「債務超過の企業の株式は本当に0円や1円なのか?」「譲渡価格が0円と1円では何が違うのか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
実際には、債務超過であっても、適切な譲渡スキームを活用することで企業価値を最大化することが可能です。
本記事では、株式譲渡が実質0円とされる背景、1円譲渡のメリット、さらにM&Aを成功させるための重要なポイントを、わかりやすく解説します。
なお、ジーケーパートナーズでは、債務超過企業向けに「無料個別相談会」を実施しています。
企業価値の評価や最適な譲渡スキームのご提案も行っていますので、どうぞお気軽にご相談ください。
債務超過企業の株式価値が実質0円と評価される5つの理由
債務超過企業の株式が実質0円と評価される主な理由は、次の5つです。
- 清算価値がマイナスであること
- 将来性がなくなっている
- 相続税評価上、特有の算定方法がある
- 清算時に実質的な価値が大きく減少する
- 裁判例において評価基準を実質0円を示唆する判例がある
これらの背景について、次に詳しく解説していきます。
清算価値がマイナスであること
債務超過の企業は、「負債が資産を上回っている」状態のため、会社を清算しても株主に分配される財産が残りません。むしろ、債務が資産を上回っているため、不足分が出る状況です。
株式は会社に対する持ち分であり、残余財産に対する請求権を持ちますが、分配される財産がない場合、その価値は実質的にゼロと判断されるのが一般的です。
将来性がなくなっている
債務超過の企業であっても、将来的に業績回復や債務免除の見込みがある場合には、株式に一定の価値が認められることがあります。
しかし、債務超過の解消が現実的ではなく、無償取得(100%減資)を行わなければ新たな資金調達もできず、倒産のリスクが高い状況では、その可能性もほとんどなくなります。
このようなケースでは、将来的な価値回復の見込みも乏しく、株式に付随する潜在的な価値も認められなくなるため、結果的に株式の評価は実質0円となります。
相続税評価上、特有の算定方法がある
相続税の評価では、純資産価額方式により株式を評価した結果、評価額がマイナスまたはゼロとなった場合、その株式の税務上の評価額は実質0円となります。
相続税評価では、複数の評価方法のうち、最も低い評価額が選択されるのが原則です。
そのため、類似業種比準価額方式でプラスの評価が出ても、純資産価額方式でマイナス評価となれば、最終的に実質0円とされることがあります。
これは税務制度上の取り扱いによるもので、債務超過企業の株式が実質0円と評価される根拠の一つです。
清算時に実質的な価値が大きく減少する
企業が清算される際には、帳簿上の資産価値よりも、実際の売却価格(処分価値)が大幅に低くなることが一般的です。
たとえば、機械設備や無形固定資産はほとんど価値がつかず、不動産も鑑定評価額を下回る価格で売却されることが多く見られます。
さらに、清算に伴い取引停止や契約解除による違約金、従業員への退職金の上乗せ、弁護士など専門家への報酬など、追加コストも発生します。
その結果、帳簿上は債務超過でなくても、実質的には債務超過とみなされる場合があります。
裁判例において評価額を実質0円と示唆する判例がある
裁判所の判例では、債務超過が深刻で清算が現実的に見込まれる企業について、株式の価値を実質的に0円が妥当と判断されたケースがありました。
このように、実際の裁判では、債務超過企業において、株式の評価額を実質0円と示唆するケースが存在します。
実質0円譲渡のリスク
実質0円譲渡には、以下のようなリスクが伴います。
- みなし贈与税が課される可能性
- 債権者による取消権の行使
- 遺留分を侵害するリスク
これらのリスクとその回避策について、以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
みなし贈与税が課される可能性
株式を実質0円で譲渡すると、本来の価値との差額が「みなし贈与」と判断され、贈与税が課される可能性があります。
特に親族間での取引は、税務署による厳しいチェックの対象となることが多いため注意が必要です。
たとえば、実質的な株式価値が1,000万円あるにもかかわらず実質0円で譲渡した場合、その1,000万円が贈与とみなされ、贈与税が課される恐れがあります。
債権者による取消権の行使
債務超過の企業の株式を「ほとんど価値がない」として実質0円で第三者に譲渡すると、その行為が「債権者に損害を与える目的だった」と見なされて、債権者から「詐害行為」として譲渡の取り消しを求められる可能性があります。
これは、もともと債務超過の状態では、わずかでも財産的価値のあるものを手放すことで、債権者が回収できる可能性がさらに減ってしまうためです。
とくに譲渡先が身内や関係者などの場合には「財産隠し」と疑われやすく、「詐害行為取消権」が行使されるリスクがあります。
遺留分を侵害するリスク
親族間で株式を無償で譲渡すると、将来の相続時に他の相続人から「遺留分を侵害している」として争いになる可能性があります。
特に、親が特定の子どもに株式を無償で譲渡した場合、他の兄弟姉妹から「特別受益」と見なされ、遺留分侵害額請求の対象となるリスクも高まります。
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1円譲渡が選ばれる理由
債務超過企業の株式を譲渡する際、0円ではなく「1円」という金額が設定されるのには、実務上の合理的な理由があります。
たとえ債務超過であっても、1円という象徴的な価格を設定することで、売り手・買い手双方にとってメリットが生まれるのです。
ここでは、その主な理由について解説します。
備忘価額として記録しておく意義
備忘価額とは、実質的な価値を失った資産を帳簿上で管理し続けるために設定される、名目的な金額(通常は1円や10円など)のことです。
資産の価値を0円にすると帳簿から消えてしまうため、「存在を忘れないように」最小限の金額を付けて記録しておく目的があります。
日本では、2007年の税制改正により、それまでの固定資産の減価償却における残存価額(取得価額の10%)が廃止され、1円などの備忘価額まで減価償却できるようになりました。
1円譲渡もこの「備忘価額」としての意味を持ちます。
資産や株式を0円とすると「存在しない」と見なされるおそれがあるため、会計・税務上の整合性を保つためにも、1円などの象徴的な金額を付けるのが一般的です。
これにより、帳簿上で資産の存在を維持でき、将来的に価値が回復した際に再評価益を得る可能性が残せるというメリットもあります。
税務リスクの軽減
株式を1円で譲渡することで、完全な無償譲渡(0円譲渡)よりも税務上のリスクを抑えることができます。
債務超過が明らかで、企業に実質的な価値がないと判断される場合には、1円で譲渡しても問題ないとされています。
ただし、注意が必要なのは、資産に含み益があるケースや、役員からの借入金を放棄すれば債務超過が解消されるような場合です。
このような場合、税務上「実際には価値がある」と見なされ、1円譲渡でも贈与と判断されるリスクがあります。
したがって、株式の実際の価値や債務超過の実態を事前にしっかり確認することが重要です。
実務上の合理性
債務超過企業のM&Aでは、買い手が負債や連帯保証を引き継ぐことが一般的です。
たとえば、企業の価値が5億円で、同額の借入金がある場合、純資産はゼロとなるため株式の評価額も実質0円となります。
それでも実際の取引では、形式的な証拠として「1円」で譲渡されることがあります。
この「1円」は、買い手が“借入金と引き換えに企業価値がある”と判断した証拠であり、取引の合理性を示す意味があります。
このように、1円譲渡は合理的なメリットがある手法として、今後さらに活用が広がる可能性が高いでしょう。
債務超過でも高値で売れるケース
債務超過の企業であっても、次のような条件を満たしていれば、高値で売却できる可能性があります。
- 帳簿に現れていない隠れた資産価値がある
- 将来的な収益の見込みや買い手企業とのシナジー効果が期待できる
- 独自の技術や安定した顧客基盤など、他社にはない強みがある
以下で詳しい内容を解説します。
帳簿に現れていない隠れた資産価値がある
貸借対照表では債務超過に見えても、実際には資産の時価が簿価より高い場合があります。
たとえば、土地や建物が取得時の価格(簿価)で計上されていても、現在の市場価格(時価)は大きく上がっていることがあります。また、特許や商標などの知的財産が、帳簿上では適切に評価されていないケースもあります。
このような「隠れた資産」が判明すれば、見かけ上は債務超過でも、実際には価値のある企業として高値で売却できる可能性があります。
将来的な収益の見込みや買い手企業とのシナジー効果が期待できる
現在は債務超過でも、事業モデルに収益性があり、経営改善によって黒字化が見込める企業は高く評価される可能性があります。
特に、買い手企業との相乗効果(シナジー)が期待できる場合には、債務超過の金額を上回る価格で売却されることもあります。こうした将来性が評価されることで、思わぬ高値でのM&Aにつながることもあるのです。
独自の技術や安定した顧客基盤など、他社にはない強みがある
独自の技術や特許、専門性の高い人材、強固な顧客基盤など、他社が簡単に真似できない強みを持つ企業は、たとえ債務超過であっても高く評価されることがあります。
特に、業界内で明確な競争力がある場合や、買い手企業の弱点を補えるような資源を持っている場合には、財務状況に関係なく高い企業価値が認められる可能性があります。
まとめ
債務超過企業の株式譲渡では、株式価値が実質0円とされることが多いですが、適切な方法を取れば企業価値を最大限に引き出せます。
また、実質0円譲渡には贈与税が課されるリスクや遺留分侵害の問題があるため、1円譲渡を選ぶのも有効な方法です。
これによって税務リスクを減らし、備忘価額として資産が存在していることを示せます。
M&Aを成功させるためには、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
また、ジーケーパートナーズでは、「Reset M&A」という債務超過企業専門のM&A仲介サイトを運営しており、日本初の試みとして債務超過企業のM&Aに取り組んでいますので、ぜひご活用ください。