)が十分あれば債務超過にはなりません。

反対に、今期が黒字であっても、過去の累積赤字が大きければ、依然として債務超過の状態にある場合もあります。

 

債務超過の状態を図解で理解しよう

債務超過とは、「負債が資産を上回っている状態」を指しますが、実際にはどのような状態なのか、図解を使ってわかりやすく説明します。

バランスシート(貸借対照表)では、債務超過がどのように表示されるのか、また純資産がマイナスになることの意味について、具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。

バランスシートで見る債務超過の例

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バランスシート(貸借対照表)において、債務超過とは「純資産の部がマイナスになっている状態」を指します。

バランスシートは「資産 = 負債 + 純資産」の関係が成り立っています。

しかし債務超過の状態では、「資産 < 負債」となり、その差額分が純資産のマイナスとして表れます。

つまり、すべての資産を現金化しても、借金(負債)を返しきれない状態ということです。

バランスシートを見て債務超過かどうかを確認するには、「純資産の部」がマイナスになっていないかをチェックしましょう。

この部分がマイナスになっていれば、その企業は債務超過の状態にあるということです。

さらに、どの程度マイナスになっているかを見ることで、債務超過の深刻さも把握できます。

純資産がマイナスになるとはどういうことか

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純資産がマイナスになるということは、会社の「自己資本」が底をついた状態を意味します。

純資産とは、資本金・資本剰余金・利益剰余金などで構成されており、会社がもともと持っている自己資金を表します。

純資産がマイナスになる主な原因には、次のようなものがあります。

  • 長年にわたる赤字の蓄積
  • 多額の特別損失の発生
  • 投資や事業の失敗
  • 保有資産の価値が大きく下がること

債務超過に陥ると、金融機関などからの新たな資金調達が難しくなり、事業の継続そのものが危うくなる可能性があります。

純資産のマイナスは、会社の経営基盤が大きく揺らいでいることを示す、非常に重要な警告サインです。

これを放置してしまうと、最終的に倒産に至るリスクが高まるため、早急な対応が必要です。

関連記事|債務超過は貸借対照表のどこを見る?確認する方法を徹底解説

 

債務超過の解消法3選

債務超過を解消するためには、いくつかの方法があります。

ここでは、特に効果的な3つの対処法を厳選してご紹介します。

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、自社の経営状況や目的に応じて、最適な手段を選ぶことが大切です。

1.利益の改善

債務超過を解消する最も基本的な方法は、利益を改善して純資産をプラスに戻すことです。

そのためには、売上の増加とコストの削減という両面からの取り組みが必要です。

利益改善のための具体的な施策には、次のようなものがあります。

  • 採算が取れていない事業や赤字商品の見直し
  • 販売価格の見直しと適正化
  • 固定費の削減(例:人件費、家賃など)
  • 仕入先や外注先の見直しによるコスト改善
  • 業務効率化による生産性の向上

こうした利益改善は、すぐに結果が出るものではありませんが、長期的で根本的な解決策です。

単に経費を削るだけでなく、事業構造そのものを見直し、収益を生み出せる体質へと変えていくことが重要です。

2.増資による資本注入

増資とは、新たに資金を調達して資本金を増やし、純資産をプラスに改善する方法です。

この手法は、金融機関や取引先からの信用回復にもつながります。

主な増資の方法には、以下のようなものがあります。

  • 既存株主からの追加出資
  • 第三者割当増資
  • DES(債務の株式化)

増資を成功させるためには、信頼性の高い事業計画を立てることや、将来の成長性をしっかりアピールすることが不可欠です。

投資家や債権者に対して、増資後の収益見通し戦略的なビジョンを明確に伝えることが、資金調達の成否を左右します。

3.M&Aによる会社売却・事業譲渡

たとえ債務超過の状態でも、会社や事業に価値があれば、M&Aによって会社を売却したり、事業を譲渡したりすることが可能です。

M&Aは、債務超過に悩む経営者にとって、「事業の継続」と「債務の整理」の両方を同時に実現できる手段となり得ます。

M&Aの主なメリットには、次のようなものがあります。

  • 事業の価値に基づいた適正な評価が可能
  • 従業員の雇用を継続できる可能性がある
  • 経営者の個人保証から解放される可能性がある
  • 取引先との関係を維持できる

特に債務超過の企業の場合、株式譲渡よりも事業譲渡の形でM&Aが行われることが多いのが特徴です。

事業譲渡では、必要な資産や負債だけを選んで引き継ぐことができるため、買い手にとってのリスクを抑えることができます。

なお、債務超過が深刻化する前にM&Aを検討・実行することが、より有利な条件での譲渡につながります。

そのため、M&Aを考え始めた段階で、できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。

関連記事|債務超過を解消する7つの方法!企業再生への具体的ステップをご紹介

 

まとめ

「債務超過」と「赤字」は、意味や判断基準、経営への影響の大きさにおいて明確に異なります。

赤字は、一定期間の損益計算書において「収益より費用が上回っている状態」を指しますが、債務超過は、バランスシート上で「負債が資産を上回り、純資産がマイナスになっている状態」です。

そのため、赤字よりも深刻な財務状況を示します。

  • 利益改善(業績の回復)
  • 増資による資本注入
  • M&Aによる会社売却や事業譲渡

どの方法を選ぶかは、債務超過の程度、発生した原因、事業の将来性などを総合的に判断する必要があります。

まずは自社の財務状況を正確に把握し、早い段階で専門家に相談することが、適切な解決策を見つけるために重要です。

ジーケーパートナーズは、企業再生・事業承継・M&A支援など、幅広い分野で企業の課題解決をサポートしています。

事業・財務・金融のそれぞれの専門家がチームとなって連携し、企業ごとに最適な解決策をご提案します。

財務改善やM&Aの活用をお考えの方は、ぜひジーケーパートナーズの「無料個別相談会」にご参加ください。

貴社の状況に応じた具体的なアドバイスをいたします。

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債務超過企業の株式譲渡が実質0円や1円になる理由は?成功のポイントもご紹介

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「債務超過の企業の株式は本当に0円や1円なのか?」「譲渡価格が0円と1円では何が違うのか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

実際には、債務超過であっても、適切な譲渡スキームを活用することで企業価値を最大化することが可能です。

本記事では、株式譲渡が実質0円とされる背景1円譲渡のメリット、さらにM&Aを成功させるための重要なポイントを、わかりやすく解説します。

なお、ジーケーパートナーズでは、債務超過企業向けに「無料個別相談会」を実施しています。

企業価値の評価や最適な譲渡スキームのご提案も行っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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債務超過企業の株式価値が実質0円と評価される5つの理由

債務超過企業の株式が実質0円と評価される主な理由は、次の5つです。

  • 清算価値がマイナスであること
  • 将来性がなくなっている
  • 相続税評価上、特有の算定方法がある
  • 清算時に実質的な価値が大きく減少する
  • 裁判例において評価基準を実質0円を示唆する判例がある

これらの背景について、次に詳しく解説していきます。

清算価値がマイナスであること

債務超過の企業は、「負債が資産を上回っている」状態のため、会社を清算しても株主に分配される財産が残りません。むしろ、債務が資産を上回っているため、不足分が出る状況です。

株式は会社に対する持ち分であり、残余財産に対する請求権を持ちますが、分配される財産がない場合、その価値は実質的にゼロと判断されるのが一般的です。

将来性がなくなっている

債務超過の企業であっても、将来的に業績回復や債務免除の見込みがある場合には、株式に一定の価値が認められることがあります。

しかし、債務超過の解消が現実的ではなく、無償取得(100%減資)を行わなければ新たな資金調達もできず、倒産のリスクが高い状況では、その可能性もほとんどなくなります。

このようなケースでは、将来的な価値回復の見込みも乏しく株式に付随する潜在的な価値も認められなくなるため、結果的に株式の評価は実質0円となります。

相続税評価上、特有の算定方法がある

相続税の評価では、純資産価額方式により株式を評価した結果、評価額がマイナスまたはゼロとなった場合、その株式の税務上の評価額は実質0円となります。

相続税評価では、複数の評価方法のうち、最も低い評価額が選択されるのが原則です。

そのため、類似業種比準価額方式でプラスの評価が出ても、純資産価額方式でマイナス評価となれば、最終的に実質0円とされることがあります。

これは税務制度上の取り扱いによるもので、債務超過企業の株式が実質0円と評価される根拠の一つです。

清算時に実質的な価値が大きく減少する

企業が清算される際には、帳簿上の資産価値よりも、実際の売却価格(処分価値)が大幅に低くなることが一般的です。

たとえば、機械設備や無形固定資産はほとんど価値がつかず、不動産も鑑定評価額を下回る価格で売却されることが多く見られます。

さらに、清算に伴い取引停止や契約解除による違約金、従業員への退職金の上乗せ、弁護士など専門家への報酬など、追加コストも発生します。

その結果、帳簿上は債務超過でなくても、実質的には債務超過とみなされる場合があります。

裁判例において評価額を実質0円と示唆する判例がある

裁判所の判例では、債務超過が深刻で清算が現実的に見込まれる企業について、株式の価値を実質的に0円が妥当と判断されたケースがありました。

このように、実際の裁判では、債務超過企業において、株式の評価額を実質0円と示唆するケースが存在します。

関連記事|債務超過になる原因と解消法をわかりやすく解説

 

実質0円譲渡のリスク

実質0円譲渡には、以下のようなリスクが伴います。

  • みなし贈与税が課される可能性
  • 債権者による取消権の行使
  • 遺留分を侵害するリスク

これらのリスクとその回避策について、以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

みなし贈与税が課される可能性

株式を実質0円で譲渡すると、本来の価値との差額が「みなし贈与」と判断され、贈与税が課される可能性があります。

特に親族間での取引は、税務署による厳しいチェックの対象となることが多いため注意が必要です。

たとえば、実質的な株式価値が1,000万円あるにもかかわらず実質0円で譲渡した場合、その1,000万円が贈与とみなされ、贈与税が課される恐れがあります。

債権者による取消権の行使

債務超過の企業の株式を「ほとんど価値がない」として実質0円で第三者に譲渡すると、その行為が「債権者に損害を与える目的だった」と見なされて、債権者から「詐害行為」として譲渡の取り消しを求められる可能性があります。

これは、もともと債務超過の状態では、わずかでも財産的価値のあるものを手放すことで、債権者が回収できる可能性がさらに減ってしまうためです。
とくに譲渡先が身内や関係者などの場合には「財産隠し」と疑われやすく、「詐害行為取消権」が行使されるリスクがあります。

遺留分を侵害するリスク

親族間で株式を無償で譲渡すると、将来の相続時に他の相続人から「遺留分を侵害している」として争いになる可能性があります。

特に、親が特定の子どもに株式を無償で譲渡した場合、他の兄弟姉妹から「特別受益」と見なされ、遺留分侵害額請求の対象となるリスクも高まります。

「内容が難しくてよくわからない」「自分に合った解決策を早く知りたい」とお感じの方は、ぜひジーケーパートナーズ無料個別相談会をご利用ください。

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1円譲渡が選ばれる理由

債務超過企業の株式を譲渡する際、0円ではなく「1円」という金額が設定されるのには、実務上の合理的な理由があります。

たとえ債務超過であっても、1円という象徴的な価格を設定することで、売り手・買い手双方にとってメリットが生まれるのです。

ここでは、その主な理由について解説します。

備忘価額として記録しておく意義

備忘価額とは、実質的な価値を失った資産を帳簿上で管理し続けるために設定される、名目的な金額(通常は1円や10円など)のことです。

資産の価値を0円にすると帳簿から消えてしまうため、「存在を忘れないように」最小限の金額を付けて記録しておく目的があります。

日本では、2007年の税制改正により、それまでの固定資産の減価償却における残存価額(取得価額の10%)が廃止され、1円などの備忘価額まで減価償却できるようになりました。

1円譲渡もこの「備忘価額」としての意味を持ちます。

資産や株式を0円とすると「存在しない」と見なされるおそれがあるため、会計・税務上の整合性を保つためにも、1円などの象徴的な金額を付けるのが一般的です。

これにより、帳簿上で資産の存在を維持でき、将来的に価値が回復した際に再評価益を得る可能性が残せるというメリットもあります。

税務リスクの軽減

株式を1円で譲渡することで、完全な無償譲渡(0円譲渡)よりも税務上のリスクを抑えることができます。

債務超過が明らかで、企業に実質的な価値がないと判断される場合には、1円で譲渡しても問題ないとされています。

ただし、注意が必要なのは、資産に含み益があるケースや、役員からの借入金を放棄すれば債務超過が解消されるような場合です。

このような場合、税務上「実際には価値がある」と見なされ、1円譲渡でも贈与と判断されるリスクがあります。

したがって、株式の実際の価値や債務超過の実態を事前にしっかり確認することが重要です。

実務上の合理性

債務超過企業のM&Aでは、買い手が負債や連帯保証を引き継ぐことが一般的です。

たとえば、企業の価値が5億円で、同額の借入金がある場合、純資産はゼロとなるため株式の評価額も実質0円となります。

それでも実際の取引では、形式的な証拠として「1円」で譲渡されることがあります。

この「1円」は、買い手が“借入金と引き換えに企業価値がある”と判断した証拠であり、取引の合理性を示す意味があります。

このように、1円譲渡は合理的なメリットがある手法として、今後さらに活用が広がる可能性が高いでしょう。

 

債務超過でも高値で売れるケース

債務超過の企業であっても、次のような条件を満たしていれば、高値で売却できる可能性があります。

  • 帳簿に現れていない隠れた資産価値がある
  • 将来的な収益の見込みや買い手企業とのシナジー効果が期待できる
  • 独自の技術や安定した顧客基盤など、他社にはない強みがある

 以下で詳しい内容を解説します。

帳簿に現れていない隠れた資産価値がある

貸借対照表では債務超過に見えても、実際には資産の時価が簿価より高い場合があります。

たとえば、土地や建物が取得時の価格(簿価)で計上されていても、現在の市場価格(時価)は大きく上がっていることがあります。また、特許や商標などの知的財産が、帳簿上では適切に評価されていないケースもあります。

このような「隠れた資産」が判明すれば、見かけ上は債務超過でも、実際には価値のある企業として高値で売却できる可能性があります。

将来的な収益の見込みや買い手企業とのシナジー効果が期待できる

現在は債務超過でも、事業モデルに収益性があり、経営改善によって黒字化が見込める企業は高く評価される可能性があります。

特に、買い手企業との相乗効果(シナジー)が期待できる場合には、債務超過の金額を上回る価格で売却されることもあります。こうした将来性が評価されることで、思わぬ高値でのM&Aにつながることもあるのです。

独自の技術や安定した顧客基盤など、他社にはない強みがある

独自の技術や特許専門性の高い人材強固な顧客基盤など、他社が簡単に真似できない強みを持つ企業は、たとえ債務超過であっても高く評価されることがあります。

特に、業界内で明確な競争力がある場合や、買い手企業の弱点を補えるような資源を持っている場合には、財務状況に関係なく高い企業価値が認められる可能性があります。

関連記事|債務超過で企業でも売却は可能?条件や方法を徹底解説

 

まとめ

債務超過企業の株式譲渡では、株式価値が実質0円とされることが多いですが、適切な方法を取れば企業価値を最大限に引き出せます。

また、実質0円譲渡には贈与税が課されるリスクや遺留分侵害の問題があるため、1円譲渡を選ぶのも有効な方法です。

これによって税務リスクを減らし、備忘価額として資産が存在していることを示せます。

M&Aを成功させるためには、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

また、ジーケーパートナーズでは、「Reset M&A」という債務超過企業専門のM&A仲介サイトを運営しており、日本初の試みとして債務超過企業のM&Aに取り組んでいますので、ぜひご活用ください。

 


債務超過の解消方法7つ!メリット・デメリットや解消の日数を徹底解説

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債務超過がなかなか解消できず、将来に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

「黒字なのに債務超過が続いている」「解消方法が分からず銀行からの融資も難しい」といった悩みを持つ方も少なくありません。

本記事では、債務超過の基本主な解消方法のメリット・デメリット解決にかかる期間放置した場合のリスクまで詳しく解説します。

すぐに具体的な解決策や、自社に合った方法を知りたい方は、ジーケーパートナーズ無料個別相談会をご活用ください。

状況に合わせた適切な解決策をご提案いたします。

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債務超過とは?

債務超過とは、会社の負債(借金)の合計が資産の合計を上回っている状態のことです。

つまり、すべての資産を売っても借金を返しきれない財務状況を指します。

この状態は貸借対照表(バランスシート)で確認できます。

一方、赤字は損益計算書で見られ、一定期間の売上よりも費用が多く、当期の純損失が出ていることを意味します。

簡単に言うと、債務超過長期間の累積した財務悪化を示し、赤字単年度の経営成績の悪さを表しています。

この2つはよく混同されますが、判断する基準や影響は異なるものです。

関連記事|債務超過とは?原因と解決策を解説|債務超過の解決策も紹介

 

債務超過の解消法7つ(メリット・デメリット)

債務超過を解消する方法は、主に以下の7つがあります。

  1. 利益を増やす
  2. 増資を行う
  3. DES(デット・エクイティ・スワップ)を活用する
  4. 資産を売却する
  5. M&A(事業売却・事業譲渡)を行う
  6. 借入れ条件の見直しやリスケジュールを行い事業改善の時間を確保する
  7. 債務免除をお願いする

これから、それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットについて詳しく説明します。

①利益を増やす

最も一般的な方法は、利益を出すことです。

事業内容の見直しコスト削減売上拡大などで利益を増やし、純資産を増やして債務超過を解消します。

メリット デメリット
・長期的に財務が安定する

・信用力が上がり、融資を受け

やすくなる

・即効性がない

・景気や市場の状況に影響され

やすい

利益を出すことは最も健全な解決策ですが、短期間での解消は難しいため、他の方法と組み合わせて進めるのが現実的です。

②増資を行う

新しい株主や経営者、投資ファンドなどから資金を受けて資本金を増やし、純資産をプラスにする方法です。

メリット デメリット
・効果が早く現れる

・信用力が回復しやすい

・経営権が分散するリスクがある

・出資者をみつける必要がある

増資は迅速に債務超過を解消できますが、株主構成や経営権の変化には注意が必要です。

特に第三者割当増資の場合は、株主間での合意や将来の経営方針の調整が重要になります。

③DES(デット・エクイティ・スワップ)を活用する

債権者が持っている借金(債権)を株式に変えることで、負債を資本金に切り替えて貸借対照表を改善する方法です。

メリット デメリット
・負債が減り、純資産が増える

・利息の負担が軽くなる

・債権者の同意が必要

・経営権が変わるリスクがある

この方法を行うには、金融機関や大口の債権者との信頼関係が大切です。

また、将来株式を買い戻す可能性や、経営への関与の程度について、事前にしっかり話し合うことが望まれます。

④資産を売却する

含み益のある不動産や有価証券などの遊休資産を売却し、その資金で借金を返す方法です。

この方法は効果が高く、短期間で債務超過を改善できることもあります。

ただし、事業に必要な資産まで売ってしまうと、将来の収益力が下がるリスクがあります。

メリット デメリット
・即効性が高い

・現金を手に入れやすい

・収益の元や事業の基盤を失う

可能性がある

・一時的な解決策に終わること

もある

この方法を使うときは、売却後の事業運営や資産の活用計画がとても重要です。

特に本社や工場など大切な資産を売る場合は、セール&リースバック(売ってリースで借りる方法)など、事業を続けられる工夫も検討しましょう。

⑤M&A(会社売却・事業譲渡)を行う

債務超過の状態でも、会社や事業の将来性や独自の強みが評価されれば、M&A(合併・買収)で第三者に売ることができます。

買い手が負債を引き継ぐ場合もあり、オーナーの個人保証解除や従業員の雇用維持などのメリットも期待できる方法です。

メリット デメリット
・倒産を防げる

・個人保証や負債から解放され

る可能性がある

・従業員の雇用や事業の継続が

可能

・売却価格が低くなりやすい

・全ての借金がなくなるとは限らない

・交渉や調整に時間がかかる

M&Aは債務超過の抜本的な解決策となり得ますが、専門家への早めの相談関係者への調整が成功を左右します。

ジーケーパートナーズは、債務超過の企業の事業再生を支援しています。

M&Aをお考えの方は、まず「ジーケーパートナーズの無料個別相談会」で専門家にご相談ください。

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⑥借入れ条件の見直しやリスケジュールを行い事業改善の時間を確保する

金融機関などと交渉し、リスケジュール(返済期間の延長)や金利の引き下げなど借入条件を見直すことで、資金繰りを楽にする方法もあります。

この方法では債務超過自体は解消できませんが、毎月の返済負担を減らし、本業の利益確保に集中できる環境を作れます。

メリット デメリット
・資金繰りが改善しやすい

・倒産リスクを減らせる

・根本的な解決にはならない

・信用力が低下する可能性がある

実施する際は、利益を出す経営改善と合わせて行い、抜本的な解決を目指しましょう。

リスケジュールを申し入れる際には、具体的な経営改善計画を示すことが必須です。

また、メインバンクだけでなく、他の金融機関とも調整が必要になることが一般的です。

関連記事|銀行融資のリスケとは?メリット・デメリットと成功のポイントを解説

⑦債務免除をお願いする

債権者と話し合い、借入金などの返済を一部または全部免除してもらう方法です。

金融機関や取引先との信頼関係が必要ですが、成功すれば負債を大きく減らせます。

ただし、免除された金額に対して法人税がかかることや、信用情報に影響が出る点には注意が必要です。

メリット デメリット
・負債を大幅に減らせる

・効果が早く現れる

・債権者の同意が必要

・免除された金額に法人税がかかる

この方法を進めるには、債権者との信頼関係と理解が欠かせません。

また、税務面では債務免除益にかかる税金対策が重要で、繰越欠損金の活用や法的整理との組み合わせなど、弁護士などの専門家とよく相談して進めることが大切です。

 

債務超過解消にかかる年数

債務超過を解消するまでにかかる期間は、企業の財務状況や利益の出方、選択する解決策によって大きく異なります。

一般的には、金融機関や再生計画の基準として「5年以内の解消」が目安とされることが多いです。

例えば、債務超過額が1,000万円ある場合、毎年200万円の利益を積み重ねれば、5年での解消が可能です。

一方、増資や資産売却、債務免除といった即効性のある方法を使えば、より短期間での解決も期待できます。

ただし、利益の積み上げだけで解消を目指す場合は、数年単位の中長期的な計画が必要となることが多いです。

 

債務超過を放置するリスク

債務超過を放置すると、以下のような重大なリスクが生じます。

  • 金融機関から新たな融資を受けにくくなる
  • 取引先や社会からの信用が低下する可能性がある
  • 事業継続が難しくなり倒産のリスクが高まる
  • 上場企業の場合は、上場廃止のリスクがある

これらのリスクは、早期に対応しなければ深刻な経営問題へと発展します。

次に、それぞれのリスクについて詳しく解説します。

金融機関から新たな融資を受けにくくなる

債務超過の状態が続くと、金融機関から返済能力に不安を持たれ、新たな融資を受けられなくなる可能性があります。

さらに、既存の借入についても、返済の前倒しや金利の引き上げを求められるリスクが生じます。

融資が受けられなければ資金繰りが悪化し、事業に必要な資金を確保できなくなるため、経営の自由度が大きく制限される恐れがあります。

取引先や社会からの信用が低下する可能性がある

債務超過の状態は「経営が不安定」と見なされ、取引先からの信用を失う可能性があります。

その結果、掛取引を断られたり、前払いを求められたりと、取引条件が厳しくなるケースも少なくありません。

さらに、社会的信用の低下により、新たなビジネスチャンスを逃すリスクも高まり、企業全体の活動に悪影響を及ぼす恐れがあります。

事業継続が難しくなり倒産のリスクが高まる

債務超過が長引くと、資金調達が難しくなり、従業員への給与支払いや商品の仕入れが滞るなど、事業の継続が困難になる恐れがあります。

最終的には、倒産や破産手続きに至る可能性もあり、大きなリスクとなります。

倒産すれば、事業資産の売却や従業員の解雇など、社会的な影響も非常に大きくなります。

上場企業の場合は上場廃止のリスクがある

上場企業が債務超過を放置すると、証券取引所の上場基準に違反し、最悪の場合は上場廃止となるリスクがあります。

上場廃止になれば、資金調達力の低下や企業価値の大幅な減少を招き、経営再建がさらに難しくなります。

また、債務超過を放置することで、資金調達の道が閉ざされるだけでなく、社会的信用の低下や経営者自身の生活にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

こうした事態を防ぐためにも、早めの対応専門家への相談が重要です。

関連記事|債務超過企業が倒産しない理由は?倒産の確率も解説

 

まとめ

債務超過を放置すると、資金調達の難化や取引先からの信用低下にとどまらず、事業継続自体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

しかし、増資や資産売却、M&Aなど、状況に応じたさまざまな解消方法があり、適切な対策を講じることで再建の道は十分に開けます。

大切なのは、現状を正しく把握し、できるだけ早く具体的な対策に着手することです。

判断が難しい場合は、専門家に相談することで、より的確で実行可能な解決策を見つけやすくなります。

債務超過の解消には、現状分析から解決策の立案・実行に至るまで、専門的な知識と経験が欠かせません。

ジーケーパートナーズでは、債務超過や財務改善に関する「無料個別相談会」を実施しています。

お客様の状況に応じて、最適な解決策をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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債務超過とは?決算書での見分け方と6つの解消法

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債務超過とは、会社の負債が資産を上回っている危険な財務状態です。

この状態を放置すると、倒産リスクの増加や取引先・金融機関からの信用低下につながる可能性があります。

しかし、決算書を正しく読み解けば、早期の発見と対策が可能です。

本記事では、債務超過の基本的な定義から、決算書での見分け方計算方法、そして早期対応の重要性について分かりやすく解説します。

ジーケーパートナーズは、債務超過企業を専門に支援する再生・M&Aのプロフェッショナルです。

まずは企業の現状を丁寧に診断し、最適な再生プランや支援策をご提案いたします。

債務超過でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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債務超過の定義

債務超過とは、企業の資産よりも負債が多い状態を指します。

すべての資産を売却しても、借入金や買掛金などの負債をすべて返済できない状況です。

このような場合、貸借対照表では純資産がマイナスとして表示されます。

債務超過の状態が続くと、会社の存続や新たな資金調達が難しくなるなど、深刻な経営リスクにつながるおそれがあります。

関連記事|債務超過になる原因と解消法をわかりやすく解説!

 

決算書のどこを見れば債務超過がわかるのか?

債務超過かどうかは、決算書の「貸借対照表(バランスシート)」を見ることで確認できます。

判断のポイントは、資産の合計より負債の合計が多いかどうかです。この場合、企業は債務超過の状態にあるといえます。

また、「純資産の部」がマイナスになっている場合も、債務超過の明確なサインです。

より正確な財務状況を把握したい場合は、回収不能な売掛金や価値のない在庫などを除いた「実態貸借対照表」を作成し、実質的な資産と負債のバランスを確認する方法も有効です。

関連記事|債務超過は貸借対照表のどこを見る?確認する方法を徹底解説

 

債務超過を簡単に計算する方法

債務超過を簡単に計算する方法は、「資産合計-負債合計」の式を使うことです。

決算書の貸借対照表で、資産の部の合計から負債の部の合計を引いて、その結果がマイナスであれば債務超過になります。

たとえば、資産が1億円、負債が2億円であれば、1億円の債務超過ということになります。

この計算方法はシンプルですが、現金化が難しい資産や価値が下がっている資産も含まれていることがあるため、必要に応じて「実態貸借対照表」を作成し、より現実に近い数値で再評価することが重要です。

 

債務超過は早期解決が重要な理由

債務超過を放置すると、企業はさまざまなリスクに直面します。早めに対策を講じることが非常に重要です。その理由は以下の通りです。

  • 倒産リスクが高まるため
  • 金融機関からの融資や取引先の信用を維持するため
  • 経営改善の選択肢を広げるため
  • 関係者(金融機関・従業員・取引先など)の協力を得やすくするため

このあと、それぞれのポイントについて詳しくご説明します。

倒産リスクが高まるため

債務超過の状態が長く続くと、資金繰りが悪化し、最終的には倒産に至るリスクが高まります。

また、取引先からの信用が低下したり、売上が減少したりすることで、資金繰りの状況はさらに厳しくなる恐れがあります。

債務超過を放置すればするほど、経営の立て直しは難しくなり、倒産に直結する可能性も出てきます。

そのため、早期に対策を講じて債務超過を解消することが非常に重要です。

金融機関からの融資や取引先の信用を維持するため

債務超過の状態が続くと、金融機関から新たな融資を受けることが難しくなります。

さらに、信用力が低下することで、既存の借入金について早期返済を求められたり、金利が引き上げられたりする可能性もあります。

また、取引先からの信用も損なわれやすくなり、取引条件が不利になる、あるいは取引自体を打ち切られるリスクも高まります。

経営改善の選択肢を広げるため

債務超過を早めに見つけることで、増資や資産の売却、借入条件の見直しなど、さまざまな対策を検討できます。

早い段階なら、経営改善計画の作成や本業の収益力アップなど、根本からの改善もしやすくなります。

問題が悪化してからでは対策の幅が狭まり企業再生が難しくなる可能性が高まります。

関係者(金融機関・従業員・取引先など)の協力を得やすくするため

債務超過の状況を早めに開示し、金融機関や取引先、専門家に相談することで、支援や協力を得やすくなります。

経営改善計画を立てて具体的な再生策を示せば、関係者の信頼を保ちやすくなります。

また、従業員のやる気や仕事の効率アップにもつながります。

 

債務超過を解消する6つの方法

債務超過を解消する方法は主に6つあります。

  • 利益を増やす
  • 増資で資本を強化する
  • DES(負債の株式化)を活用する
  • 資産を売却する
  • 事業を売却する
  • 債務の免除を受ける

以下で、それぞれの方法について詳しく説明します。

利益を増やす

売上を増やし、支出を減らして利益を出すことで、純資産を回復させる方法です。

経営状況を見直して、無駄な経費を減らしたり、収益性の高い事業に切り替えたりして、少しずつ債務超過を解消していきます。

最も一般的で現実的な方法ですが、すぐには効果が出にくいため、早めに取り組むことが大切です。

増資で資本を強化する

経営者や第三者から新しい資金を集めて資本金を増やし純資産をプラスにする方法です。

新株の発行や役員からの出資がよく使われ、短期間で債務超過を解消できるのがメリットです。

ただし、株主の構成が変わったり、将来的に経営権が分散したりするリスクもあるため注意が必要です。

DES(負債の株式化)を活用する

DES(デット・エクイティ・スワップ)は、借入金などの負債を株式に変えることで負債を減らし純資産を増やす方法です。

金融機関や主要な債権者が株主になるため、債務超過を解消しやすくなります。

お金を使わずに財務の体質を改善できるメリットがありますが、手続きや条件の調整が必要です。

資産を売却する

含み益のある土地や有価証券、使っていない資産などを売って、債務超過を解消する方法です。

ただし、事業に必要な資産まで売らないよう注意が必要です。

事業を売却する

債務超過の企業でも、M&A(合併・買収)を使って事業や会社を他の会社に譲ることで、借金を減らしたり経営を立て直したりできます。

事業の一部や全部を売ることで資金を得たり、借金の整理ができたりして、経営者や従業員の将来を守ることも可能です。

特に自力での再建が難しい場合は、M&Aが効果的な方法となります。

ジーケーパートナーズは、債務超過の企業向けに専門のM&Aサービスを提供しています。

企業の状況に合った最適な解決策をご提案いたしますので、まずは無料の個別相談会にお気軽にご参加ください。

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債務の免除を受ける

金融機関や取引先などの債権者に対して、借入金や未払い金の一部または全部を返済免除してもらう方法です。

債務が減ることで負債も減り、債務超過の解消にもつながります。

ただし、債権者の同意が必要で、取引先への影響や税金の問題もあるため、慎重な交渉と専門家のサポートが欠かせません。

関連記事|事業承継とは?基本的な仕組みから成功のポイントまで徹底解説

 

債務超過を専門家に相談するメリット

債務超過や経営が厳しい時は、専門家に相談することで多くのメリットがあります。

主なメリットは次の通りです。

  • 客観的で専門的なアドバイスが受けられる
  • 最適な解決策の選択肢が増える
  • 交渉や手続きがスムーズに進む
  • 経営が安定し、将来のリスクを防げる

以下で詳しく説明します。

客観的で専門的なアドバイスが受けられる

専門家は財務や法務に詳しく、第三者の立場から現状を正しく分析します。

自社だけでは気づきにくいリスクや改善点を指摘してもらえるのが大きなメリットです。

具体的で実践的な経営改善策を提案してもらい、最適な解決方法が見つかります。

最適な解決策の選択肢が増える

債務超過の解消方法はさまざまですが、専門家は状況に合わせて最適な方法を選び、具体的な手続きをサポートしてくれます。

自社だけでは気づけない選択肢も提案してもらえるため、効率よく企業再生を進められるのがメリットです。

交渉や手続きがスムーズに進む

金融機関や債権者との交渉、M&Aや法的手続きも専門家がしっかりサポートします。

専門知識が必要な場面でも安心して任せられるため、トラブルや失敗のリスクを減らせるのが大きなメリットです。

経営が安定化し、将来のリスクを防げる

専門家に定期的に相談することで、問題を早く見つけて素早く対処できます。

これにより経営が安定し、将来の倒産リスクを減らすことができます。

企業を長く成長させるためにも、専門家への相談はとても大切です。

 

まとめ

債務超過は、決算書を正しく読むことで早めに見つけられます。

放っておくと倒産のリスクや信用の低下につながるため、できるだけ早く対策を取ることが大切です。

利益の改善や増資、事業の売却など、状況に合わせた方法を選びましょう。

自社だけでの対応が難しい場合は、早めに専門家に相談することが成功のポイントです。

債務超過の解消方法で悩んでいる方や、具体的な対策を知りたい方は、ぜひジーケーパートナーズ無料個別相談会をご利用ください。

経験豊富な専門家が、企業の状況に合わせて最適な解決策を提案します。

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債務超過企業が倒産しない理由は?倒産の確率も解説

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債務超過は企業にとって深刻な財務状態ですが、ただちに倒産につながるわけではありません。

ただし、この状態が長引くと、取引先や金融機関からの信用が低下し、倒産のリスクが高まる可能性があります。

本記事では、債務超過の企業がすぐに倒産しない理や、倒産に至る確率、そしてその対策について詳しく解説します。

債務超過の問題は、できるだけ早く対応することが非常に重要です。

ジーケーパートナーズでは、事業再生から負債整理まで、企業の状況に応じた最適な解決策をご提案しています。

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債務超過企業が倒産しない理由4つ

債務超過の企業であっても、すぐに倒産しない理由には、主に次の4つがあります。

  • 支払期日にまだ余裕がある負債を抱えている場合
  • 金融機関が様子を見る(支援を継続する)判断をしている場合
  • 事業に収益性や将来性があると見込まれている場合
  • 実行可能な経営改善計画が用意されている場合

それぞれの理由について、以下で詳しく解説していきます。

1.支払期日にまだ余裕がある負債を抱えている場合

債務超過の状態でも、返済期限がまだ先の長期借入金が中心であれば、当面の資金繰りに大きな問題は生じません。

たとえば、返済期限が5年後の借入金が主な負債である場合、その期間内に経営を立て直し、債務超過を解消するための時間的な余裕が確保できます。

2.金融機関が様子を見る(支援を継続する)判断をしている場合

銀行は、債務者に将来の回復可能性があると判断した場合、債務超過の状態でも融資を継続することがあります。

特に、災害等の有事による一時的な債務超過や、長年の取引実績がある企業に対しては、強引に返済を迫るよりも、事業継続を支援した方が銀行にとっても利益につながるケースがあります。

3.事業に収益性や将来性があると見込まれている場合

営業利益が出ている企業は、たとえ債務超過であっても倒産を避けられる可能性が高くなります。

事業に収益性があれば、その利益を積み重ねることで、時間をかけて債務超過を解消することが期待できます。

また、将来性のある事業モデルを持つ企業は、取引先や金融機関からの信頼を保ちやすく、支援を受けやすい傾向にあります。

4.実行可能な経営改善計画が用意されている場合

債権者の協力を得て、債務の一部を減額してもらったり、返済の猶予を受けたりしながら、事業を継続して残りの債務を返済していく計画があれば、倒産を回避することができます。

特に、「再建型任意整理」のような私的整理手続きは、裁判所を通さずに債権者と直接交渉を行うため、社会的信用を大きく損なうことなく債務問題を解決できる方法です。

 

そもそも債務超過とは?

債務超過とは、企業の負債の総額が総資産を上回っている状態を指します。

つまり、貸借対照表上で純資産がマイナスになっている状況です。

この状態では、企業がすべての資産を売却しても、負債を完済できないという深刻な財務状況にあるといえます。

債務超過に陥る主な原因として、以下の3つが考えられます。

  • 赤字経営が続いている
  • 投資が失敗し、資金が回収できていない
  • 資産の価値が下がり、評価損が発生している

債務超過かどうかを正しく把握し、できるだけ早く対策を講じることが非常に重要です。

関連記事|債務超過になるとどうなる?倒産・株価の影響も徹底解説

 

債務超過と赤字の違いとは

債務超過と赤字は異なる意味を持つ言葉です。

それぞれの特徴を簡単にまとめると次のようになります。

項目 確認方法 特徴
債務超過 貸借対照表(バランスシート) 負債が資産を上回っている状態     

企業の財務状況の累積的な結果

赤字 損益計算書 当期純損益がマイナスになっている状態

単年度の収益についての問題

債務超過は、これまでの累積の結果を表しており、企業の資産より負債が多い状態です

赤字は、単年度の収益状況を示し、その年の売上や利益がマイナスであることを意味します。

つまり、赤字であっても過去に蓄積された利益(内部留保)や自己資本が十分にあれば債務超過にはなりませんし、逆に債務超過の企業でも、その年度は黒字となることがあります。

関連記事|債務超過と赤字の違いを図解で徹底解説!判断基準・実例・解消法5選

 

債務超過で倒産する会社の割合

帝国データバンクの2024年度倒産集計によると、2024年(2024年4月~2025年3月)の企業倒産件数は1万70件に達し、2013年度以来11年ぶりに1万件を超えました。

「2024年倒産企業の財務データ分析」調査によると、2024年に全国で倒産した企業の約7割(71.7%)が、倒産直前の最新の決算期に債務超過の状態にあったことがわかりました。これは前々期の61.6%から10.1ポイント上昇しており、多くの企業で収益の改善が大きな課題となっています。

過去のデータを見ると、2023年の調査でも倒産企業の約7割が債務超過の状態でした。

 

債務超過を解消するための具体的な対策

債務超過を解消するためには、さまざまな方法があります。主な対策は次のとおりです。

  • 利益を増やす
  • 増資する
  • M&Aを活用して事業を再生する
  • DES(デット・エクイティ・スワップ)を利用する
  • 法的整理を検討する

それぞれの方法について、以下で詳しく解説します。

利益を増やす

債務超過を解消するための基本は、売上を伸ばし、利益を増やすことです。

不要な経費を見直したり、業務の効率化を図ったりすることで、徐々に資産を増やし、債務超過を改善していくことが可能です。

地道な取り組みではありますが、長期的に安定した経営を目指すうえで、最も基本かつ確実な方法と言えるでしょう。

増資する

短期間で債務超過を解消する方法として有効なのが「増資」です。

これは、第三者割当増資や新株発行を通じて、経営者や投資家などから資金を調達する手段です。

即効性のある方法ではありますが、根本的な経営改善が伴わなければ、債務超過の解決は一時的なものにとどまってしまう可能性があります。

M&Aを活用して事業を再生する

債務超過の企業であっても、M&Aによって売却することは可能です。

特に、市場から評価される価値があるなどの条件を満たしていれば、売却の成功確率が高まります。

自社の努力だけでは債務超過の解消が難しい場合でも、M&Aによってシナジー効果が期待できる買い手が現れれば、収益構造を根本から見直すチャンスになることもあります。

また、事業の一部を譲渡して得た資金で財務体質の改善を図るという方法も有効です。

「借入が多くて、このままでは倒産してしまうのでは…」と不安を感じていませんか?

ジーケーパートナーズでは、債務超過の企業に特化したM&A支援サービスを通じて、状況に応じた最適な解決策をご提案しています。

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DES(デット・エクイティ・スワップ)を利用する

DESとは、負債を株式に変える手法です。

債権者と合意のうえで、返済が必要な借入金などの債務を自社の株式に切り替えることで、返済義務をなくし、その代わりに債権者へ株式を発行します。

この方法により、貸借対照表の「負債」が減り、「資本(純資産)」が増えるため、債務超過の解消につながります。

ただし、債権者が新たな株主となるため、経営権が分散したり、意思決定が複雑になるリスクもあることに注意が必要です。

法的整理を検討する

最終手段として、民事再生や会社更生法といった法的手続きを活用する方法もあります。

これらの法的整理を利用すれば、過剰な債務を減らしたうえで、事業の継続が可能になります。

ただし、法的整理には以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

  • 取引先や顧客からの信用が低下する
  • 手続きが長期化しやすく、多くの労力がかかる
  • 弁護士費用など、手続きにかかるコストが高い
  • 経営権が管財人に移る可能性がある

法的整理を検討する際は、これらのリスクをよく理解し、他の選択肢とも比較したうえで慎重に判断することが大切です。

関連記事|M&A仲介会社の選び方!FAとの違いやトラブルの回避方法を徹底解説

 

まとめ

債務超過は倒産リスクの重要なサインです。

債務超過は、企業の財務状態が悪化していることを示す重要な兆候であり、放置すれば倒産のリスクが高まります。

実際、倒産した企業の約7割が直前に債務超過だったというデータもあり、その危険性がうかがえます。

ただし、債務超過=即倒産というわけではありません。

早期に適切な対策をとれば、再建や経営改善は十分に可能です。

一方で、債務超過の状態が長引くと、取引先や金融機関からの信用が低下し、資金調達が困難になるなど、倒産のリスクが一気に高まります。

そのため、できるだけ早く専門家に相談し、適切な対応を始めることが非常に重要です。

ジーケーパートナーズは、債務超過企業に特化したM&A支援サービスを提供しています。

負債の整理から事業再生まで、企業の状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

「何から始めればよいかわからない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。            

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FRBは債務超過なのか?米国中央銀行の財務状況と経済への影響を徹底解説

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近年「FRB(米連邦準備制度理事会)が債務超過に陥るのではないか」といった懸念の声が聞かれるようになりました。

その背景には、積極的な金融緩和政策の実施と、その後の急速な利上げにより、FRBが保有する債券の価格が下落し、多額の含み損が発生していることがあります。

ただし「中央銀行の債務超過」は、民間企業における債務超過とは性質が大きく異なります。

この記事では、FRBの財務状況の実態債務超過の定義中央銀行における意味、そして仮にFRBが実際に債務超過に陥った場合に考えられる経済への影響について、分かりやすく解説します。

また、このような経済の大きな変化の中で、今後の成長戦略や事業の将来について専門家に相談したいとお考えの経営者の方もおられるのではないでしょうか。

M&Aを通じた事業拡大や円滑な事業承継に関心をお持ちの方は、M&Aに強みを持つジーケーパートナーズ無料個別相談会をぜひご活用ください。

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FRBとは?その役割と機能

FRBは、アメリカの中央銀行制度の中核を担う機関で、日本でいうところの日銀(日本銀行)に相当します。

「FRB」という言葉は、ワシントンD.C.にある理事会を指しますが、正式には「連邦準備制度」として、FRB理事会と全米にある12の連邦準備銀行で構成されています。

FRBには、以下のような重要な役割があります。

  • 金融政策の実施:金利の調整などを通じて、インフレや景気の安定を図ります。
  • 金融システムの安定維持:銀行や金融市場が安定して機能するよう監視・支援します。
  • 決済システムの運営:銀行間の資金のやり取りをスムーズに行うための仕組みを管理します。
  • 政府の銀行としての機能:アメリカ政府の資金管理や国債の発行などに関わります。

これらの役割を果たすために、FRBは独自の「バランスシート(貸借対照表)」を持っており、そこに資産と負債の詳細が記載されています。

次の項目では、このバランスシートの内容や仕組みについて詳しく解説します。

金融政策の実施

FRBは、「物価の安定」と「雇用の最大化」という2つの目標(これを「デュアル・マンデート」と呼びます)を実現するために、金融政策を運営しています。

具体的には、次のような手段を使って市場の資金量や金利を調整します。

  • 政策金利(FF金利)の誘導目標を設定・変更
    → FF金利(フェデラル・ファンド金利)とは、銀行同士が短期資金を貸し借りする際の金で、アメリカの金利政策の基準となるものです。
  • 公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
    → FRBが米国債などを売買して、市場に出回るお金の量を増減させます。
    また近年では、伝統的な金利操作に加えて、次のような非伝統的な手法も使われています。
  • 量的緩和(QE:Quantitative Easing)
    → 大量の国債などを買い入れ、市場に資金を供給する政策
  • 量的引き締め(QT:Quantitative Tightening)
    → 保有資産を減らすことで、市場から資金を回収する政策

このように、FRBは多様な手段を通じて、アメリカ経済の安定と成長を支えています。

金融システムの安定

FRBは、金融危機を未然に防ぎ金融システム全体の安定を保つことも重要な任務としています

その一環として、FRBは銀行持株会社や大手銀行を対象に、経営の健全性を監督・規制しています。

たとえば、景気の悪化などのストレス(想定外の状況)に銀行がどの程度耐えられるかを検証する「ストレステスト」などを実施しています。

さらに、金融機関が一時的に資金繰りに行き詰まった場合には、FRBが「最後の貸し手(Lender of Last Resort)」として、資金(流動性)を緊急供給します。

これにより、1つの銀行の問題が他の銀行に波及して信用不安が広がることを防いでいます。

決済システムの運営

FRBは、銀行同士が大口の資金をやり取りするための決済システム「Fedwire Funds Service」や、手形・小切手の交換システムなどを、安全かつ効率的に運営しています。

これらの仕組みによって、企業や個人が行う日々の商取引や金融取引に伴う大量の資金移動がスムーズに行われ、アメリカ経済全体の土台となる金融インフラを支えているのが特徴です。

政府の銀行

FRBは、アメリカ合衆国財務省の「銀行」としての機能も担っています。

たとえば、財務省の主要な預金口座を管理し、税収などの歳入の受け入れや、公共事業費などの歳出の支払いを行っています。

さらに、国債に関する実務的な業務もFRBが代行しています。具体的には、国債の発行(入札の実施)、利息の支払い、満期を迎えた国債の償還(返済)といった手続きを担当しています。

このようにFRBは、政府の資金管理や国債運用の現場でも重要な役割を果たしています。

 

FRBは実質的に債務超過なのか?

現在、FRBが保有する国債などの債券には大きな含み損が発生しています。
これは「今すぐ売却した場合にどれだけ損をするか」を示すもので、自己資本と比べても規模が大きく、「事実上の債務超過ではないか」との指摘もあります。

加えて、急激な金利上昇により利払い負担が増し、FRBは現在、継続的に赤字を計上しています。
この赤字はまず剰余金で補填されますが、それが尽きると「繰延資産(Deferred Asset)」として計上されます。
繰延資産とは、将来の利益で赤字を埋め合わせる前提で記録するもので、実質的には自己資本がマイナスの状態に近いといえます。

このような財務悪化により、以下のリスクが懸念されます。

  • 中央銀行としての信頼が揺らぐことで、市場からのFRBに対する信認が低下するおそれ
  • 損失の拡大を恐れ、必要以上に金融引き締めを続けてしまうリスク
  • 赤字が続くことで、FRBが財務省に納める納付金が減少し、政府財政に影響が出る可能性
  • 議会などからFRBの金融政策運営に対する政治的な圧力が強まる懸念

とはいえ、これらはあくまで「起こりうる可能性」に過ぎません。

実際にどの程度影響が出るかは、その時の経済環境、市場の反応(センチメント)、そしてFRBや政府の対応次第で大きく変わります。

また、過去には他国の中央銀行も一時的な債務超過状態を乗り越えてきた例が多くあります。

そのため、現時点で必要以上に悲観的になる必要はないとも考えられます。

 

日本の中央銀行が抱えるリスクとは?

FRBと同じような財務上の懸念は、日本の中央銀行である日本銀行(日銀)にも当てはまります。

日銀は、長年にわたりデフレからの脱却を目指して、FRB以上に大規模かつ長期的な金融緩和を続けてきました。

具体的には「量的・質的金融緩和」「マイナス金利政策」「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」などが行われてきました。

その結果、日銀のバランスシート(資産と負債の一覧)は急拡大し、保有資産の中でも国債の割合が非常に高くなっているのが現状です。

今後、金融政策の正常化(引き締め方向への転換)によって金利が上昇すれば、

  • 日銀もFRBと同様に、保有する国債に大きな含み損が発生する可能性
  • 国債の利払い負担が増加する可能性

といったリスクに直面するおそれがあります。

また、日銀の自己資本比率(財務の健全性を示す指標)は、他の主要な中央銀行と比べて低く、金利上昇に対する財務的な脆弱性が指摘されています。

そのため、万が一、日銀が債務超過の状態になれば、FRBと同様の議論が巻き起こることも想定されます。

ただし、日銀が保有している国債の大部分は自国通貨(円)建てであり、その国債を発行しているのも日本政府です。

このように、政府との関係や通貨発行権などを考慮すると、FRBとは異なる要素も存在します。

とはいえ、日米両国の中央銀行が、大規模な金融緩和という共通の政策を取ってきた結果、現在はその「副作用」とも言える財務リスクに直面しているという点は、重要な共通点と言えるでしょう。

 

変化の時代を勝ち抜く経営戦略とは?

FRBの金融政策や世界経済の動きは、金利の変動や景気の先行きに影響を与え、それが私たち企業の経営環境にも大きく波及します。

たとえば、資金調達コストの上昇や低下、サプライチェーンの見直しの必要性、成長戦略の再構築など、経営者は常に状況の変化に対応しなければならないのが実情です。

このように、将来の見通しが立てにくい時代においては、自社の持続的な成長や企業価値の向上を目指して、M&A(企業の合併・買収)を選択肢の一つとして検討する企業が増えています。

M&Aは、以下のような目的を実現するための有力な手段です。

  • 事業の規模拡大
  • 新たな市場への参入
  • 技術やノウハウの獲得
  • 円滑な事業承継の実現

ただし、M&Aは専門性が高く、手続きも複雑なため、成功させるには慎重な準備と適切な専門家の支援が欠かせません。

M&Aを成功させるには、

  • 適切な戦略の立て方
  • 取引相手の選び方
  • 企業価値の評価
  • 交渉や契約手続き

といった各段階で、正しい判断と確実な行動が必要です。

このようなM&Aの戦略立案から実行まで、豊富な知識と実績でしっかりとサポートするのが、M&Aに強みを持つジーケーパートナーズです。

「自社にとってM&Aは本当に有効なのか?」

「どんな戦略が考えられるのか?」

「進める上で気をつけるポイントは何か?」

こうした疑問やご関心をお持ちの経営者の方は、ぜひ一度、ジーケーパートナーズ無料個別相談会をご利用ください。

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関連記事|M&A仲介会社の選び方!FAとの違いやトラブルの回避方法を徹底解説

 

まとめ

現在、FRBは過去の大規模な金融緩和と急速な利上げの影響で、保有資産の含み損や利払い負担の増加による損失計上という課題に直面しています。

しかし自国通貨を発行できる中央銀行にとって、これがすぐに機能不全を意味するわけではありません。

重要なのは、この状況が金融政策の運営や市場の信頼にどう影響するかです。

こうしたマクロ経済や金融環境の変化は、企業の経営判断にも大きなヒントを与えます。

先行きが見えにくい今こそ、現状を正しく理解し、将来を見据えた戦略的な選択、たとえばM&A(企業の合併・買収)による成長加速や事業承継の検討が重要です。

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そんな経営者の皆さまは、豊富な実績と専門知識を持つジーケーパートナーズ無料個別相談会をぜひご利用ください。

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債務超過を図解で徹底解説!3つの原因と5つの解決策

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債務超過とは、会社の「資産」より「負債(借金など)」が多い状態のことを指します。

この状態を放置してしまうと、資金繰りが悪化し、倒産のリスクや取引先からの信用低下につながるおそれがあります。

この記事では、債務超過の意味・原因・解決方法を、図解を交えてわかりやすく解説します。

自社の経営状況を正しく把握し、早めに対策を取ることで、経営の安定や再建につなげることができます。

債務超過の問題は、早めの対応がカギです。

「うちの会社、大丈夫かな…」と一人で悩まず、専門家の力を借りるのも有効な手段です。

ジーケーパートナーズでは、企業再生を専門とするコンサルタントによる無料相談会を実施しています。

現在の経営状況を客観的に分析し、今後取り得る選択肢をご提案します。

どうぞお気軽にご相談ください。

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債務超過とは?図解でわかる基礎知識

債務超過とは?

債務超過とは、会社の持っている資産よりも、借金などの負債の方が多い状態を指します。

この状態が続くと、会社の信用が下がったり、最悪の場合は倒産につながる可能性もあり、非常に大きな経営リスクとなります。

債務超過かどうかは、「貸借対照表(バランスシート)」を見ればすぐに判断できます。

  • 資産より負債が多い状態
  • 貸借対照表で「純資産」がマイナス
  • 倒産や信用低下のリスクが高まる

このあと、債務超過の詳しい内容や原因、解決策について、順を追って解説します。

1.資産より負債が多い状態

債務超過とは、会社が持っているすべての資産(現金・預金・建物・土地・売掛金など)を合計した金額よりも、借金などの負債(借入金・買掛金・未払金など)の合計額の方が多い状態のことをいいます。

つまり、会社が保有するすべての資産を売却しても、借金をすべて返済できない状態です。

この状態が続くと、以下のような深刻な影響が出る可能性があります。

  • 新たな資金調達(借入)が難しくなる
  • 取引先からの信用を失う
  • 経営の継続が危ぶまれる

そのため、債務超過は会社の存続に関わる重大な問題です。

できるだけ早い段階で現状を正しく把握し、適切な対策を講じることが重要です。

2.貸借対照表で「純資産」がマイナス

債務超過に陥っているかどうかは、「貸借対照表(バランスシート/B/S)」の「純資産の部」がマイナスになっているかを見れば判断できます。

貸借対照表とは、会社のある時点(たとえば決算日)の財政状態を表す表で、「資産」「負債」「純資産」の3つの要素で構成されています。

  • 左側には、会社が保有する「資産」(現金・建物・在庫など)
  • 右側には、会社が抱える「負債」(借入金・買掛金など)
  • 株主からの出資などの「純資産」

この表では、次のような関係が成り立ちます。

資産 = 負債 + 純資産

そのため、貸借対照表の「純資産」がマイナスになっている場合、資産より負債が多い=債務超過の状態だという、明確なサインになります。

3.倒産や信用低下のリスクが高まる

債務超過の状態を放置していると、金融機関からの信用が大きく下がり、新たな融資が受けにくくなります。

さらに、取引先も「支払いが滞るのでは」と不安を感じ、取引条件を厳しくしたり、取引自体を打ち切られたりする可能性があります。

資金調達が難しくなれば、事業を続けるための仕入れや投資ができなくなり、経営の悪化を招きます。

結果として、日々の営業活動すら立ち行かなくなるおそれもあります。

また、債務超過の状態が一定期間続くと、上場企業の場合は上場廃止の対象になることもあります。

このように、債務超過は会社の信用を大きく損ない、事業の継続や成長を深刻に妨げる要因となります。

最悪の場合は、経営破綻や倒産に至るリスクもあるため、早期の対処が不可欠です。

関連記事|【図解】債務超過とは?バランスシートで見る原因と解消法をわかりやすく解説

 

債務超過の3つの主な原因

債務超過は、会社の財務バランスが崩れた状態ですが、その背景にはいくつかの典型的な原因があります。主な原因は以下のとおりです。

赤字経営の継続

→利益が出ない状態が長く続くと内部に蓄えた資本が減り、やがて純資産がマイナスになります。

過剰な投資や資産の評価損

→実力以上の設備投資や不動産・株式などの価値が下がることで、資産が大きく目減りします。

資金繰りや経理管理の不備

→お金の流れをうまく管理できていないと、借入に頼りすぎる状況になり、財務が悪化します。

これらの要因が重なることで、会社は債務超過に陥るリスクが高まります。

次の章では、それぞれの原因について詳しく解説していきます。

1.赤字経営の継続

債務超過に陥る最も一般的な原因は、赤字経営が長期間続くことです。

赤字とは、会社の収益(売上など)よりも、支出(仕入れ・人件費など)の方が多い状態を指します。

一時的な赤字であれば、これまでに積み上げた利益や資本金でカバーできます。

しかし、赤字が何期も続くと、蓄えていた利益剰余金(これまでの利益の蓄積)が減っていき、やがてマイナスになってしまいます。

「純資産」は、主に資本金と利益剰余金で構成されています。

そのため、利益剰余金がマイナスになると、純資産全体が減少し、最終的に資産よりも負債の方が多くなる=債務超過の状態に陥る可能性が高まります。

このように、慢性的な赤字は債務超過を引き起こす大きなリスクとなるため、早めの対応が重要です。

2.過剰な投資や資産の評価損

事業拡大を目的とした設備投資や新規事業への投資は、企業成長には欠かせない取り組みです。

しかし、計画が甘かったり想定外のトラブルが起きたりすると、期待した成果が得られず、逆に債務超過の原因になることもあります。

また、会社が保有している土地・建物・株式などの資産の価値が、市場価格の変動などによって大きく下がると、「評価損」として財務にマイナスの影響を与えます。

このように、見込みの甘い投資判断や、資産の価値下落といった要因も、債務超過を引き起こすリスクがあるため、慎重な経営判断とリスク管理が必要です。

3.資金繰りや経理管理の不備

日々の資金繰りの管理や経理体制が不十分な場合も、債務超過に陥る大きな原因となります。

たとえば、

  • 費用を正しく計上していない
  • 回収できない売掛金をいつまでも資産として記載している

といった財務諸表の誤りがあると、実際の経営状態とのズレが生じます。

その結果、すでに債務超過に近づいている、あるいはすでに債務超過に陥っているにもかかわらず、経営者自身がそれに気づかないまま事態が悪化してしまうことがあります。

正確な経理処理と資金管理の徹底は、健全な経営の基本です。

日頃から財務の状況を正しく把握することが、債務超過の予防につながります。

 

債務超過と赤字・資金ショートの違い

債務超過と赤字・資金ショートの違い

会社の経営状況を表す言葉として、「債務超過」「赤字」「資金ショート」があります。

これらはよく混同されがちですが、それぞれ意味や判断基準が異なります。

ここでは、それぞれの違いをわかりやすく整理し、会社の本当の状況を正しく見極めるためのポイントを解説します。

1.債務超過は貸借対照表で判断

債務超過は、会社の財務状態を示す「貸借対照表(バランスシート)」を見て判断します。

具体的には、貸借対照表の

  • 「資産の部」(会社が持っているものの合計)
  • 「負債の部」(会社が返さなければならない借金などの合計)

を比べて判断するのが特徴です。

債務超過とは、会社の純資産がマイナスの状態とも言えます。

つまり、ある時点での会社の財産状況(会社の「ストック」)に問題があることを示しています。

このため、債務超過は会社の財務の健全さを表す重要な指標といえます。

2.赤字は損益計算書で判断

赤字かどうかは、会社の一定期間(通常は1年間)の経営成績を示す「損益計算書」を確認して判断します。

損益計算書では、その期間に得た収益(売上など)の合計額と費用(仕入れ、人件費、広告費など)の合計額を比べることが特徴です。

費用の合計が収益の合計を上回っている場合、その期間の経営成績は赤字と判断されます。

一時的な赤字だからといって、すぐに債務超過になるわけではありません。

しかし、赤字が続くと、会社の内部に蓄えられた利益剰余金が減っていき、将来的に債務超過になるリスクが高まります。

3.資金ショートは現金不足の状態

資金ショートは、貸借対照表や損益計算書といった決算書では直接わかりません。

会社の手元にある現金や預金の残高を見て判断します。

具体的には、

  • 支払手形や買掛金の支払い日
  • 借入金の返済日
  • 給与の支払日

など、支払期日が来ても、支払いに必要な現金やすぐ使える預金が足りない状態を指します。

資金ショートは、支払いができなくなる「支払い不能」の状態であり、事実上の倒産に直結する非常に危険な状況です。

特に、利益が出ていても資金繰りがうまくいかずに資金ショートを起こす「黒字倒産」というケースもあります。

資金ショートは、日々のキャッシュフロー(現金の流れ)の問題であるため、日頃からの管理が欠かせません。

関連記事|債務超過と赤字の違いを図解で徹底解説!判断基準・実例・解消法5選

 

債務超過の5つの解決策

債務超過は早い段階で現状を正しく把握し、適切な対策を取れば、経営を立て直せる可能性があります。

代表的な解決策は、以下の5つです。

  • 利益を増やして資産を増やす
  • 増資やDES(債務の株式化)を活用する
  • 不要な資産を売却し、コストを削減する
  • M&A(合併・買収)や事業再生による抜本的な対策を行う
  • 債務免除やリスケジュールの交渉をする

以下で、それぞれの解決策について詳しく説明します。

1.利益を増やして資産を増やす

債務超過を解消する最も基本的な方法は、事業活動で利益を出し、その利益を積み重ねていことです。

利益が増えると、損益計算書の「当期純利益」がプラスになります。

この利益は、貸借対照表の純資産の中にある「利益剰余金」に加えられます。

利益剰余金が増えれば、マイナスだった純資産全体が増加し、やがてプラスに転じることが期待できます。

収益性を改善するためのさまざまな取り組みを通じて、着実に利益を積み上げていくことが、経営再生の基本と言えるでしょう。

2.増資やDES(債務の株式化)を活用する

自己資本を直接増やすために、外部からの支援を活用する方法もあります。

代表的な方法は以下の2つです。

  • 増資:新たに株式を発行し、株主から資金を出してもらう方法です。
  • DES(デット・エクイティ・スワップ):会社にお金を貸している金融機関などの債権者に、貸したお金(債権)を株式に換えてもらい、その代わりに会社の株式を渡す方法です。

これらの方法は、比較的短期間で財務状況の改善が期待できます。

3.不要な資産を売却し、コストを削減する

会社の財務状況を改善するには、支出を減らし、資産を効率よく活用することも重要です。

具体的には、事業に直接関係のない資産や、持っていても利益を生まない資産を売って現金に変えます。

もし売却で利益が出れば、損益計算書の「特別利益」として計上され、純資産が増えます。

さらに、固定費や変動費などの支出項目を見直し、無駄な支出を徹底的に削減することも効果的です。

こうしたコスト削減の積み重ねが、利益の増加や資金繰りの改善につながり、債務超過からの回復を支えてくれます。

4.M&A(合併・買収)や事業再生による抜本的対策を行う

債務超過に陥った企業が経営を立て直すために、M&A(企業の合併や買収)は効果的な選択肢です。

例えば、自社の事業の一部または全部を他の企業に譲渡し、その対価を得ることで財務状況を改善することがあります。

また、経営基盤がしっかりした企業のグループに加わることで、その企業の経営ノウハウや技術を活用し、事業の再建や新しい成長戦略を実現できるようになります。

ただし、M&Aを成功させるには、下記が重要です。

  • 自社の事業価値を正しく評価してくれる適切な相手を見つけること
  • 納得できる条件で交渉をまとめること

そのため、M&Aに関する専門知識や経験を持つ専門家のサポートを受けることが必要でしょう。

ジーケーパートナーズは、企業再生やM&Aに特化したコンサルティングを行っています。

経験豊富な専門家が直接お話を伺い、御社に最適な再生プランをご提案する「無料個別相談会」も開催中です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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5.債務免除やリスケジュールの交渉をする

自社だけで債務超過の解消や資金繰りの改善が難しい場合は、借入先の金融機関に支援をお願いする方法もあります。

主な支援方法は次の2つです。

債務免除:借入金の一部または全部の返済を免除してもらう方法

→ただし、金融機関にとっては大きな損失になるため、実現には説得力のある再生計画が必要で、ハードルが高い方法です。

リスケジュール借入金の毎月の返済額を一時的に減額したり、返済期限を延長したりする

→資金繰りを改善し、事業の立て直しに必要な時間を確保する手段です。これも金融機関から計画の提出が求められます。

こうした手続きを進める際は、専門家の支援を受けながら慎重に対応することが大切です。

関連記事|返済リスケジュールとは?借入金で悩む経営者が知っておくべきポイント

 

まとめ

債務超過とは、会社の資産より負債が多くなった状態で、会社の存続を危うくする深刻な経営状況です。

貸借対照表の「純資産」の合計がマイナスであれば、債務超過と判断できます。

大切なのは、自社の債務超過を正しく把握し、問題を早く見つけることです。

そして、状況に合った適切な対策を速やかに行いましょう。

債務超過の悩みや具体的な再生計画については、企業再生・M&Aの専門家がいるジーケーパートナーズにお気軽にご相談ください。

専門家が無料で個別相談に応じ、御社に最適な解決策を一緒に考えます。

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債務超過でも廃業できる?手続きや注意点、破産との違いを解説

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会社の経営が悪化し債務超過となり、廃業をお考えではありませんか?

「債務超過だと廃業できないのでは?」「会社の借金はどうなるの?」「個人の財産まで影響が及ぶのでは?」といった多くの不安を抱えているかもしれません。

この記事を読めば、債務超過の状態での廃業は可能なのか、どのような手続きが必要で、どんな注意点やリスクがあるのかが具体的にわかります。

さらに、廃業以外の選択肢や、専門家へ相談する大切さも理解でき、ご自身の状況に合った適切な判断を下すための一助となるでしょう。

 

この記事を読む中で、専門家への相談を具体的に検討したいと思われた場合は、ジーケーパートナーズの無料個別相談会も選択肢のひとつです。

経験豊富な専門家が、債務超過でのM&Aや事業再生など、さまざまな選択肢についてアドバイスを提供します。

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そもそも債務超過とは?

まず、債務超過がどのような状態かを正しく理解しましょう。

ここでは次のポイントについて分かりやすく解説します。

  • 債務超過の意味
  • 自社が債務超過かどうかを確認する方法

それでは、詳しく見ていきましょう。

債務超過の意味

債務超過とは、会社の「借金などの負債の合計」が、「現金や不動産などの資産の合計」よりも多くなっている状態のことをいいます。

つまり、会社が持っているすべての資産をお金に換えても、借金をすべて返すことができない状態です。

これは、会社の経営状態が非常に悪化しているサインであり、注意が必要です。

債務超過になると、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 銀行から新たな融資を受けにくくなる
  • 取引先からの信用を失う
  • 資金繰りが悪化し、事業を続けることが難しくなる

このような事態を避けるためにも、自社が債務超過に陥っていないかを早めに確認することが大切です。

自社が債務超過かどうかを確認する方法

自社が債務超過の状態かどうかは、「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」という財務書類を見ることで確認できます。

貸借対照表は、会社の決算時点における次の3つの情報を一覧にしたものです。

  • 資産:現金や不動産、売掛金など、会社が持っている財産
  • 負債:借入金や買掛金など、会社が返済すべきお金
  • 純資産:資産から負債を差し引いた残りの金額

この貸借対照表の中にある「純資産の部」に注目してください。

この「純資産の部」の合計額がマイナスになっている場合、その会社は債務超過の状態にあると判断できます。

つまり、会社が持っている資産をすべて売却しても、借金を全額返すことができない状態です。

会社の健全な経営のためには、定期的に貸借対照表を確認し、自社の財務状況を正しく把握しておくことが重要です。

もし貸借対照表の見方がよく分からない場合は、顧問税理士や会計士などの専門家に相談すると安心です。

関連記事|債務超過は貸借対照表のどこを見る?確認する方法を徹底解説

 

【結論】債務超過でも廃業は可能だが特別な手続きが必要

たとえ債務超過のような厳しい状況にあっても、会社を廃業することは可能です。

ただし、通常の廃業手続きとは異なり、特別な手続きが必要になる場合があります。

また、「廃業」と「破産」はよく混同されがちですが、意味がまったく異なるので注意が必要です。

ここでは、下記について分かりやすく説明します。

  • よく混同される「廃業」と「倒産(特に破産)」の違い
  • 債務超過の状態でも廃業ができる理由

よく混同される「廃業」と「倒産(特に破産)」の違い

「廃業」と「倒産(特に破産)」は、どちらも会社をたたむことを意味しますが、法的な意味や手続きの内容は大きく異なります。

廃業 会社が自主的に事業活動をやめること。

経営者が「もう事業を続けられない」と判断した場合に行う、いわば自主的な手続きです。

ただし、会社が債務超過の状態にある場合は、通常の清算手続きではなく、特別清算や破産といった法的な手続きが必要になるケースもあります。

倒産(特に破産) 会社の資産では借金を返せない状態(支払い不能)になったときに、裁判所の管理のもとで行われる法的な手続きです。

裁判所が選任する破産管財人が、会社の財産を整理・処分して、債権者にできる限り公平に返済を行います。

債務超過の状態でも廃業ができる理由

会社が債務超過であっても、法律上は廃業手続きを行うことができます。

なぜなら、廃業とは「事業をやめるための手続き」であり、借金の多さとは直接関係がないからです。

実際には、まず株主総会で「会社を解散する」ことを決めて、清算手続きに進むという流れになります。

ただし、債務超過の場合は注意が必要です。

資産をすべて処分しても借金を返しきれないため、通常の清算ではなく、「特別清算」や「破産」など、法律に基づく手続きを選ぶケースが多くなります。

廃業手続きが終わっても、返済しきれなかった借金は消えるわけではありません。

とくに経営者が会社の借金の「連帯保証人」になっている場合は、廃業後も個人として借金を返さなければならないことがあり、個人にも大きな影響が出る可能性があります。

関連記事|債務超過企業の株式譲渡が実質0円や1円になる理由は?成功のポイントもご紹介

 

債務超過での廃業手続きの違い

会社が廃業するとき、資産が負債を上回っている黒字企業と負債が資産を上回っている債務超過企業によって、手続きが大きく変わります。

黒字企業の廃業の場合、会社の資産を売却して現金に換え、そのお金ですべての借金(債務)を返済します。

借金を返済したあとにお金が残れば、それを株主などに分配して会社を清算します。

この場合、比較的スムーズでトラブルも少ないのが特徴です。

一方、 債務超過企業の廃業の場合、資産をすべて現金に換えても、借金をすべて返すことができません。

このため、「特別清算」や「破産」など、法律に基づいた清算手続きが必要となり、すべて法律に従って厳格に進められます。

こうした法的手続きを適切に行わないと、後になって債権者からトラブルを起こされるリスクがあります。

通常の廃業は「借金をすべて返せる」状態での手続きですが、債務超過の場合は「借金を返しきれない清算」になる点が、最大の違いです。

 

債務超過企業が廃業する際の3つの手続き

債務超過の企業が廃業する場合、主に以下の3つの手続きがあります。

  • 特別清算
  • 破産手続き
  • 任意整理(私的整理)

それぞれ特徴や適用条件が異なるため、会社の状況に合わせて選択する必要があります。

特別清算

特別清算は、株式会社だけが使える制度で、「会社法」に基づいて行われます。

手続きは裁判所の監督のもとで進みますが、破産に比べて柔軟で話し合いを重視するやり方です。

特別清算を始めるには、債権者の3分の2以上の同意が必要です。

この制度では、債権者ごとに返済の割合を変えることができるため、例えば少額の債権を持つ取引先に対して、優先的に返済することも可能です。

特別清算には「協定型」と「個別和解型(対税型)」の2つの方式があり、債権者との関係性や状況に応じて選択します。

破産手続き

破産手続きは、株式会社や合同会社など、どのような形態の法人でも利用できる制度です。

この手続きでは、裁判所が専任した破産管財人が、会社の財産を整理し、債権者に公平にお金を分配します。

このとき、債権者の同意は必要ありません。

ただし、会社の財産は、債権額に応じて平等に分けて返済する必要があります。

手続きが完了すると、会社は法的に消滅し、残っていた借金の支払い義務もなくなります。

破産手続きは債務超過が明らかで、債権者との合意形成が難しい場合に選択される最終手段です。

任意整理(私的整理)

任意整理は、裁判所を使わずに行う債務整理の方法で、私的な手続きです。

弁護士が間に入って債権者と直接交渉し、返済条件の見直しを進めます。

この手続きでは、すべての債権者の協力が必要になります。

任意整理は柔軟に対応できるうえ、手続きの内容が外部に知られにくいのが特徴です。

また、官報に掲載されないため、「破産した」という記録が公に残らないというメリットもあります。

任意整理は、債権者の数が少なく、それぞれの債権者と個別に話し合いができる場合に向いている手続きです。

どの手続きを選ぶにしても、まずは専門家(弁護士)に相談することが大切です。

会社の状況や債権者との関係、経営者の今後の見通しなどを踏まえて、最も適した方法を選びましょう。

 

 債務超過で廃業する場合の最大の注意点とリスク

債務超過の状態で廃業する際は、重大な注意点とリスクをしっかり理解しておく必要があります。

安易に手続きを進めると、後になって思わぬトラブルに発展する可能性があるため、慎重な対応が求められます。

特に注意すべきポイントは以下の通りです。

  • 債務は廃業しても消えない
  • 経営者個人が責任を問われる可能性がある
  • 債権者とトラブルになる恐れがある
  • 税金の支払い義務は残る
  • 従業員への適切な対応が必要となる

以上の点を踏まえ、トラブルを防ぐためにも、事前に専門家(弁護士など)に相談しながら進めることが重要です。

以下で、それぞれの項目について詳しく解説します。

債務は廃業しても消えない

債務超過の会社が廃業する際に注意すべき点は、たとえ法人の清算手続きが完了し、法務局で会社の登記が抹消されたとしても、「未払いの借金(債務)」が必ずしも帳消しになるわけではないという点です。

特別清算や破産といった法的整理では、すべての債務が返済されないまま清算が終わることもあります。

その場合、法人は法律上消滅しても、返済されなかった分の債務は消えずに残ることになります。

法人がなくなることで会社自身は責任を負わなくなりますが、たとえば経営者が会社の借入の連帯保証人になっていた場合には、債権者は経営者個人に対して残った債務の返済を請求することができます。

つまり、「会社を清算すれば借金が消える」というわけではありません。清算後に経営者個人に責任が及ぶ可能性があることを理解し、事前に専門家へ相談することが大切です。

経営者個人が責任を問われる可能性がある

債務超過で廃業する際の経営者のリスクについて、債務超過の状態で廃業する場合、経営者個人が責任を問われる可能性があります。

特に多いのは、経営者自身が会社の借金の「連帯保証人」になっているケースです。

この場合、会社が借金を返せなくなると、経営者個人がその全額を返済しなければならなくなります。

そのため、安易に廃業を決めてしまうと、経営者本人の生活にも深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

債権者とトラブルになる恐れがある

債務超過の状態で会社を廃業する場合、すべての債権者に対して借金を全額返済することはできません。

そのため、お金を回収できなかった債権者との間でトラブルが発生する可能性があります。

特に注意すべきなのが、一部の債権者にだけ優先的に返済をおこなう「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれる行為です。

これがあったと見なされると、他の債権者から不公平だと異議を申し立てられる可能性があります。

さらに、後になって破産手続きに移行した場合、この偏った返済が問題視されることもあります。

また、債権者が残っている借金の回収を求めて、経営者個人(特に連帯保証人)に対して訴訟を起こすケースも考えられます。

こうしたリスクを避けるためにも、債権者への対応は公平かつ誠実におこなうことが非常に重要です。

税金の支払い義務は残る

会社を廃業する際は、税金の支払いについても注意が必要です。

まず、会社に未納の消費税や法人税などがある場合、それらは会社の債務の一部として必ず支払う必要があります。

注意すべき点として、税金には非常に強い徴収権があるため、滞納があれば国や自治体が強制的に回収(差し押さえなど)を行うこともあります。

場合によっては、経営者個人の財産が差し押さえの対象となる可能性もあります。

そのため、税金の取り扱いについては、必ず税理士に相談し、正確な状況を確認することが大切です。

従業員への適切な対応が必要となる

会社を廃業する際に従業員を解雇する場合は、労働基準法に従った適切な対応が必要です。

まず、未払いの給与や退職金がある場合は、他の債権よりも優先して支払わなければなりません。

これらは「優先債権」とされており、従業員への支払いが特に重視されています。

また、従業員を解雇する際には、原則として30日前までに解雇の予告をする必要があります。

もし予告なしに解雇する場合は、代わりに30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う義務があります。

これらの支払いができないと、従業員とのトラブルに発展する可能性が高くなり、最悪の場合は労働基準監督署への通報や訴訟に発展することもあります。

従業員に対しては、誠実かつ法律に則った対応を心がけましょう。

円満な廃業のためには、信頼関係を損なわない対応が重要です。

 

債務超過企業は廃業以外の選択肢もある

事業譲渡やM&Aという選択肢について、事業の一部または全体にまだ価値がある場合、事業譲渡やM&A(合併・買収)は有効な選択肢となります。

例えば、不採算部門だけを切り離して再建を図ったり、会社全体を売却してその売却代金を借金の返済に充てるといった方法があります。

さらに、買い手が見つかれば、従業員の雇用が守られる、取引先との関係を継続できるなどのメリットも期待できます。

ただし、債務超過の会社の場合は、買い手を見つけるのが難しいことも多いため、M&Aの専門家(仲介会社や弁護士など)の支援が必要です。

また、売却価格が会社の借金(債務)をすべて返せる金額に満たない場合は、残った借金について別途整理の手続きが必要になります。

事業にまだ価値が残っていると考えられる場合は、こうした方法も前向きに検討してみるとよいでしょう。

 

ジーケーパートナーズでは、債務超過での事業譲渡やM&Aなどに関する無料個別相談会を実施しております。

経験豊富な専門家が、秘密厳守で貴社の状況を丁寧にお伺いし、最適な選択肢をご提案いたします。

債務超過という困難な状況だからこそ、専門家の客観的な視点が解決の糸口となる場合もあるでしょう。

まずはお気軽にご相談ください。

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関連記事|M&A支援機関とは?M&A支援機関を利用するメリットをご紹介

 

債務超過での廃業で専門家に相談するメリット

債務超過の状態で廃業やその他の手続きを進める場合、自分だけの判断で進めるのは非常に危険です。

必ず、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

弁護士などの専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 最適な対応方法をみつけることができる
  • 法律に基づいた正しい手続きを進められる
  • 債権者への連絡や交渉を代行してもらえる
  • 今後考えられるリスクを明確にし、対策を建てられる
  • 自分で手続きを進める時間と手間などの負担を減らせる

それでは、これらのポイントについてもう少し詳しく見ていきましょう。

最適な対応方法をみつけることができる

専門家が最適な手続きを選んでくれます。

債務超過の状態にある場合、考えられる選択肢には、廃業、破産、民事再生、M&A(事業売却など)など、さまざまな方法があります。

ただし、これらにはそれぞれメリットとデメリットがあり、どの方法が最も適しているかは、以下のような要素によって異なります。

  • 会社の財務状況
  • 事業の価値や将来性
  • 経営者の希望や事情

こうした複雑な判断は、弁護士などの専門家が、客観的に状況を分析し、法律や豊富な実務経験に基づいて最も有利な(または損失の少ない)方法を提案してくれます。

つまり、専門家の助けを借りることで、自己判断による失敗や後悔を防ぐことができます。

法律に基づいた正しい手続きを進められる

専門家は複雑な手続きを正確かつスムーズに進めてくれます。

廃業や法的整理(破産・民事再生など)の手続きは、会社法、破産法、民事再生法など複数の法律が関わり、必要な書類も非常に多く、内容も複雑です。

もし手続きに不備があると、次のリスクがあります。

  • 手続きが大幅に遅れる
  • 追加の費用や対応が発生する
  • 最悪の場合、手続き自体が受理されない

こうしたリスクを避けるためにも、弁護士などの専門家に依頼することが重要です。

彼らは、法律に沿った正しい手続きを代行またはサポートしてくれるため、安心して任せることができます。

確実に、そしてミスなく手続きを完了させるためには、専門家のサポートは欠かせません。

債権者への連絡や交渉を代行してもらえる

専門家が窓口となり、債権者対応の精神的負担を軽減できます。

債務超過の状態になると、金融機関や取引先などの債権者から、返済の催促や問合せが次々と来るのが一般的です。

これらに経営者自身がすべて対応し続けるのは、大きな精神的負担になります。

しかし、弁護士に依頼して「受任通知(じゅにんつうち)」を債権者に送ってもらえば、以後の連絡は原則として弁護士が窓口になります。

これにより、経営者は直接の督促や厳しい連絡から解放され、心の余裕を取り戻すことができます。

精神的なプレッシャーから解放されることで、落ち着いて今後の対応策を考える余裕が生まれます。

まずは専門家に相談し、一歩前に進むための環境を整えることが大切です。

今後、考えられるリスクを明確にし、対策を立てられる

専門家は、経営者個人に及ぶリスクとその対策を明確にしてくれます。

会社が債務超過になると、その影響は経営者個人の生活にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

特に、経営者が会社の借入金の連帯保証人になっている場合、会社が返済できなくなった借金を、経営者自身が個人で返済する義務が発生します。

こうしたリスクに対して、弁護士などの専門家は、法的な観点から現状を正確に評価し、どのような危険があるのかをわかりやすく説明してくれます。

そのうえで、

  • 自己破産が必要かどうか
  • 個人の財産を守るにはどうすればよいか

など、今できる対策や対応策を一緒に考えてくれます。

経営者自身の将来を守るためにも、こうした専門家のサポートは欠かせません。

自分で手続きを進める時間と手間などの負担を減らせる

専門家に任せることで、面倒な事務作業から解放されます。

廃業や倒産の手続きには、

  • 申立書の作成
  • 財産目録の作成
  • 役所や裁判所とのやり取り
  • 債権者集会の準備・運営(破産の場合)

など、膨大な時間と手間がかかる事務作業が伴います。

こうした作業に経営者が追われてしまうと、事業の整理や、今後の人生の再スタートに向けた準備に集中できなくなるおそれがあります。

しかし、弁護士などの専門家に依頼すれば、これらの事務作業のほとんどを代行してもらえるため、経営者は大幅に時間と労力を節約できます。

再出発に向けて冷静に動くためにも、専門家の力を借りて事務的な負担を軽くすることが大切です。

 

まとめ

たとえ会社が債務超過の状態にあっても、廃業手続きを進めること自体は可能です。

しかし、最も重要なのは、廃業しても会社の借金(債務)が自動的に消えるわけではないという点です。

特に、経営者が連帯保証人になっている場合には、会社の借金を個人で返済しなければならないリスクがあります。

そのため、債務超過に陥った場合は以下2点が非常に重要です。

  • まず、自社の財務状況を正確に把握すること
  • 廃業だけでなく、破産・民事再生・事業譲渡など他の選択肢も含めて検討すること

いずれの選択をするにしても、経営者だけで判断せず、できるだけ早い段階で専門家に相談することが欠かせません。

専門家は、法的なリスクを避けながら、会社の状況に合った最善の解決策を提案してくれる頼れる存在です。

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【図解】債務超過とは?バランスシートで見る原因と解消法をわかりやすく解説

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会社の経営状況を正しく把握するうえで、「債務超過(さいむちょうか)」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

債務超過とは、会社の財務状態が悪化し、借金(負債)の方が資産よりも多くなっている状態を指します。これは、企業の経営にとって非常に深刻な問題であり、放置していると最悪の場合、倒産につながることもあります。

この記事では、「債務超過とは何か?」という基本から、バランスシート(貸借対照表)を使った確認方法、債務超過に陥る原因、そしてその解消方法までを、図を使いながらわかりやすく解説します。

自社の財務状況を正しく理解し、安定した経営を目指すために、ぜひ最後までご覧ください。

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債務超過とは?

債務超過とは、会社が持っている財産(現金や預金、不動産、売掛金など)よりも、借金や支払いの義務(借入金や買掛金など)の方が多い状態のことです。

簡単に言うと、「会社のすべての財産を売っても、借金を全部返せない状態」です。

この状態になると、資産から負債を引いた「純資産」(自己資本とも呼ばれます)がマイナスになります。つまり、会社の経済的な基盤が危ういことを意味します。

健全な状態 資産 ≧ 負債 → 純資産がプラス
債務超過の状態 資産 < 負債 → 純資産がマイナス

 

債務超過と「赤字」の違いとは?

「債務超過」と混同されやすい言葉に「赤字」がありますが、これらは意味が異なります。

それぞれの特徴を見てみましょう。

赤字とは

「赤字」は、会社の一定期間の経営成績を示すもので、損益計算書(P/L)に表れます。

これは、売上などの収益よりも、仕入や人件費などの費用の方が多くなってしまい、利益が出ていない状態(当期純損失)を指します。

赤字になると、その期間の経営がうまくいかなかったことを示しますが、すぐに会社が倒産するわけではありません。

債務超過とは

「債務超過」は、会社のある時点での財政状態を表すもので、貸借対照表(B/S)に示されます。

これは、会社が持っている財産(資産)よりも、借金などの支払義務(負債)の方が多い状態のことです。つまり、会社の純資産がマイナスになっている状態を意味します。

赤字と債務超過の関係性

赤字が何年も続くと、会社の利益の蓄積である利益剰余金が減り、純資産も減少していきます。

その結果、最終的に純資産がマイナスになって、債務超過に陥る可能性があります。

つまり、赤字が続くことは債務超過の原因となり得ますが、赤字=債務超過ではありません。

一時的に赤字になっても、これまでに積み上げた純資産(いわゆる内部留保)が十分あれば、債務超過にはなりません。

関連記事|債務超過と赤字の違いを図解で徹底解説!判断基準・実例・解消法5選

 

バランスシート(貸借対照表)の図解で債務超過を理解する

債務超過かどうかを判断するには、会社の「バランスシート(B/S:貸借対照表)」を確認する必要があります。

ここでは、バランスシートの基本を図解付きで解説しますので、参考にしてください。

バランスシートの基本構造

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バランスシートは、ある特定の時点(多くの場合は決算日)における会社の財政状況を示す書類です。

会社が「どんな財産を持っていて(資産)」「どこからお金を調達しているか(負債と純資産)」を表しています。

項目 内容
左側(借方):資産の部 会社がどのように資金を「運用」しているかを示す 現金、預金、売掛金、商品、建物、機械など
右側(貸方):負債の部と純資産の部 会社がどのように資金を「調達」したかを示す 買掛金、支払手形、短期借入金、長期借入金、社債など
純資産の部 返済義務のない自己資本(株主からの出資金や利益の蓄積) 資本金、資本剰余金、利益剰余金など

バランスシートは左右に分かれており、次のような構成になっています:

・左側:資産(会社が持っているもの)

・右側:負債と純資産(資金の調達源)

この2つの合計は、必ず次のように一致します:資産合計 = 負債合計 + 純資産合計

これは、会社の財産(資産)は、すべて借金(負債)や出資(純資産)によって成り立っていることを意味しています。

 債務超過のバランスシート

まずは、債務超過の状態のバランスシートを見てみましょう。

資産 金額 負債・純資産 金額
流動資産 400万円 負債 1,300万円
現金・預金 200万円 買掛金 600万円
売掛金 100万円 社債 400万円
商品 100万円 借入金 300万円
固定資産 800万円 純資産 -100万円
不動産 600万円 資本金 100万円
その他固定資産 200万円 利益剰余金 -200万円
合計 1,200万円 合計 1,200万円

資産と負債のバランスシートを見ると、純資産がマイナスになっているのが特徴です。

健全なバランスシート

次に、健全な状態のバランスシートを図で見てみましょう。

資産 金額 負債・純資産 金額
流動資産 負債
現金・預金 300万円 買掛金 400万円
売掛金 150万円 社債 300万円
商品 150万円 借入金 100万円
固定資産 純資産
不動産 600万円 資本金 100万円
その他固定資産 200万円 利益剰余金 500万円
合計 1,400万円 合計 1,400万円

■ 健全なバランスシート

純資産がプラスで、会社の財政状態が安定しています。

例えば、利益剰余金が500万円のプラスになっており、これまでに積み上げた利益がしっかり残っている状態です。

また、資産の合計が負債の合計を上回っているため、借金に頼りすぎていない健全な状態です。

■ 債務超過のバランスシート

利益剰余金がマイナス200万円となっていて、過去の赤字などにより利益の蓄積が失われています。

その結果、純資産がマイナスとなり、債務超過の状態に陥っています。

このように、利益剰余金や純資産の状態を見ることで、会社の財政の健全性が分かります。

関連記事|債務超過時のバランスシートの例をご紹介!確認方法や解消する方法とは

 

債務超過に陥る主な原因

会社が債務超過に陥る原因はさまざまですが、代表的なものを以下に紹介します。

赤字経営が続く

もっとも一般的な原因です。

毎年のように赤字が続くと、会社の利益の蓄積である利益剰余金が減っていきます。やがてそれが底をつき、純資産がマイナスになって債務超過に陥ることになります。

過大な設備投資や先行投資

事業拡大のために多額の投資を行っても、十分な利益が出なければ返済負担が重くなり、資金繰りが悪化します。営業活動に支障が出たり、設備の価値に見合わない借入が残ったりすることで、債務超過に陥ることがあります。

売上の急減や売掛金の回収不能

主要な取引先が倒産したり、契約が打ち切られたりして、売上が急に減少する場合があります。

また、売掛金が回収できなくなる(貸倒れ)と、予想外の損失が発生し、純資産が大きく減ってしまう可能性があります。

資産価値の大幅な下落

保有している不動産や株式、在庫などの資産が、市場の悪化などにより大きく値下がりすることがあります。

このような場合、帳簿上の資産額が減少し、相対的に負債の割合が大きくなって債務超過に陥ることがあります。

 

債務超過がもたらすリスク・デメリット

債務超過の状態を放置すると、会社の信用や経営に深刻な影響を与える可能性があります。主なリスクやデメリットは以下の通りです。

  • 金融機関からの新規融資が難しくなる
  • 既存の融資条件が悪化するリスクがある
  • 取引先からの信用が低下する
  • 上場企業の場合は、上場廃止の危機に
  • 倒産リスクが非常に高い状態になる

以下で詳しい内容をみていきましょう。

金融機関からの新規融資が難しくなる

金融機関は、融資審査の際に会社の財務の健全性を重視します。

債務超過の会社は「返済能力が低い」と判断されるため、新たにお金を借りることが非常に難しくなります。

その結果、運転資金や設備投資のための資金調達ができず、事業の継続に支障をきたすおそれがあります。

既存の融資条件が悪化するリスクがある

融資契約によっては、債務超過が「契約違反(財務制限条項の違反)」とみなされることがあります。

この場合、以下のような事態が起こる可能性があります。

・金利の引き上げ

・分割返済から一括返済への変更

・融資の打ち切り

こうした対応は、会社の資金繰りを一気に悪化させる要因となります。

取引先からの信用が低下する

決算書の開示などによって、取引先に債務超過であることが知られると、信用が低下します。

「この会社は支払いができなくなるかもしれない」と不安を持たれ、

・現金払いの要求

・取引条件の厳格化

・取引停止

といった対応を取られる可能性があります。

上場企業の場合は、上場廃止の危機に

証券取引所では、上場企業に対して一定の財務基準を定めています。

債務超過が一定期間続くと、上場廃止基準に抵触する可能性があり、

・株式市場からの資金調達ができなくなる

・社会的信用の大きな失墜

といった深刻な事態を招きます。

倒産リスクが非常に高い状態になる

債務超過とは、会社の全財産を売却しても、すべての借金を返せない状態です。

このような状態で資金繰りが悪化すると、いずれ事業継続が困難になり、

・法的整理(民事再生や破産)に追い込まれる

・事実上の倒産状態に陥る

といった最悪のケースに至る可能性も高くなります。

債務超過は、単なる数字の問題ではなく、信用・資金・事業継続すべてに影響を与える重大なリスクです。早期の対策が重要です。

関連記事|債務超過企業が倒産しない理由は?倒産の確率も解説

 

債務超過を解消・回避するための方法

債務超過は非常に危険な状態ですが、早めに対策を講じれば改善・回避できる可能性があります。

代表的な解消・回避策は以下の通りです。

  • 利益を出す(赤字経営の改善)
  • 増資(資本注入)
  • 資産の売却
  • M&A(事業譲渡・会社売却)の活用
  • 債務の株式化(DES:Debt Equity Swap)
  • 経営者等からの借入金を免除してもらう

以下で詳しい内容を解説します。

利益を出す(赤字経営の改善)

最も基本的かつ根本的な対策です。

売上を増やす(新商品開発・販路拡大など)、コストを削減する(不採算部門の見直し・経費削減など)といった取り組みを通じて黒字化を目指します。

黒字経営を継続すれば、「利益剰余金」が増え、最終的に純資産(自己資本)をプラスに戻すことができます。

増資(資本注入)

経営者自身や外部の投資家などから出資を受け、会社の資本金や資本剰余金を増やします。

借入ではないため返済義務がなく、純資産が直接増えるという大きなメリットがあります。

ただし、第三者から出資を受ける場合は、株式の持分比率が変わる(経営権の調整が必要になる)点に注意が必要です。

資産の売却

使っていない含み益のある不動産や設備など、事業に直接関係のない資産(遊休資産)を売却して現金化する方法です。

この資金で借入金を返済すれば負債が減少し、売却益が出れば純資産の増加にもつながります。

M&A(事業譲渡・会社売却)の活用

財務的に余裕のある企業や投資ファンドに、

・会社そのものを売却する

・収益性のある事業部門を譲渡する

といった形で再建を図る方法です。

債務の返済資金を確保できたり、支援企業のもとで再スタートを切ることが可能となる場合もあります。

債務超過企業向けに、事業譲渡やM&Aに関する無料個別相談を実施しています。専門家が丁寧にご相談を承ります。

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債務の株式化(DES:Debt Equity Swap)

金融借入金(Debt)を株式(Equity)に切り替えることで、負債を自己資本に転換する方法です。

主に、金融機関などの債権者に協力してもらい、借金を出資の形に変えてもらいます。

これにより、負債が減少し、同時に純資産が増加します。ただし、実行には債権者の合意が必要です。

経営者等からの借入金を免除してもらう

経営者本人や関係会社からの借入金がある場合、それを返済免除してもらうことで、会社の負債を減らせます。

免除された金額は「債務免除益」として利益に計上され、純資産の増加につながります。

親族経営など、信頼関係がある場合に検討されるケースです。

また、適切な対策を選ぶためには、弁護士、公認会計士、中小企業診断士などの専門家への相談が不可欠です。早期対応が、再建のカギになります。お早めにご相談ください。

 

まとめ

債務債務超過とは、会社の「資産」よりも「負債」が多く、バランスシートの「純資産の部」がマイナスになっている状態です。

これは単なる赤字とは異なり、会社の財政基盤そのものが揺らいでいる深刻な状況を意味します。

放置すれば、融資の停止や倒産のリスクが高まります。

債務超過の原因には、

・赤字経営の継続

・計画に見合わない過大な投資

・資産価値の下落 などがあります。

万が一、債務超過に陥った、またはその兆候が見られる場合は、早期に対策を講じることが重要です。

たとえば、

・収益改善(売上増加やコスト削減)

・増資による自己資本の補強

・不要資産の売却

・DES(債務の株式化)などの方法があります。

普段からバランスシートを確認し、財務状況を正確に把握する習慣をつけましょう。

「純資産の部」が減っていないか、資産と負債のバランスが崩れていないかをチェックすることが、債務超過を防ぐ第一歩です。

兆候に気づいたら、手遅れになる前に専門家に相談することを強くおすすめします。

ジーケーパートナーズは、債務超過企業に対し、事業譲渡や第二会社方式など、柔軟で現実的な再建プランをご提案しています。

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