中小企業の経営者にとって、「後継者がいない」「今後どうやって事業を成長させていくか」といった悩みは、年々深刻さを増しています。
こうした課題の解決策として、近年ではM&A(企業の合併・買収)を活用する企業が急増しています。
なかでも「吸収合併」は、組織や資源を効率的にまとめる方法として注目を集めています。
とはいえ、M&Aには、手続きの煩雑さや従業員への影響など、さまざまな課題があるため、「興味はあるけれど、一歩踏み出せない」という経営者も少なくありません。
本記事では、吸収合併の中でも特に気になる「従業員の給料や雇用への影響」、さらには「親会社と子会社の合併におけるメリットとデメリット」など、実務面でのポイントを分かりやすく解説していきます。
ジーケーパートナーズでは、企業再生・事業承継・M&A支援など、経営に関する幅広い課題についてご相談いただける無料の相談会を開催しています。
「M&Aや吸収合併を検討しているけれど、何から始めればいいのか分からない」
「事業譲渡や株式譲渡との違いや手続きの流れについて、専門家の意見を聞いてみたい」
そんなお悩みをお持ちの経営者の方は、ぜひお気軽にご参加ください。
- M&Aにおける吸収合併と株式譲渡の違い
- 吸収合併と事業譲渡の違い
- 吸収合併のメリット・デメリット
- メリット①権利義務を包括的に承継できる
- メリット②シナジー効果を早期に実現できる
- メリット③資金調達が不要になる
- デメリット①PMI(統合作業)の負担が大きい
- デメリット②手続きが複雑になる
- デメリット③従業員への悪影響が懸念される
- 子会社を吸収合併するケースやメリット・デメリット
- 子会社の吸収合併が選ばれる主なケース
- メリット①統合効果がスピーディーに得られる
- メリット②負債を抱えた子会社の救済が可能になる
- メリット③許認可の引き継ぎが可能になる
- デメリット①効力発生日までの統合準備の負担がある
- デメリット②取引先との関係変化のリスクがある
- 吸収合併される側の従業員(社員)への影響
- 給与体系の影響
- リストラの可能性
- まとめ
M&Aにおける吸収合併と株式譲渡の違い
M&Aにおける「吸収合併」と「株式譲渡」の最大の違いは、法人格(会社そのもの)が残るかどうかにあります。
吸収合併では、合併される会社(消滅会社)の法人格が完全になくなり、もう一方の会社(存続会社)が、資産・負債・契約などすべての権利や義務を引き継ぎます。
一方、株式譲渡では、株式や事業を譲り受けることで経営権を取得しますが、株式譲渡された会社の法人格はそのまま存続するのが特徴です。
目的にも違いがあります。
吸収合併は、グループ会社同士の組織再編や業務効率化を目的とするケースが多く、株式譲渡は、新たな事業への参入や事業拡大・シナジー効果の獲得を目指す場合によく使われます。
手続き面でも違いがあります。
吸収合併では、契約などの権利義務が一括で引き継がれるため、個別の手続きは不要です。
吸収合併と事業譲渡の違い
吸収合併と事業譲渡の最大の違いは、「権利や義務の引き継ぎ方」にあります。
吸収合併では、「包括承継」と呼ばれる仕組みにより、消滅会社のすべての権利や義務(契約・債権・債務など)が自動的に存続会社へ引き継がれます。
一方、事業譲渡では「個別承継」となり、譲渡する財産や契約内容を、売り手と買い手が話し合って個別に決めるのが特徴です。
また、法人格の扱いにも大きな違いがあります。
吸収合併では、合併された会社(消滅会社)の法人格が完全に消滅します。
それに対して事業譲渡では、売り手側の会社は譲渡後も法人として存続し、引き続き事業を行うことができます。
さらに、手続き面の違いにも注意が必要です。
吸収合併の場合、必要な許認可もそのまま引き継がれるため、再申請の手間がありません。
一方、事業譲渡では、譲り受ける側が改めて許認可を取得し直す必要があるケースが多くなります。
なお、登記手続きに関しても吸収合併では申請が必要ですが、事業譲渡では不要となります。
吸収合併のメリット・デメリット
吸収合併は、企業同士を統合する方法として多くのメリットがあります。
しかしその一方で、実行にあたって注意すべきデメリットやリスクも存在します。
この記事では、吸収合併を検討するうえで、事前に知っておくべき主な「メリット」と「デメリット」を分かりやすく解説します。
判断を誤らないためには、双方の特徴をしっかり理解しておくことが重要です。
メリット①権利義務を包括的に承継できる
吸収合併では、消滅する会社のすべての権利や義務、資産・負債が、合併後に存続する会社へ自動的に引き継がれます。
これは「包括承継」と呼ばれ、事業譲渡のように契約ごとに個別の移転手続きが不要なため、手続きの手間を大きく省くことができます。
たとえば、従業員との雇用契約や取引先との契約もそのまま引き継がれるため、スムーズに統合を進めやすいのが特徴です。
さらに、許認可もそのまま引き継がれるケースが多いため、合併後すぐに事業を継続できるのも大きなメリットといえるでしょう。
メリット②シナジー効果を早期に実現できる
吸収合併では、合併される側の会社(消滅会社)の権利や義務、資産・負債などが、すべて自動的に存続会社へ引き継がれます。
事業譲渡のように、契約を一つひとつ移し替える必要がないため、手続きが大幅に簡素化されるのが大きな特長です。
たとえば、従業員との雇用契約や取引先との契約もまとめて引き継がれるため、合併後の混乱を最小限に抑えることができます。
さらに、必要な許認可もそのまま引き継がれるため、合併後すぐに事業を続けられる点も、吸収合併の大きなメリットといえるでしょう。
メリット③資金調達が不要になる
吸収合併では、合併の対価として「現金」だけでなく、存続会社の「株式」なども活用できます。
そのため、多額の資金を用意しなくても、実質的に買収を行えるのが大きなメリットです。
特に、自社グループの子会社を吸収合併する場合には、新たな資金調達が不要なケースが多く、コストを抑えて効率的に統合を進めることができます。
デメリット①PMI(統合作業)の負担が大きい
吸収合併では、企業ごとに異なる企業文化や業務の進め方を持つ会社同士が1つになるため、統合後の組織運営や制度の調整に大きな負担がかかります。
たとえば、従業員の配置転換や給与制度の統一、業務システムの切り替えなどが必要となり、それらを進めるには多くの時間と労力が必要です。
こうした統合作業は「PMI(Post Merger Integration/統合後の経営統合プロセス)」と呼ばれ、慎重に進めないと、社内の混乱や組織の機能不全を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
デメリット②手続きが複雑になる
吸収合併を行うには、会社法に基づいた複雑な手続きを踏まなければなりません。
具体的には、
- 合併契約書の作成と締結
- 株主総会での特別決議
- 債権者保護手続き
- 事前開示書類の準備・備え付け
など、 多くの法的手続きが必要となり、事務作業の負担も相当大きくなります。
もし手続きに不備があると、合併自体が無効になるリスクもあるため、慎重な対応が求められます。
デメリット③従業員への悪影響が懸念される
吸収合併によって組織の再編や経営方針の変更が行われると、従業員にとっては大きな環境の変化となり、不安やストレスを感じやすくなります。
特に、消滅会社に所属していた社員は、今後の雇用や待遇に対する不安を抱きやすく、モチベーションの低下や生産性の悪化、さらには離職率の上昇といったリスクが生じる可能性があります。
こうした状況を避けるためには、従業員への丁寧な情報共有と、不安を和らげるためのサポート体制が重要です。
対応を誤ると、優秀な人材の流出につながる恐れもあるため、慎重な対応が求められます。
吸収合併を成功させるためには、複雑な手続きを正しく進め、リスクやデメリットを最小限に抑えることが重要です。
そのためには、専門的な知識と豊富な実務経験を持つプロのサポートが欠かせません。
ジーケーパートナーズでは、企業再生・事業承継・M&A支援など、幅広い経営課題に対応する無料の個別相談会を実施しています。
吸収合併に関する課題や手続きの進め方について、専門家の意見を聞いてみたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
子会社を吸収合併するケースやメリット・デメリット
親会社が子会社を吸収合併するケースは、グループ全体の経営を効率化したり、組織を再編したりする目的で行われることが多く、近年では重要な経営戦略のひとつとなっています。
本記事では、実際のケースを交えながら、この手法のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
子会社の吸収合併が選ばれる主なケース
親会社が子会社を吸収合併する代表的なケースとして、まず「組織再編による経営効率化」が挙げられます。
たとえば、グループ内に似たような事業を行う子会社が複数ある場合、それらを統合することで
- 業務の重複を減らす
- 意思決定をスピードアップさせる
といったメリットが得られ、グループ全体の経営がよりスリムで効率的になります。
また、財務的に厳しい子会社を救済する目的で吸収合併が行われることもあります。
親会社が子会社の負債を引き継ぐことで、信用力の維持や事業の継続を可能にするケースです。
さらに、少し意外に思われるかもしれませんが、子会社のほうが知名度や事業基盤が強い場合には、「子会社が親会社を吸収合併する」という逆のパターンもあります。
このようなケースは「逆さ合併」と呼ばれ、子会社が存続会社として主導権を持ち、より効率的な事業運営を実現することができます。
メリット①統合効果がスピーディーに得られる
子会社の吸収合併は、株式譲渡によって子会社化する方法と比べて、すべてを1つの会社に統合できるため、M&Aの目的や効果をより早く実現しやすいのが特徴です。
別々の会社として存続する場合は、組織や業務の統合にどうしても時間がかかりますが、吸収合併によって完全に一体化することで、
- 経営方針の統一
- 業務プロセスの標準化
といった施策を、よりスピーディーに進めることが可能になります。
メリット②負債を抱えた子会社の救済が可能になる
親会社が子会社を吸収合併する場合、子会社(消滅会社)が抱える債権や債務をすべて親会社が引き継ぐことができます。
この仕組みを活用すれば、多額の負債を抱えて資金繰りが厳しくなっている子会社を、倒産のリスクから救済することが可能です。
親会社の信用力を活かすことで、子会社の事業を継続させることができ、結果としてグループ全体の安定性を守るというメリットもあります。
メリット③許認可の引き継ぎが可能になる
子会社の吸収合併では、「包括承継」の仕組みにより、子会社が持っていた許認可をそのまま引き継ぐことができます。
そのため、新たに許認可を取り直す必要がなく、合併後すぐに事業を滞りなく継続できるのが大きなメリットです。
特に、許認可の取得に時間がかかる業界(例:医療・建設・運輸など)では、このメリットは非常に重要であり、合併の判断に大きく影響する要素となります。
デメリット①効力発生日までの統合準備の負担がある
吸収合併では、合併の効力が発生したその日から、それまで別々の法人だった事業部門が、同じ法人として一体で動き始めます。
そのため、合併前の段階からしっかりと統合作業を進めておき、効力発生日には通常どおり業務をスタートできる体制を整えておく必要があります。
しかし、効力発生日までの準備期間は限られており、短期間で統合準備を完了させることが求められるため、現場の負担が非常に大きくなります。
たとえば、
- システムの統合
- 業務マニュアルの共通化
- 従業員への丁寧な説明と対応
など、 膨大な準備作業が必要になり、日常の業務に支障をきたすリスクもある点には注意が必要です。
デメリット②取引先との関係変化のリスクがある
合併会社と被合併会社のあいだで取引先が重複している場合、吸収合併によって取引先との関係に変化が生じる可能性があります。
ケースによっては、一部の取引が縮小されたり、取引条件が見直されることもあるため、合併前に社内および取引先への丁寧な情報共有が不可欠です。
特に、取引先からの理解が得られない場合には、既存の取引に悪影響が出るリスクもあるため注意が必要です。
また、子会社が独自に築いてきた取引関係が、親会社の経営方針と合わない場合、合併後にその取引を継続できなくなる可能性もあります。
その結果、売上の減少につながるおそれもあるため、慎重な検討と調整が求められます。
吸収合併される側の従業員(社員)への影響
吸収合併によって、合併される側の従業員(社員)にどのような影響があるのかは、多くの方にとって非常に関心の高いポイントです。
なかでも特に気になるのが、「給与の変化」や「リストラ(人員整理)」に関する問題ではないでしょうか。
ここでは、それぞれの影響について詳しく解説していきます。
給与体系の影響
吸収合併では、消滅会社の従業員の給料は、基本的にこれまでの条件が維持されるのが原則です。
これは、吸収合併によって雇用契約が存続会社にそのまま引き継がれ、労働条件も一緒に承継されるためです。
ただし、合併後しばらくすると、存続会社の給与体系に一本化されるのが一般的で、その際に給与水準の差によって変動が生じる可能性があります。
たとえば、存続会社の給与水準が高い場合は、給料が上がることもある一方で、水準が低い場合には、将来的に減給となるリスクもある点には注意が必要です。
こうした変化による混乱を避けるために、多くの企業では「調整手当」の支給や「段階的な統合」を行い、急激な変化を緩和する配慮がなされているのが一般的です。
リストラの可能性
吸収合併を理由にした直接的なリストラ(解雇)は、会社法第750条により原則として禁止されています。
つまり、合併によって消滅する会社の従業員の雇用は法的に守られており、合併を理由に一方的に解雇することはできません。
ただし、組織再編の結果として、業務が重複する部門では、希望退職者の募集や配置転換が行われる可能性があります。
特に、管理部門や間接部門では統合による効率化を目的に、人員の見直しが行われるケースもあり、結果的に“リストラと同様の効果”が生じる場合もあります。
また、役職の変更や勤務地の異動など、労働条件が変わる可能性もあるため、従業員にとってはこうした点にも注意が必要です。
まとめ
M&Aの中でも「吸収合併」は、特に効果的な企業統合の手法として注目されています。
成功のカギは、吸収合併と買収の違いを正しく理解し、子会社の吸収合併におけるメリット・デメリットをしっかり把握することです。
なかでも重要なのが、吸収合併される側の従業員に与える影響です。
給与やリストラの可能性について事前に検討し、必要な対策を講じておくことが、円滑な統合につながります。
吸収合併は、企業の将来を左右する重大な経営判断です。
不安要素を減らし、確実に前進するためにも、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることをおすすめします。
ジーケーパートナーズでは、企業再生・事業承継・M&A支援を中心に、経営課題に対応した無料の個別相談会を実施しております。
吸収合併やM&Aをご検討中の経営者の方は、ぜひお気軽にご参加ください。