
「会社の借金が返せなくなったら、社長個人も自己破産するしかないのではないか」
このような不安を抱えながら、誰にも相談できずに悩んでいる経営者の方は少なくありません。
しかし結論から言えば、会社の借金が返済できなくなったからといって、必ずしも社長が自己破産する必要はありません。
会社の債務と社長個人の債務は、法律上は原則として別に扱われます。
にもかかわらず、「もう打つ手がない」「金融機関に迷惑をかけるくらいなら破産しかない」「自己破産すればすべて終わりだ」といった思い込みから、本来選択できたはずの再生策や回避策を知らないまま、最悪の判断をしてしまうケースも実務上多く見てきました。
実際には、
- 社長が自己破産に至るケース
- 自己破産を回避できるケース
- 早めに動けば会社や事業、雇用を守れるケース
は明確に分かれます。
その分かれ道は、「借金があるかどうか」ではなく、状況の整理と判断のタイミングにあります。
本記事では、
- 会社の借金と社長の自己破産の正しい関係
- 社長が自己破産に追い込まれる典型的なケース
- 借金問題を放置した場合に起こるリスク
- 返済が難しくなったときに検討できる現実的な選択肢
(私的整理、事業譲渡、会社分割、特別清算など)
について、企業再生・債務整理の実務経験を踏まえてわかりやすく解説します。
「会社の借金=自己破産しかない」と考えている経営者の方こそ、結論を出す前に、ぜひ最後までご覧ください。
知っているかどうかで、社長個人の人生も、会社の将来も大きく変わる可能性があります。
ジーケーパートナーズは、中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務と事業の両面から再生支援を行っています。
中小企業版ガイドラインを活用した事業譲渡や、債務超過案件を含むM&A支援にも対応している点が強みです。
「会社の借金で先が見えない」「自己破産以外の方法を知りたい」とお悩みの方も、ぜひお気軽にご相談ください。
- 会社の借金が返せないからといって社長が自己破産する必要はない
- 会社の借金と自己破産の関係とは
- 会社の借金で社長が自己破産するケース3つ
- ケース1:会社の借金を社長が連帯保証している場合
- ケース2:法人破産により個人へ返済義務が確定する場合
- ケース3:個人の返済能力そのものが不足している場合
- 会社の借金を放置すると生じる3つのリスク
- リスク1:社長個人への返済請求が一気に進む
- リスク2:事業や資産の選択肢が急速に失われる
- リスク3:M&Aや再生の検討が難しくなる
- 会社の借金が返せないときに検討できる選択肢
- 廃業や特別清算で段階的に整理する
- 私的整理や条件変更で返済を続ける
- M&Aを活用して、事業を引き継ぎながら借金問題を整理する
- 会社の借金で社長が自己破産を決める前に
会社の借金が返せないからといって社長が自己破産する必要はない
会社の借金が返済不能な状態に陥ったとしても、その時点で社長個人の自己破産が自動的に決まるわけではありません。
会社と社長は法律上は別人格であり、借金の責任も原則として切り分けて考える必要があります。
資金繰りが行き詰まった場合、まず検討すべきなのは、「社長個人がどうなるか」ではなく、「会社をどのように整理・再生するか」です。
実務上は、
- 法人破産
- 特別清算
- 私的整理
- 事業譲渡や会社分割による事業の承継
など、会社側で先に検討できる選択肢が複数存在します。
これらをどう選ぶかによって、社長個人の負担や将来は大きく変わります。
社長が最終的に自己破産に至るかどうかは、
- 金融機関からの借入をどこまで連帯保証しているか
- 個人資産でどの程度対応できるか
といった事情によって左右されます。
それにもかかわらず、「会社の借金が返せない=社長も自己破産するしかない」と早い段階で決めつけてしまうと、本来選択できたはずの回避策や再生の可能性を自ら閉ざしてしまうことになりかねません。
現状がどの段階にあるのかを見極めたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事|会社の借金で倒産するのはどんなとき?「潰れる借金」と「安全な借金」の違いを解説
会社の借金と自己破産の関係とは
自己破産は、社長など個人を対象とした債務整理手続きであり、会社の借金を整理する場合には、法人破産や特別清算といった法人向けの手続きが用いられます。
この点を整理すると、下記の通り、会社の借金が返済できなくなった場合、まず検討すべきなのは「法人としてどう対応するか」であり、社長個人の自己破産を直ちに前提とする必要はありません。
| 破産の種類 | 対象 | 内容 |
| 自己破産 | 自然人を対象とした破産手続き | 個人の財産と借金を精算し、支払い義務を整理する |
| 法人破産 | 株式会社や合同会社など法人を対象とした破産手続き | 会社の財産と負債を清算し、法人格を消滅させる |
ただし、社長が金融機関からの借入について連帯保証をしている場合には、法人破産や清算とは別に、社長個人に対して返済請求が行われることになります。
つまり、会社の借金が原因で社長が自己破産に至るかどうかは、「連帯保証の有無」や「保証額・個人資産の状況」によって左右されるというのが実務上の実態です。
そのため、連帯保証の有無や内容を正確に把握しないまま、「会社が苦しい=社長も自己破産するしかない」と判断してしまうと、本来回避できたはずの選択肢を見落とすおそれがあります。
会社の借金で社長が自己破産するケース3つ
会社の借金が返済できなくなったからといって、必ずしも社長が自己破産に至るわけではありません。
実務上、会社の借金が原因で社長個人の自己破産に至るケースは、ある程度パターンが限られています。
代表的なケースは、次の3つです。
- 会社の借金を社長が連帯保証している場合
- 法人破産後も、連帯保証債務を個人で返済できない場合
- 個人資産や任意整理では借金を整理できない場合
これらはいずれも「会社の問題が、そのまま社長個人の返済義務に転化してしまう状況」である点が共通しています。
以下では、それぞれのケースについて「なぜ自己破産に至りやすいのか」「どの段階で判断を誤ると選択肢が狭まるのか」といった視点から、詳しく解説していきます。
ケース1:会社の借金を社長が連帯保証している場合
会社の借金について社長が連帯保証をしている場合、社長個人が自己破産に至る可能性は、確かに高まります。
中小企業向け融資では、現在でも多くのケースで社長が個人保証を求められるのが一般的です。
法人が返済不能となり、法人破産や特別清算などの手続きに入ると、金融機関は、連帯保証人である社長個人に対して返済を求めます。
この請求は、会社の破産や清算の手続きとは別枠で進行します。
その結果、社長個人の資産や収入では連帯保証債務を返済しきれない場合、自己破産を検討せざるを得ない状況に追い込まれることがあります。
もっとも、連帯保証があるからといって、直ちに自己破産が不可避となるわけではありません。
保証の金額や資産状況、手続きを進めるタイミングによっては、他の整理方法や回避策を検討できる余地が残されている場合もあります。
ケース2:法人破産により個人へ返済義務が確定する場合
会社の借金が返済できなくなり、法人破産を行ったとしても、社長個人の借金問題が自動的に解決するわけではありません。
社長が会社の借入について連帯保証をしている場合、法人破産によって会社側の債務が整理された後も、残った返済義務は連帯保証人である社長個人に引き継がれます。
つまり、「会社が破産した=社長もすべて解決した」わけではなく、会社とは切り離された形で、社長個人が返済責任を負い続けるケースがあるということです。
その後、社長個人の預貯金や不動産、給与・事業収入などを充てても返済の見通しが立たない場合、債権者から差押えや強制執行などの法的措置を取られる可能性が高まります。
こうした事態が現実的になると、生活の維持や再起に大きな支障が生じるため、この段階でやむを得ず自己破産を選択する経営者も少なくありません。
ケース3:個人の返済能力そのものが不足している場合
法人の状況とは関係なく、社長個人が抱える借金について、返済能力そのものが不足している場合にも、自己破産に至るケースがあります。
社長個人の借金について、不動産や有価証券などの資産、退職金の見込み額を処分・充当しても、返済に充てきれない状況であれば、選択できる整理手段は限られてきます。
分割返済や返済条件の変更(リスケジュール)を申し入れたとしても、収入とのバランスが取れなければ、完済の見通しは立たず、結果として長期にわたる滞納が避けられません。
このような状態が続くと、延滞による督促や法的手続きが重なり、生活の維持や将来の事業再開にも深刻な支障が生じます。
その結果、社長個人の借金を整理する最終手段として、自己破産を選択せざるを得なくなるというのが、このケースの実態です。
会社の借金を放置すると生じる3つのリスク
会社の借金問題を先送りにしても、状況が自然に改善することはほとんどありません。
むしろ時間が経つほど、社長個人と会社の双方にとって、選択肢が狭まり、取り得る手段が限られていくのが実務上の実態です。
特に影響が大きいリスクとして、次の3点が挙げられます。
- 社長個人への返済請求が一気に進む
- 事業や資産に関する選択肢が急速に失われる
- M&Aや再生スキームの検討が難しくなる
これらはいずれも「もっと早く動いていれば回避できた可能性が高いリスク」という点が共通しています。
以下では、それぞれのリスクについて、なぜ放置が致命的になりやすいのかを解説します。
リスク1:社長個人への返済請求が一気に進む
会社の借金問題を放置した場合、社長が借入の連帯保証人となっているケースでは、社長個人への返済請求が一気に進むリスクがあります。
返済の遅れが続くと、金融機関は会社借入金の期限の利益を喪失させたうえで、連帯保証人である社長個人に対し、借金の一括返済を直接求めるのが一般的です。
その後、督促や一括返済の通知が届いても対応できない状態が続けば、差押えや強制執行といった法的措置へ移行する可能性が高まります。
こうした段階に入ると、状況を冷静に整理したり、私的整理や事業譲渡など他の選択肢を検討する時間的余裕が失われやすくなります。
結果として、十分な検討を行う前に、社長個人の自己破産を迫られる展開になりやすいという点が、このリスクの本質です。
リスク2:事業や資産の選択肢が急速に失われる
会社の借金問題を放置すると、事業や資産に関して本来取れたはずの選択肢が、短期間で失われていきます。
返済が滞った状態が続くと、金融機関や主要な取引先は、再生よりも資金回収を優先する姿勢を強め、分割返済や条件変更などの柔軟な交渉に応じにくくなるのが実務上の実態です。
たとえば、本来であれば売却によって資金化できた不動産や設備であっても、差押えや仮差押えが入ると、自由に処分することができなくなります。
また、売掛金についても回収に制限がかかり、手元資金の確保が一層難しくなることで、資金繰りはさらに悪化する悪循環に陥ります。
その結果、廃業や事業譲渡といった本来検討できたはずの整理方法を選べなくなり、破産手続きしか残らない状況に追い込まれるケースも少なくありません。
早い段階で対応していれば、残せたはずの資産や事業価値まで失ってしまう可能性があるという点は、特に注意が必要です。
リスク3:M&Aや再生の検討が難しくなる
会社の借金問題を放置した場合、M&Aや事業再生といった選択肢そのものが取りづらくなることがあります。
時間の経過とともに、返済遅延や資金繰り悪化が表面化し、会社の信用力や事業価値が低下していくため、活用できる対策の選択肢が急速に狭まっていくからです。
実務上、返済遅延が続いている会社に対して、買い手やスポンサーは慎重な姿勢を取らざるを得ません。
また、帳簿や契約関係が整理されていない状態では、財務・事業デューデリジェンスが進まず、交渉自体が立ち消えになるケースも多く見られます。
さらに、法人破産などの法的手続きが先行してしまうと、事業譲渡や会社分割といった再生スキームを組むことが難しくなります。
その結果、本来であればM&Aによって事業や雇用を残せたはずのケースでも、清算や破産を選ばざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
会社の借金問題は、放置するほど私的整理や再生型M&Aといった現実的な選択肢が失われていくため、再生や事業譲渡を少しでも視野に入れているのであれば、できるだけ早い段階で、再生実務に精通した専門家へ相談することが重要です。
会社の借金が返せないときに検討できる選択肢
会社の借金が返済困難な状況に陥った場合でも、必ずしも社長や会社がすぐに自己破産を選ぶ必要はありません。
状況に応じて、自己破産以外にも検討できる選択肢があります。
主な対応策としては、次の3つが挙げられます。
- 廃業や特別清算などにより、段階的に整理する
- 私的整理や返済条件の変更によって、返済を続ける
- M&Aを活用して、事業と負債を引き継ぐ(再生型M&A)
どの方法が適切かは、会社の財務状況、借入内容、事業の収益性、社長個人の保証状況などによって異なります。
以下では、それぞれの選択肢について、メリット・注意点を含めて解説します。
なお、自己破産やM&Aといった選択肢を検討する前提として、自社が本当に債務超過の状態にあるのかを正しく把握することが不可欠です。
「赤字」と「債務超過」は混同されがちですが、判断を誤ると、必要以上に厳しい決断をしてしまうおそれがあります。
債務超過の考え方や、赤字との違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事|債務超過と赤字の違いを図解で徹底解説!判断基準・実例・解消法5選
廃業や特別清算で段階的に整理する
廃業や特別清算を選択した場合、会社の状況を整理しながら、借金問題と向き合うことが可能です。
通常の法人破産と異なり、直ちにすべての事業活動を停止する必要がなく、一定の時間を確保しながら整理を進められる点が特徴です。
実務上は、在庫の処分や売掛金の回収を行いながら、金融機関や取引先などの関係者と調整し、段階的に会社を整理していく流れとなります。
特別清算は、株主総会の決議を経たうえで裁判所に申し立てを行い、債権者の合意を前提として進める法的手続きです。
金融機関との協議内容によっては、債務の一部免除や返済条件の緩和が認められる場合もあります。
こうした調整が成立すれば、結果として、社長個人が負っている連帯保証の負担を抑えられる余地が生まれます。
すぐに破産手続きへ移行するのではなく、時間を確保しながら整理を進めたい場合には、有力な選択肢の一つといえるでしょう。
私的整理や条件変更で返済を続ける
借金の返済が厳しい状況にあっても、直ちに廃業や清算を選ぶ必要はありません。
事業の継続に一定の見通しが立つ場合には、私的整理や返済条件の変更(リスケジュール)を検討する余地があります。
私的整理は、裁判所を介さず、金融機関と直接交渉を行い、返済期間の延長や一時的な返済猶予などを通じて、資金繰りの改善を図る手法です。
事業の収益が回復基調にあり、将来的に返済原資を確保できる見込みがあれば、返済を続けながら、会社の立て直しを目指すことが可能です。
また、法的整理と異なり、社長個人の信用情報への影響を抑えやすい点も、私的整理の特徴といえます。
もっとも、将来の返済計画に現実性がなければ、私的整理は成立しません。
無理な延命は、結果として状況を悪化させるおそれもあります。
そのため、私的整理が本当に適しているのか、あるいは他の整理方法を選ぶべきかについては、早い段階で、再生実務に精通した専門家の判断を仰ぐことが重要です。
M&Aを活用して、事業を引き継ぎながら借金問題を整理する
M&Aを活用することで、事業を第三者へ引き継ぎながら、借金問題の整理を進めることが可能な場合があります。
収益性や取引先との関係、人材などに価値がある事業であれば、債務超過の状態であっても、引き受け手(買い手・スポンサー)が見つかるケースは少なくありません。
再生型M&Aでは、株式譲渡ではなく、事業譲渡や会社分割によって事業のみを新会社へ移し、旧会社は清算や特別清算へ進む形が一般的です。
この過程で、金融機関と事前に協議し、合意を得ることができれば、借金の圧縮や整理(債務カット)を前提としたスキームを組むことも可能になります。
こうした再生スキームが成立すれば、結果として、社長個人の連帯保証負担が軽減され、自己破産を回避できるケースもあります。
債務超過の企業であってもM&Aを検討できる点は、私的整理や事業再生に精通した専門家が関与するM&Aならではの特徴といえるでしょう。
企業のM&Aや再生型M&Aに関する詳しい解説は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事|M&Aの相談先・窓口・センターを徹底比較!無料相談の活用方法も解説
会社の借金で社長が自己破産を決める前に
会社の借金を理由に、社長が自己破産を選ぶ判断は、あくまで最終手段として慎重に考える必要があります。
会社の借金問題は、事業の収益性や資産の内容、借入の構造によっては、自己破産以外の整理方法が残っているケースも少なくありません。
「会社の借金=社長の自己破産」と即断するのではなく、まずは、
- 事業に再生や承継の余地が残っていないか
- 借金と事業を分離できる可能性がないか
といった視点で、冷静に状況を整理することが重要です。
連帯保証の有無や内容、社長個人の資産・収入の状況によっては、廃業や特別清算、私的整理、再生型M&Aなどを組み合わせることで、個人の負担を抑えながら問題を整理できる可能性もあります。
自己破産は、一度選択すると後戻りができない決断です。
だからこそ、決断を下す前に、再生実務に精通した専門家とともに、取り得る選択肢を一通り検討しておくことが重要といえるでしょう。
会社の借金を理由に「自己破産しかないかもしれない」と考えはじめた段階こそ、まだ選択肢が残されている重要なタイミングです。
判断が遅れるほど、資産の処分余地や金融機関との交渉余地は失われ、結果として、取り得る手段が自己破産に限られていくケースを、私たちは数多く見てきました。
ジーケーパートナーズは、中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務・事業デューデリジェンス、再生計画の策定支援に数多く携わってきました。
また、私的整理ガイドラインを活用したスポンサーへの事業譲渡や会社分割、金融機関の債務カットを前提とした特別清算まで、再生スキームを一貫して支援しています。
一般的なM&A仲介会社では対応が難しい、債務超過や再生スキームを伴う案件においても、企業再生コンサルティングの知見を生かした実務的な支援ができる点が、当社の強みです。
自己破産という決断を下す前に、事業や雇用を残す可能性が本当にないのか、社長個人の負担を抑える道が残っていないのか。
状況整理からはじめるためにも、ぜひ一度ご相談ください。



