事業承継とは、現在の経営者が築き上げた会社や事業を、次の世代へと引き継ぐための重要なプロセスです。
近年、日本では中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、事業承継は企業の将来を左右する避けては通れない課題となっています。
事業を継続・発展させていくためには、早めの準備と計画的な対応が不可欠です。
本記事では、事業承継の基本的な考え方から、具体的な進め方や成功のポイントまでを分かりやすく解説します。
これから事業承継を考えている方にとって、実践的なヒントが得られる内容となっています。
ぜひご参考にしてください。
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事業承継とは?
事業承継とは、経営者が自身の事業を後継者に引き継ぐことを指します。
ただ経営権を譲るだけではなく、長年にわたって築き上げてきた技術、ノウハウ、そして従業員など、企業の重要な資産全体を引き継ぐ、総合的なプロセスです。
事業承継で引き継がれる主な要素は、以下の3つに分けられます。
経営要素 | 主な内容 | 重要なポイント |
経営権 | ・社長の役割
・経営権 ・意思決定権 ・経営責任 |
・後継者の選定・育成
・リーダーシップの継承 ・経営判断能力の移転 |
経営資源 | ・経営理念
・会社の信用力 ・ブランド ・独自のノウハウ ・技術 ・人材 ・人脈 |
・企業文化の継承
・無形資産の価値保持 ・取引先との関係維持 ・従業員の定着 |
物的資源 | ・自社株式
・土地・建物 ・設備 ・運転資金 ・個人の資産 |
・株式の適切な評価
・税務対策 ・資金調達計画 ・資産の整理・分離 |
これら3つの要素は相互に深く関係しており、どれか一つでも欠けると承継後の経営に支障をきたす可能性があります。
したがって、それぞれをバランスよく引き継ぐことが、事業承継を成功させるための重要なポイントです。
事業継承の重要性
帝国データバンクが実施した「100年経営企業」に関するアンケート調査によると、100年以上にわたって事業を継続できた理由として、企業からは以下のような回答が寄せられています。
- 取引先や顧客との信頼関係を築いてきた(73.8%)
- 時代に合わせて事業内容や構成を柔軟に変えてきた(64.4%)
これらの結果から分かるのは、時代の変化に対応しながらも、顧客との信頼関係を大切にしてきた企業こそが、長く続いているということです。
つまり、企業の持続的な成長には、柔軟な変化と信頼の積み重ねが不可欠であり、これを次世代にしっかりと引き継ぐ事業承継の重要性を裏付けるデータと言えるでしょう。
2025年問題の深刻性
帝国データバンクの調査によると、いわゆる「2025年問題」が現実となりつつあり、70歳以上の中小企業・小規模事業者の経営者が全体の約25%を占めるまでに高齢化が進んでいます。
さらに、そのうちの約半数は後継者が決まっていないという深刻な実態が明らかになっています。
このまま適切な対応を取らなければ、たとえ利益を上げている企業であっても、後継者不在のために廃業を余儀なくされる「黒字廃業」が全国で多数発生する恐れがあります。
この問題を放置すると、次のような深刻な影響が生じる可能性があります。
- 雇用の喪失
- 長年培われた技術やノウハウの消失
- 地域経済の縮小と、日本経済全体の衰退
つまり、事業承継は一企業の問題にとどまらず、日本全体の雇用・経済・社会基盤に直結する重要な課題なのです。
事業承継の種類と特徴
現代の事業承継は、承継先のタイプによって大きく3つのパターンに分けられます。
それぞれにメリットと課題があり、状況に応じた選択が求められます。
注目すべき近年の傾向としては、これまで主流だった家族(親族)への承継が減少し、代わって社外の第三者への事業売却(M&Aなど)が急速に増えている点が挙げられます。
このような背景を踏まえ、以下ではそれぞれの承継パターンの特徴とポイントを詳しく解説します。
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親族内事業承継
家族や親戚への事業引き継ぎは、日本の企業において長年採用されてきたもっとも伝統的な事業承継の形です。
この方法のメリットは、企業の理念や社風などの「見えない資産」が自然と受け継がれやすく、取引先や従業員など社外の関係者にも安心感を与えやすいという点にあります。
一方で、後継者を選ぶ際には慎重な判断が求められます。
特に、以下のような資質を備えているかが重要なポイントです。
- 事業運営に対する強い意志と責任感
- 会社の価値観や理念との相性
- 実務をこなすためのスキル・経験
- 社内外からの信頼や人望
また、税務面では「事業承継税制」の要件が緩和されており、相続や贈与にかかる税負担が大きく軽減されています。
ただし、複数の相続候補者がいる場合は注意が必要です。将来のトラブルを防ぐためにも、早い段階での話し合いや関係者間の合意形成が不可欠となります。
親族外事業承継(従業員承継)
近年、社内の幹部や従業員に事業を引き継ぐ「従業員承継」が増えてきています。
現場を熟知している人材が経営を引き継ぐため、業務の流れや企業文化がスムーズに受け継がれやすく、事業の継続性を確保しやすいというメリットがあります。
また、2022年に更新された政府ガイドラインでは、従業員承継に関する具体的な進め方や注意点が詳しく紹介されており、実務面での支援体制も整ってきています。
ただし、この方法にも以下のような注意点があります。
- 経営権を取得するための資金調達
- 後継者候補に経営者としての資質があるかの見極め
これらについては、慎重な計画と十分な準備が必要です。
M&Aによる事業承継
第三者企業への事業売却、いわゆるM&A(企業の合併・買収)は、2010年代以降に大きく増加しています。
この背景には、深刻化する後継者不足と、政府によるM&A支援制度の整備・強化があり、多くの中小企業にとって現実的な選択肢となりつつあります。
第三者への売却には、次のようなメリットがあります。
- 適切な買い手を見つければ、事業のさらなる成長が期待できる
- 創業者が売却益(対価)を得ることができる
一方で、以下のような課題もあるため、慎重な準備と判断が必要です。
- 企業文化の違いによる摩擦
- 従業員の雇用条件や役職の変更などへの対応
そのため、売却先の企業選びが極めて重要です。ただ売却するだけでなく、「誰に引き継ぐか」が事業の将来を左右します。
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事業承継成功のための7つのポイント
事業承継を円滑に進めるためには、行き当たりばったりではなく、戦略的に計画を立てて取り組むことが重要です。
ここでは、事業承継を成功へ導くために押さえておくべき重要なポイントをわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
長期計画での準備
事業承継は、短期間で終わるものではありません。
中小企業庁のガイドラインでも、後継者の育成を含めて5〜10年程度の準備が必要とされています。
その理由は、以下のように多くのステップと時間を要するからです。
- 後継者の選定と育成
- 経営に必要な知識やスキルの習得
- 社内外の関係者への周知・理解促進
- 相続・贈与・登記などの各種手続き
特に、親族や従業員への承継では、経営者としての資質を身につけるための教育や、企業文化の継承に時間がかかるのが現実です。
多くの経営者が70代を迎え、事業承継が本格化する時期に入っています。
後継者不在による廃業の増加を防ぐためにも、計画的な事業承継に早期から取り組むことが、企業の存続と発展にとって不可欠です。
後継者の選定と育成
後継者の選定では、経営者としての資質と意欲を慎重に見極めることが不可欠です。
まずは、企業が求める理想のリーダー像(人物像)を明確にすることから始めましょう。
その上で、社内人材の評価や適性検査を行い、候補者の能力や性格を多角的に把握します。
さらに、メンター制度の導入により、候補者の価値観や意欲をじっくりと理解し、経営に向けた意識づくりを促すことも効果的です。
後継者が決定した後は、段階的かつ実践的な育成プログラムの実施が重要です。
具体的には下記のような育成方法があげられます。
- 複数の部署を経験させることで、会社全体の流れを把握させる
- 現経営者と行動をともにし、経営判断や意思決定のプロセスを肌で学ばせる
- 外部の経営セミナーへの参加や、他社での実務経験(出向など)を通じて視野を広げる
このように、実践の中で学ばせる機会を意識的に設けることが、次世代経営者としての成長を大きく後押しします。
資金繰り対策と最新税制の活用
事業承継には、相続税や贈与税、各種手数料など多額の費用がかかるため、事前の資金計画がとても重要です。
こうした中、2025年4月1日以降の贈与から、事業承継税制の要件がさらに緩和され、制度の利用がこれまで以上にしやすくなりました。
- 法人版(非上場株式等)の変更点
これまでは、株式を贈与される側が「3年以上継続して役員であること」が要件でしたが、改正により「贈与時に役員に就任していること」でよくなりました。これにより、承継までの準備期間が短い場合でも、制度を活用しやすくなっています。
- 個人版(個人事業主)の変更点
新たに個人事業主向けの贈与税・相続税の納税猶予制度が創設されました。これにより、特定の事業用資産(不動産など)を承継する際の税負担が軽減されます。
これにより、制度の利用がしやすくなり、承継時の税負担を大幅に抑えることが可能となっています。
なお、制度の適用期限は以下の通りです。
- 法人版:2027年12月末まで
- 個人版:2028年12月末まで
この制度を有効に活用するためには、早めの資金計画の立案と、専門家による税務アドバイスが不可欠です。制度の詳細や適用条件は複雑なため、必ず専門家に相談しながら進めるようにしましょう。
経営権分散対策
経営権が複数の相続人に分散すると、企業運営に深刻な影響を与える可能性があります。
意思決定のスピードが遅くなる、経営方針をめぐって意見が対立するなど、組織の統一感が失われやすくなります。
こうしたトラブルを避けるためには、経営権を一人の後継者に集中させる仕組みづくりが重要です。
主な対策は下記のとおりです。
- 遺言書を作成し、後継者と財産の分配を明確にしておくこと
→これにより、事業に必要な資産(例:株式や事業用資産)の分散を防ぎ、混乱を回避できます。 - 株式を事前に集約しておくこと
→後継者が会社の意思決定に必要な議決権をあらかじめ確保できるようにします。 - 議決権の整理・調整
→たとえば、種類株の活用などで、経営上の主導権を明確にする方法もあります。
これらの対策を早めに講じておくことで、事業承継後の経営の安定性が格段に高まります。
専門家への相談
事業承継を円滑に進めるには、法務・税務・財務などの高度な専門知識が求められます。
しかし、多くの経営者にとって事業承継は初めての経験であり、これらの知識を十分に備えているとは限りません。
そのため、次のような専門家のサポートを受けながら進めることが重要です。
- 法的手続きや契約関係は→弁護士
- 相続税や贈与税などの税務対応は→税理士
- 財務状況の分析や資金計画は→公認会計士
- 承継戦略や事業再構築の支援は→中小企業診断士
事業承継にはさまざまな課題があり、経営者一人で対応するのは非常に困難です。
信頼できる専門家と連携することで、適切な判断やスムーズな手続きを実現でき、事業承継の成功につながります。
相続トラブル対策
事業承継を進めるうえで、相続をめぐるトラブルには十分な注意が必要です。
特に、承継の準備が整わないまま経営者が亡くなった場合、親族が急きょ後継者になるケースも少なくありません。
相続人が複数いる場合は、それぞれの思いや利害が絡みやすく、遺産分割や経営権をめぐって争いになる可能性もあります。
こうしたトラブルを避けるためには、次のような具体的な対策を事前に講じておくことが大切です。
- 後継者の選定と意思の確認、遺言書による経営権の明確化
- 自社株の評価額を適切に抑える工夫(例:株価対策や配当調整)
- 株式の分散を防ぎ、後継者に集約する計画の策定
- 取引先や金融機関との信頼関係を維持するための情報共有や説明
あらかじめ相続人や関係者の意向を整理し、承継後の経営が円滑に進むよう備えておくことが、企業の安定と存続につながります。
最新の事業承継ガイドライン活用
事業承継を進めるうえで、2022年3月に5年ぶりに改訂された事業承継ガイドライン(改訂第3版)の確認は非常に重要です。
この改訂では、特に以下の点が強化されています。
- 従業員承継や第三者承継(M&A)に関する解説がより詳しくなった
- 後継者の視点からの説明や実務的な内容が充実した
さらに、M&Aを活用した事業承継を検討している場合には、同時に策定された「中小PMIガイドライン」も参考になります。これは、M&A後の経営統合(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)に関する具体的な指針を示したものです。
これらの最新資料を活用することで、事業承継全体の流れを正しく把握し、準備や手続きをもれなく進めることが可能になります。
実務に入る前に、ぜひ一度目を通しておきましょう。
まとめ
事業承継とは、経営者がこれまで築き上げてきた事業を、次の世代へと引き継ぐための重要な取り組みです。
事業を確実に引き継ぐには、単に経営権を移すだけでなく、次の3つの要素を総合的に承継することが不可欠です。
- 経営権(会社の意思決定を行う力)
- 経営資源(人材、ノウハウ、取引先など)
- 物的資産(設備や資金などの経営に必要な資産)
承継の方法には大きく分けて次の3つがあります。
- 親族内承継(家族への引き継ぎ)
- 親族外承継(社内の幹部や従業員への引き継ぎ)
- M&A(第三者への事業売却)による承継
それぞれの方法には、異なる課題や注意点があり、適切な対策を講じることが必要です。
事業承継は、単なる世代交代ではありません。
企業の継続的な成長や従業員の雇用を守るため、そして日本経済を支える中小企業が活力を保つためにも、非常に重要な取り組みです。
そのためには、早期からの準備と、戦略的なアプローチが欠かせません。
円滑な承継を実現し、次の世代へと安心してバトンを渡すために、今から行動を始めましょう。
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