
「会社が赤字なら法人税はかからない」と考えている経営者の方は少なくありません。
確かに、所得に対して課される法人税は、赤字決算であれば原則として発生しません。
しかし、赤字であっても法人住民税の均等割や消費税など、納付が必要となる税金があるため、「赤字だから税金はゼロ」というわけではありません。
また、赤字が続くと税金だけでなく、資金繰りの悪化や金融機関からの評価低下など、経営全体に影響が及ぶ可能性があります。
そのため、税金の仕組みを理解するとともに、財務状況を踏まえた対応を検討することが重要です。
本記事では、
- 赤字決算でも納付が必要となる税金の種類
- 繰越欠損金や欠損金の繰戻しによる還付制度の仕組み
- 赤字が続く場合に検討すべき経営改善・事業再生の選択肢
について、企業再生の実務経験を踏まえながら分かりやすく解説します。
「赤字なのに税金を支払わなければならず資金繰りが厳しい」
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会社が赤字の場合、法人税はどうなるか
会社が赤字決算となり課税所得がない場合、法人税(国税)は原則として発生しません。
しかし、「赤字だから税金は一切かからない」というわけではありません。
実際には、所得の有無にかかわらず納付が必要となる税金もあり、赤字企業の資金繰りを圧迫する要因となることがあります。
代表的なものは、次の3つです。
- 法人住民税(均等割)
- 消費税
- 固定資産税・自動車税など資産にかかる税金
なお、地方法人税は法人税額を基礎として計算されるため、法人税額がゼロであれば地方法人税も原則として発生しません。
そのため、地方法人税は「赤字でも納付が必要な税金」には含まれない点を理解しておきましょう。
それでは、それぞれの税金について詳しく解説します。
法人住民税の均等割は赤字でも課税される
法人住民税の均等割は、会社が赤字であっても原則として納付が必要となる税金です。
法人住民税は、所得に応じて課税される「法人税割」と、所得の有無にかかわらず一定額が課される「均等割」で構成されています。
このうち均等割は、法人が存在することに対して課される税金であるため、赤字決算で法人税が発生しない場合でも、原則として納税義務はなくなりません。
均等割の金額は、資本金の額や従業員数などに応じて決まります。
資本金1,000万円以下など一般的な中小企業では、年間7万円程度が標準的ですが、実際の税額は自治体によって異なります。
消費税は所得ではなく取引に対して課される
消費税は、法人税とは異なり、会社の所得ではなく、課税対象となる取引に対して課される税金です。
そのため、赤字決算で法人税が発生しない場合でも、課税事業者に該当する会社は、原則として消費税を納付しなければなりません。
特に、売上はあるものの原材料費や人件費の増加などによって利益が出ていない会社では、法人税がゼロでも消費税の納税資金を確保する必要があります。
そのため、赤字企業にとって消費税は、資金繰りに大きな影響を与える税金の一つといえるでしょう。
固定資産税や自動車税は資産の保有に対して課税される
固定資産税や自動車税(種別割)は、会社の所得ではなく、土地・建物・設備・車両などの資産を保有していることに対して課される税金です。
そのため、事業用の土地や建物、車両などを保有している会社は、赤字決算で法人税が発生しない場合でも、原則としてこれらの税金を納付しなければなりません。
これらの税金は所得課税とは性質が異なるため、会社が利益を計上しているかどうかにかかわらず発生する点が特徴です。
特に、不動産や車両を多く保有する企業では、固定資産税や自動車税が毎年の固定的な支出となり、赤字が続くと資金繰りを圧迫する要因になることがあります。
会社の赤字は繰越欠損金で将来の黒字と相殺できる
繰越欠損金とは、ある事業年度に生じた赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越し、将来発生する黒字(所得)と相殺できる制度です。
赤字が発生した年度の損失をその年だけで切り捨てるのではなく、将来の黒字と通算できるため、会社の税負担を適正に計算する重要な仕組みとなっています。
制度の主なポイントは次のとおりです。
- 青色申告書を提出している法人は、欠損金を原則10年間繰り越すことができる
- 相殺できるのは、繰り越した欠損金の範囲内に限られる
- 中小法人では原則として所得の全額まで控除できる一方、大企業では控除できる所得額に一定の制限が設けられている
繰越欠損金は、「税金を減らすための制度」ではありません。赤字と黒字を通算して所得を適正に計算するための制度です。
将来会社が黒字化した際の法人税額や資金繰りにも影響するため、制度の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
出典:国税庁
繰越欠損金の繰戻還付で法人税の一部が戻る仕組み
欠損金の繰戻還付とは、前期に納付した法人税について、当期に生じた赤字(欠損金)を前期へ繰り戻して適用し、納め過ぎた法人税の還付を受けられる制度です。
前期が黒字で法人税を納付し、当期が赤字となった場合に利用できる可能性があります。
具体的には、前期の所得から当期の欠損金相当額を差し引いて法人税額を再計算し、その差額が還付される仕組みです。
利用にあたっては、次の点に注意しましょう。
- 原則として、一定の要件を満たす中小企業者等が対象となる
- 還付を受けるには、確定申告書とあわせて必要書類を提出する必要がある
- 還付申告では、申告内容の確認のため、税務署から問い合わせや税務調査が行われる場合がある
繰戻還付は、納付済みの法人税が還付されるため、赤字となった企業の資金繰り改善に役立つ制度です。
一方で、適用要件や手続きは細かく定められているため、制度を利用する際は税理士などの専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
出典:国税庁
赤字決算を続けると会社の信用力に影響が及ぶ
会社の赤字決算が複数期にわたって続くと、金融機関や取引先からの信用力が低下し、資金調達や事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
金融機関は、決算書の内容をもとに企業の収益力や返済能力を評価しています。
そのため、赤字が続くと、新規融資を受けにくくなったり、追加融資や借換えの条件が厳しくなったりするケースがあります。
また、取引先から取引条件の見直しや支払条件の変更を求められることもあり、資金繰りがさらに悪化する要因となります。
なお、赤字そのものが倒産の直接的な原因ではありません。
しかし、赤字が長期間続くことで手元資金が減少し、資金ショートを招けば、結果として倒産につながるリスクが高まります。
そのため、信用力の低下を軽視せず、赤字が続く前の早い段階から経営改善や資金繰り対策を検討することが重要です。
以下の記事では、借入金がどのような場合に倒産につながるのかを詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:会社の借金で倒産するのはどんなとき?「潰れる借金」と「安全な借金」の違いを解説
赤字が続く場合に検討すべき対応策
赤字決算が一時的なものではなく、複数期にわたって続いている場合は、税金への対応だけでなく、経営そのものを見直すことが重要です。
赤字を放置すると、手元資金の減少や金融機関からの信用力低下につながり、選択できる経営改善策が徐々に限られてしまいます。
そのため、状況が深刻化する前に適切な対策を講じることが大切です。
代表的な対応策として、次の3つが挙げられます。
- 経費や固定費を見直し、コスト構造を改善する
- 資金繰りを改善し、必要に応じて金融機関へ相談する
- 事業再生やM&Aを活用し、会社の再生を目指す
それぞれの内容について詳しく解説します。
経費や固定費を見直し、コスト構造を改善する
赤字が続いている場合、まず取り組むべきなのが経費や固定費の見直しによるコスト構造の改善です。
売上を増やすには一定の時間がかかりますが、コスト削減は自社の判断で比較的早く着手できるため、短期的な収益改善につながりやすい対策といえます。
例えば、
- 採算の合わない事業やサービスの見直し
- 外注費や広告宣伝費など販売管理費の適正化
- 仕入条件や在庫管理の見直し
- 遊休資産の売却や固定費の削減
などを進めることで、利益体質への転換を図ることができます。
ただし、必要な人材や設備への投資まで削減すると、かえって競争力の低下を招くおそれがあります。
将来の成長に必要な投資は維持しながら、無駄なコストを見直すことが重要です。
資金繰りを改善し、必要に応じて金融機関へ相談する
赤字が続き、資金繰りに不安が生じている場合は、資金が底をつく前に金融機関へ相談することが重要です。
資金繰りが悪化してからでは選択肢が限られるため、早い段階で現状を整理し、金融機関と今後の対応について協議することで、経営改善につながる可能性があります。
例えば、
- 借入金の返済条件の見直し(リスケジュール)
- 経営改善計画の策定
- 資金繰り表を活用した資金管理の徹底
などに取り組むことで、当面の資金繰りを安定させられるケースがあります。
また、金融機関に対して経営改善へ取り組む姿勢と実現可能な計画を示すことは、追加融資や借換えなど、その後の資金調達にも良い影響を与える可能性があります。
事業再生やM&Aを活用し、会社の再生を目指す
自社の取り組みだけでは赤字からの立て直しが難しい場合は、事業再生を目的としたM&Aを検討することも有効な選択肢です。
赤字や債務超過の状態であっても、事業そのものに収益力や将来性があれば、スポンサー企業への事業譲渡や会社分割などの再生スキームを活用し、事業や雇用を維持しながら再生を目指せる場合があります。
また、金融機関との合意形成が必要となるケースでは、私的整理ガイドラインを活用した事業再生を組み合わせることで、事業の継続と財務改善を両立できる可能性があります。
こうした再生型M&Aは、一般的なM&A仲介会社では対応が難しい分野です。
一方で、企業再生とM&Aの両方に精通した専門家であれば、財務分析や再生計画の策定、金融機関との調整を含め、一貫した支援を受けることができます。
以下の記事では、M&Aを活用した事業再生の具体的な手法について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:事業再生の手法を徹底解説!M&Aの活用で早期の立て直しを実現する
まとめ
会社が赤字であれば、所得に対して課される法人税は原則として発生しません。
しかし、法人住民税の均等割や消費税、固定資産税など、赤字であっても納付が必要な税金があるため、「赤字だから税金はかからない」と考えるのは誤りです。
また、繰越欠損金や欠損金の繰戻還付は、赤字と黒字を通算して所得を適正に計算するための重要な制度です。
将来の税負担や資金繰りにも影響するため、適用要件や仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
一方で、赤字が複数期にわたって続いている場合は、税務上の対応だけでは根本的な解決にはなりません。
経費や固定費の見直し、金融機関との協議、経営改善計画の策定に加え、状況によっては事業再生や再生型M&Aも視野に入れながら、早めに対応を検討することが重要です。
赤字そのものが倒産の原因ではありません。
しかし、赤字を放置して資金繰りが悪化すると、選択できる対策は徐々に限られてしまいます。
会社を守るためにも、経営状況に不安を感じた段階で現状を整理し、適切な対応を検討することをおすすめします。
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