
赤字経営が続き、資金繰りが厳しくなると、
「会社を清算したら借入金はどうなるのか」
「役員貸付金が残っていても清算できるのか」
「債務超過でも会社を清算できるのか」
と不安を感じる経営者も少なくありません。
赤字会社でも清算は可能ですが、会社の資産ですべての債務を支払えるかどうかによって、選択できる方法は異なります。
債務を全額弁済できる場合は通常清算が可能ですが、債務超過などにより借入金等を全額弁済できない場合は、特別清算や破産などを検討する必要があります。
また、清算を決める前に、事業再生やM&A、事業譲渡などを活用することで、事業や従業員、取引先との関係を引き継げる可能性もあります。
本記事では、
- 赤字会社を清算する方法
- 清算した場合の借入金や役員貸付金の扱い
- 通常清算・特別清算・破産の違い
- 清算前に検討したい事業再生やM&A
について解説します。
借入金や資金繰りに悩み、「会社を続けるべきか、清算すべきか」と迷っている経営者の方は、今後の選択肢を検討する際の参考にしてください。
「会社を清算すべきか、それとも事業を残す方法があるのか」と判断に迷われている場合は、ジーケーパートナーズの無料個別相談会をご利用ください。
ジーケーパートナーズは、中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務・事業デューデリジェンスや再生計画の策定をはじめ、事業再生・再生型M&Aを数多く支援してきました。
特に、私的整理ガイドラインを活用した事業譲渡・会社分割と特別清算を組み合わせた再生スキームなど、一般的なM&A仲介会社では対応が難しい債務超過企業の支援を得意としています。
赤字や債務超過の状況でも、早い段階で検討することで、事業や雇用を残せる可能性があります。
- 会社清算とは?
- 赤字会社でも会社清算はできるのか
- 会社清算で借金は誰が払うのか
- 会社財産の範囲で清算するのが原則となる
- 経営者に連帯保証があれば個人が返済する
- 返済しきれない債務は特別清算や破産で処理する
- 会社清算における役員貸付金の扱い方
- 役員貸付金は会社の資産として扱われる
- 清算時には回収可能性を確認し、適切に処理する必要がある
- 回収が困難な場合は、税務や債権者への影響も含めた検討が必要となる
- 赤字会社を清算・整理する主な方法
- 方法1.通常清算で会社を清算する
- 方法2.特別清算で債務を整理する
- 方法3.破産手続きで会社を清算する
- 方法4.私的整理で柔軟に債務を整理する
- 赤字会社を清算する際の注意点
- 注意点1.債務免除益を受ける場合は税務上影響を確認する
- 注意点2.一部の債権者だけへの返済は慎重に行なう
- 注意点3.資金が尽きる前に専門家へ相談する
- 清算以外に検討したい事業再生という選択肢
- まとめ
会社清算とは?
会社清算とは、会社を解散した後に、資産や負債などを整理して法人格を消滅させるための手続きです。
会社は解散を決議しただけでは消滅しません。
清算人を選任し、資産の換価や債権の回収、債務の弁済、残余財産の分配などの清算事務を行い、清算が結了してはじめて法人格が消滅します。
つまり、解散は会社を終了させる意思決定、清算はその後の資産・負債を整理する手続きと考えると分かりやすいでしょう。
赤字の有無にかかわらず、会社を解散して法人格を消滅させるためには、原則として清算手続きが必要です。
赤字会社でも会社清算はできるのか
赤字であっても会社清算は可能です。
重要なのは赤字の額ではなく、会社の資産で債務をすべて弁済できるかどうかです。
債務を全額弁済できる見込みがあれば、原則として通常清算によって会社を整理することができます。
一方、資産を処分しても借入金や買掛金などの債務を返済できない場合には、通常清算での処理が難しくなり、特別清算や破産などの手続きを検討する必要があります。
つまり、会社を清算する際は、単に「赤字かどうか」ではなく、債務を全額弁済できる状態かどうかを確認することが重要です。
赤字と債務超過の違いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事|債務超過と赤字の違いは?貸借対照表のどこを見るのか
会社清算で借金は誰が払うのか
会社を清算する場合、借入金などの債務は、原則として会社の財産から返済します。
株式会社などでは、経営者や株主が会社の借金を当然に個人で返済するわけではありません。
ただし、経営者が金融機関からの借入金などを個人保証している場合は、会社で返済できない債務について、保証債務の履行を求められる可能性があります。
会社清算における借金の扱いは、主に以下の3点を押さえておきましょう。
- 借金は原則として会社の財産から返済する
- 経営者保証がある場合は、個人に返済を求められる可能性がある
- 会社で債務を全額返済できない場合は、特別清算や破産などによる整理を検討する
以下で詳しく解説します。
会社財産の範囲で清算するのが原則となる
会社と経営者個人は法律上別人格であるため、会社の借金は原則として会社が返済義務を負います。
そのため、経営者が会社の借金を当然に個人財産から返済する必要はありません。
清算手続きでは、会社が保有する現預金や不動産、売掛金などの資産を換価・回収し、債権者への弁済に充てます。
ただし、会社の財産だけでは債務を全額弁済できない場合には、通常清算での処理が難しくなり、特別清算や破産などによる債務整理を検討することになります。
経営者に連帯保証があれば個人が返済する
中小企業では、金融機関からの借入に経営者個人の連帯保証が付いているケースがあります。
会社を清算しても経営者の保証債務が当然になくなるわけではありません。
そのため、会社の財産だけで借入金を返済できない場合、金融機関から経営者個人に残額の返済を求められる可能性があります。
ただし、個人保証があるからといって、必ずしも残った借入金の全額を経営者が自己資金で返済しなければならないとは限りません。
状況によっては、「経営者保証に関するガイドライン」などを活用して保証債務を整理できる可能性があります。
返済しきれない債務は特別清算や破産で処理する
会社の資産を処分しても借入金などの債務を全額返済できない場合、通常清算だけで会社を整理することは困難です。
このような場合には、会社の財務状況や債権者との調整状況などに応じて、特別清算や破産といった裁判所を介した手続きを検討することになります。
特別清算では、債権者との合意を図りながら債務を整理して会社を清算します。
一方、破産では、裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を換価し、法律に基づいて債権者への配当などを行います。
どの方法が適しているかは会社の状況によって異なるため、資金が尽きる前に専門家へ相談し、適切な方法を検討することが重要です。
会社の借金と経営者個人の責任範囲については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事|会社の借金は誰が払う?倒産時の責任範囲と会社を立て直す方法を解説
会社清算における役員貸付金の扱い方
役員貸付金とは、会社が役員に貸しているお金であり、会社にとっては資産(債権)です。
そのため、会社を清算する際には、役員貸付金についても回収可能性を確認し、清算手続きの中で適切に処理する必要があります。
特に、役員貸付金の金額が大きい場合や、役員に十分な返済能力がない場合には、会社の財産状況や清算方法にも影響する可能性があります。
会社清算における役員貸付金では、主に以下の点を確認しておきましょう。
- 役員貸付金は会社の資産として扱われる
- 清算時には回収可能性を確認し、適切に処理する必要がある
- 回収が困難な場合は、税務や債権者への影響も含めた検討が必要となる
以下で詳しく解説します。
役員貸付金は会社の資産として扱われる
役員貸付金とは、会社が役員に貸しているお金のことで、会社にとっては将来回収すべき資産(債権)として扱われます。
そのため、会社を清算する際も、現預金や売掛金、不動産などと同様に、会社財産の一つとして整理する必要があります。
特に注意が必要なのは、決算書に役員貸付金が計上されていても、役員に十分な返済能力がなければ、帳簿上の金額をすべて回収できるとは限らない点です。
債務超過の会社では、役員貸付金をどの程度回収できるかによって、債権者への弁済額にも影響する可能性があります。
そのため、会社の清算を検討する際には、役員貸付金の残高だけでなく、役員の返済能力や実際の回収可能性を確認することが重要です。
清算時には回収可能性を確認し、適切に処理する必要がある
会社を清算する際には、役員貸付金についても、売掛金などの他の債権と同様に回収を進める必要があります。
まず、役員貸付金の残高や返済状況、役員本人の返済能力を確認し、実際にどの程度回収できるのかを把握します。
全額を回収できる場合は、返済を受けたうえで清算手続きを進めます。
一方、役員に十分な返済能力がなく、全部または一部の回収が難しい場合には、その回収可能性を踏まえて対応を検討する必要があります。
特に債務超過の会社では、役員貸付金の回収額が債権者への弁済にも影響するため、安易に放棄することは避けなければなりません。
そのため、清算を検討する段階で役員貸付金の状況を整理し、回収が困難な場合は専門家に相談しながら適切な処理方法を検討することが重要です。
回収が困難な場合は、税務や債権者への影響も含めた検討が必要となる
役員に十分な返済能力がなく、役員貸付金の全部または一部を回収できない場合には、債権放棄などを検討することがあります。
ただし、役員貸付金は会社の資産であるため、安易に債権放棄を行うことはできません。
特に債務超過の会社では、役員貸付金の回収額が金融機関などの債権者への弁済額に影響する可能性があります。
また、会社が役員に対する貸付金を放棄した場合、役員が受けた経済的利益について税負担が生じる可能性があるほか、会社側でも放棄した金額を税務上どのように処理するか検討が必要です。
そのため、役員貸付金の回収が難しい場合は、役員の返済能力や会社の財務状況、債権者への影響、税務上の取り扱いを確認したうえで、専門家と相談しながら適切な方法を検討することが重要です。
以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事|債務免除益と役員借入金の関係は?注意点と活用方法を徹底解説
赤字会社を清算・整理する主な方法
赤字会社を清算・整理する方法は、債務を全額弁済できるか、債権者との合意形成が可能かなどによって異なります。
主な方法として、以下が挙げられます。
- 方法1.通常清算で会社を清算する
- 方法2.特別清算で債務を整理する
- 方法3.破産手続きで会社を清算する
- 方法4.私的整理により債権者と債務整理を行う
通常清算・特別清算・破産は会社を最終的に清算するための手続きですが、私的整理はそれ自体が会社を消滅させる清算手続きではありません。
方法1.通常清算で会社を清算する
通常清算は、会社の財産で債務を全額弁済できる場合に利用する一般的な清算方法です。
株主総会で解散を決議した後、清算人が売掛金などの債権回収や資産の換価、債務の弁済を行い、残余財産があれば株主へ分配して清算を結了します。
通常清算は原則として裁判所の監督を受けずに進めるため、特別清算や破産と比べて手続きが簡便です。
ただし、清算を進める中で会社の財産では債務を全額弁済できないことが明らかになった場合には、通常清算のまま処理することが難しくなり、破産などの手続きを検討する必要があります。
方法2.特別清算で債務を整理する
特別清算は、解散した株式会社を対象に、裁判所の監督のもとで債務を整理して清算する手続きです。
債権者との合意を図りながら手続きを進められる点が特徴で、破産と比べて関係者の合意を重視した柔軟な整理が可能です。
事業再生の場面では、事業譲渡や会社分割によって事業をスポンサーなどへ承継したうえで、債務が残った旧会社を特別清算する方法が活用されることもあります。
このように、価値のある事業を残しながら、旧会社の債務を整理する再生スキームと組み合わせられることも、特別清算の特徴です。
方法3.破産手続きで会社を清算する
破産は、裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を換価し、法律に基づいて債権者への配当などを行う手続きです。
特別清算のように債権者との合意を前提としないため、債権者との調整が難しい場合でも手続きを進めることができます。
破産手続き等を経て法人格が消滅すれば、会社に残った債務について法人が返済を続けることはありません。
ただし、経営者が借入金を個人保証している場合には、会社の破産とは別に保証債務への対応が必要です。
事業再生や私的整理などによる解決が難しい場合には、破産によって会社の資産・負債を整理することも選択肢の一つとなります。
方法4.私的整理で柔軟に債務を整理する
私的整理は、破産などの法的整理とは異なり、裁判所による法的手続きによらず、金融機関などの対象債権者との合意によって債務を整理する方法です。
返済条件の変更や債務免除などについて協議し、事業を継続しながら財務改善を目指す方法のほか、事業譲渡や会社分割によって事業を別会社へ承継し、残った会社を特別清算する方法などもあります。
法的整理と異なり官報公告を伴わず、対象となる債権者と調整しながら比較的柔軟に進められることが特徴です。
一方で、債務整理の対象となる金融機関などの合意が得られなければ、計画を実行することは困難です。
そのため、金融機関との調整が可能で、残すべき事業や収益力がある会社では、破産を選択する前に検討する価値のある方法といえます。
清算方法ごとの違いや手続きの詳細については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事|債務超過でも廃業できる?手続きや注意点、破産との違いを解説
赤字会社を清算する際の注意点
赤字会社の清算では、会社の財産状況だけでなく、税務や債権者への対応にも注意が必要です。
特に、債務超過の状態で一部の債権者だけに返済したり、十分な検討をせずに債務免除や資産処分を行ったりすると、その後の清算手続きに影響する可能性があります。
主な注意点は、以下の3つです。
- 注意点1.債務免除を受ける場合は税務上の影響を確認する
- 注意点2.一部の債権者だけへの返済は慎重に行う
- 注意点3.資金が尽きる前に専門家へ相談する
以下で解説します。
注意点1.債務免除益を受ける場合は税務上影響を確認する
私的整理や特別清算などで金融機関等から債務免除を受けた場合、原則としてその金額は債務免除益として益金に算入されます。
ただし、繰越欠損金があれば課税所得と相殺できる場合があるほか、一定の要件を満たす解散法人では、期限切れ欠損金を損金に算入できる制度もあります。
そのため、債務免除益が発生したからといって、必ずその金額に対して法人税が発生するわけではありません。
適用できる税務上の取り扱いは会社の状況や清算方法によって異なるため、債務免除を伴う場合は事前に税理士などの専門家へ確認することが重要です。
注意点2.一部の債権者だけへの返済は慎重に行なう
会社の資金繰りが悪化している状況で、特定の金融機関や取引先だけに優先して返済すると、後の清算手続きに影響する可能性があります。
特に、その後に破産手続きへ移行した場合には、一定の要件のもとで、すでに行った返済が問題となり、返済を受けた債権者に返還が求められることもあります。
そのため、債務超過や資金繰りが厳しい段階では、経営者だけで返済の優先順位を判断せず、専門家に相談しながら債権者への対応を進めることが重要です。
注意点3.資金が尽きる前に専門家へ相談する
会社の財務状況や借入状況、債権者との関係によって、適切な清算方法は異なります。
特に注意したいのは、資金が尽きてからでは選べる手段が限られてしまうことです。
資金に余力がある段階であれば、清算だけでなく、事業再生やM&A、事業譲渡などによって事業を残せる可能性も検討できます。
「会社を続けるべきか、清算すべきか」と迷い始めた段階で、早めに専門家へ相談し、利用できる選択肢を整理することが重要です。
清算に必要な費用については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事|債務免除益とは?中小企業の税務実務のポイントを徹底解説
関連記事|会社を畳む費用はいくら?廃業コストの相場と「持ち出し」を抑える基準とは
清算以外に検討したい事業再生という選択肢
赤字や債務超過に陥っていても、清算だけが選択肢とは限りません。
事業そのものに収益力や価値が残っていれば、事業再生によって会社や事業を残せる可能性があります。
例えば、金融機関と返済条件の見直しなどを行いながら会社自体の再生を目指す方法があります。
一方、会社全体の再生が難しい場合でも、私的整理の手続きなどを活用し、事業譲渡や会社分割によって収益性のある事業をスポンサーへ承継したうえで、債務が残った旧会社を特別清算する方法が検討されることもあります。
このような再生型M&Aでは、価値のある事業や雇用を残しながら、旧会社の債務整理や経営者保証への対応をあわせて検討できることが特徴です。
一般的なM&A仲介では対応が難しい債務超過企業でも、事業再生とM&Aを組み合わせることで、事業を次の会社へ引き継げる可能性があります。
そのため、「赤字が続いているから清算する」と決める前に、事業再生やM&Aを含めて選択肢を検討することが重要です。
事業再生については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事|会社の立て直し方!再生できる会社・難しい会社の分かれ目を解説
関連記事|DESで債務超過を解消!メリットと注意点を専門家が解説
まとめ
赤字会社でも清算は可能ですが、重要なのは赤字の金額ではなく、会社の財産で債務を全額弁済できるかどうかです。
債務を全額弁済できる場合は通常清算が可能ですが、返済できない場合には、特別清算や破産などを検討する必要があります。
また、経営者が借入金を個人保証している場合には、会社の清算とは別に保証債務への対応も必要です。
役員貸付金がある場合は、会社の資産として回収可能性を確認し、清算手続きの中で適切に処理します。回収が困難な場合の債権放棄などには税務上の問題が生じる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
そして、赤字や債務超過だからといって、必ずしも会社や事業をすべて清算する必要はありません。
事業に収益力や価値が残っていれば、事業再生やM&A、事業譲渡などによって事業や雇用を残せる可能性があります。
資金が尽きるほど選択肢は限られていくため、「会社を続けるべきか、清算すべきか」と迷った段階で、早めに専門家へ相談し、自社に適した方法を検討することが重要です。
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