
経営危機に直面し、「資金繰りがもたない」「返済が重く、経営に集中できない」と悩む中小企業の再生方法のひとつが「事業再生」です。
事業再生では、金融機関による債務免除(債務カット)やリスケジュール(返済条件変更)等を通じて財務体質を改善し、会社の再スタートを図ります。
しかし、多くの経営者が見落としているのが、「再生スキームに伴う税務リスク」です。
たとえば債務免除益が発生した場合、そのままでは多額の法人税が生じ、せっかく再生しても再び資金繰りが悪化するケースがあります。
そのため、事業再生では税務上の取扱いを正しく設計することが不可欠です。
本記事では、
- 事業再生に潜む代表的な税務リスク
- 税負担を抑えて再生を成功させるための特例制度(企業再生税制)の活用法
- 債務超過企業で増えている、M&A×再生スキームを組み合わせた高度な税務戦略
について、企業再生の実務に精通した専門家の視点から分かりやすく解説します。
債務超過案件の税務戦略は複雑です。
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- 事業再生における税務上のリスクとは?
- 債務免除益による「債務免除益課税」のリスク
- 繰越欠損金の「利用制限・失効」のリスク
- ①繰越期限切れのリスク
- ②スポンサー支援・M&Aによる利用制限のリスク
- 再生スキームの選択による「想定外の課税」のリスク
- ①適格要件を満たさない「非適格組織再編」による含み益課税
- ②事業譲渡では一部資産に「消費税」が課税される
- 事業再生の税務リスクを回避する特例
- 特例:債務免除益を打ち消す「資産の評価損計上」
- 事業再生の税務リスクを軽減できるM&Aのメリット
- 繰越欠損金を活用し、債務免除益課税を大幅に圧縮できる
- スポンサー支援により無理な精算による課税リスクを回避できる
- 組織再編を活用し、含み益課税を繰り延べられる
- まとめ
事業再生における税務上のリスクとは?
事業再生のプロセスでは、金融機関との交渉やスキーム設計に意識が向きがちですが、実は税法上の規定によって思わぬ課税が発生するリスクが潜んでいます。
特に、債務超過企業が債務免除や資本増強、事業譲渡などを行う際には、税務上の取扱いを誤ると、「再生直後に多額の税金が発生し、資金繰りが再悪化する」という致命的な事態に陥るケースも少なくありません。
事業再生で注意すべき税務リスクは、主に以下の3つの領域に集約されます。
これらは再生計画の初期段階で必ず対策を講じるべき重要ポイントです。
債務免除益による「債務免除益課税」のリスク
事業再生における最大の税務リスクは、「債務免除益」が法人税の課税対象となる点です。
金融機関や取引先から債務の一部または全部が免除されると、会計上はその金額が「債務免除益」として利益に計上されます。
しかしこれは、実際に現金が増えるわけではありません。
帳簿上の利益が増えるだけで、手元資金は1円も増えないのです。
それにもかかわらず、税法上は「利益が増えた」と判断されるため「現金がないのに法人税の納税義務だけが発生する」という極めて厳しい状況に陥る可能性があります。
本来、事業再生は資金繰りを改善し再スタートを切るための取り組みですが、この債務免除益への課税が適切にコントロールされていないと、再生直後に多額の納税負担が発生し、資金繰りが再び行き詰まるという本末転倒な結果を招きかねません。
このリスクを避けるには、適用可能な特例(企業再生税制等)を正しく理解し、再生スキームの設計段階から税務面を織り込みながら進めることが不可欠です。
債務免除益の仕組みや対策についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事|債務免除益とは?中小企業の税務実務のポイントを徹底解説
繰越欠損金の「利用制限・失効」のリスク
過去の赤字(繰越欠損金)は、将来の利益と相殺できる非常に重要な“税務上の資産”です。
しかし、事業再生の局面では、この欠損金が思わぬ理由で使えなくなるリスクが存在します。
主な懸念点は次のとおりです。
①繰越期限切れのリスク
繰越欠損金には原則10年間の利用期限があります。
再生計画の長期化や業績回復の遅れにより、欠損金の期限が切れてしまうと、将来利益と相殺できなくなります。
②スポンサー支援・M&Aによる利用制限のリスク
スポンサー企業からの出資やM&Aを伴う再生では、特定支配関係などの税法上の要件に抵触すると、既存の欠損金の利用が制限される場合があります。
特に、所有構造が大きく変わる再生型M&Aでは、欠損金を温存するためのスキーム設計が必須です。
繰越欠損金は、債務免除益を相殺するための重要なツールです。
これが使えなくなると、債務免除益に対する課税がそのまま発生し、再生後の資金繰りが悪化する恐れがあります。
そのため、再生計画を立てる際は、欠損金が失われないかどうかを事前に税務面から徹底検証することが不可欠です。
M&Aの相談についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事|M&Aの相談先・窓口・センターを徹底比較!無料相談の活用方法も解説
再生スキームの選択による「想定外の課税」のリスク
事業再生の場面では、採算の合わない事業を切り離したり、事業の一部を売却したりするなど、組織再編の実行が不可避となるケースが多く見られます。
しかし、このスキーム選択を誤ると、再生後の体力を奪う巨額の税負担が発生する可能性があります。
特に注意すべき課税リスクは次のとおりです。
①適格要件を満たさない「非適格組織再編」による含み益課税
合併・会社分割・事業譲渡などの組織再編で、税法上の適格要件を満たさない場合、譲渡した資産に含まれる「含み益」が時価課税されます。
債務超過企業であっても、土地・建物・株式などに含み益がある場合は、多額の法人税等が発生し、再生計画が破綻するリスクがあります。
②事業譲渡では一部資産に「消費税」が課税される
会社分割や株式譲渡とは異なり、事業譲渡では資産ごとに課税関係が発生します。
特に、棚卸資産・車両・機械設備・賃貸借契約の敷金など、消費税の課税対象となる資産を譲渡すると、相応の消費税負担が生じます。
再生企業にとっては、資金繰りを直撃する大きなリスクです。
これらのリスクを避けるためには、下記対応が必須となります。
- 適格要件を満たす組織再編スキームの設計
- 再生スキーム(事業譲渡・会社分割・M&A)との整合性確保
- 税務・法務・金融機関対応を含めた総合的なストラクチャリング
特に事業再生では、単なる「事業の売却」ではなく、再生スキーム×組織再編×税務を一体で設計できる専門家との連携が極めて重要です。
事業再生の税務リスクを回避する特例
前述のとおり、事業再生の現場では、債務免除益への課税や組織再編に伴う含み益課税など、企業の再スタートを阻む重大な税務リスクが存在します。
これらのリスクを適切にコントロールし、再生企業の財務負担を軽減するために、税法には「企業再生税制」という特例制度が設けられています。
これらの特例を活用することで、主に次のような効果が期待できます。
- 債務免除益への課税を軽減できる
- 組織再編に伴う課税を抑え、再生スキームを円滑に実行できる
- 再生後の資金繰りを安定させ、事業再建に専念できる環境を整えられる
特に、債務免除益が数千万円から数億円規模に及ぶことも珍しくない再生局面では、
これらの特例を適切に活用できるかどうかが、再生の成否を大きく左右します。
以下では、代表的な特例について解説します。
特例:債務免除益を打ち消す「資産の評価損計上」
債務免除により多額の「債務免除益」が発生すると、そのままでは法人税の課税対象となり、再生企業にとって大きな負担となります。
この負担を抑える有効な手段が、資産の評価損を損金算入し、債務免除益と相殺できる特例です。
通常、事業用資産の評価損は原則として損金に算入できません。
しかし、一定の再生計画に基づく場合には、評価損を損金として計上し、債務免除益と相殺することが認められます。
この特例の効果は、
- 計上した評価損を債務免除益と相殺できる
- 課税所得をゼロまたは大幅に圧縮できる
- 債務免除後の納税負担を軽減し、再生後の資金繰りを安定させられる
債務免除益が大きいケースほど、この効果は再生計画の実行可能性に直結します。
この特例を利用するには、単なる私的な合意では足りず、次のような公的関与のある再生計画であることが求められます。
- 特定事業再生計画(中小企業活性化協議会など外部専門家が関与する計画)
- 民事再生法などの法的整理に基づく再生計画
- 税務上認められる一定の私的整理スキーム
つまり、単に自主的に債務免除を受けただけでは特例は適用されません。
正式な再生スキームとして設計されていることが前提となります。
事業再生の税務リスクを軽減できるM&Aのメリット
M&Aは、事業再生における税務リスクを大幅に軽減し、再生計画の実現可能性を高めるための高度な税務戦略として非常に有効です。
ここでは、再生型M&Aが持つ主なメリットを分かりやすく解説します。
繰越欠損金を活用し、債務免除益課税を大幅に圧縮できる
M&Aのスキームを税務上の適格要件に合わせて設計すれば、繰越欠損金と債務免除益を最大限に相殺することが可能になります。
再生型M&Aでは、スポンサー企業からの出資に加えて、合併や会社分割などを組み合わせるケースが一般的です。
これらのスキームを適格要件に適合させることで、繰越欠損金の利用制限を回避しやすくなり、より効果的に税負担を抑えることができます。
その結果、M&Aを活用した再生では、税負担を軽減し、手元資金を事業再生に集中させることが可能になります。
M&Aの仲介会社の選び方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事|M&A仲介会社の選び方!FAとの違いやトラブルの回避方法を徹底解説
スポンサー支援により無理な精算による課税リスクを回避できる
スポンサー支援型の再生は、無理な資産売却によって発生する想定外の課税リスクを避けられる有効な選択肢です。
スポンサー(買い手企業)が資金支援や再生ノウハウを提供することで、計画的かつ安定した事業再生を進めることができます。
一方、資産を急いで売却して現金化する「清算型」の再生では、資産に含み益がある場合、その含み益に対して課税が生じるため、思わぬ税負担が発生し、かえって資金繰りを悪化させる可能性があります。
これに対し、M&Aを活用したスポンサー支援型の再生であれば、
- 金融機関との債務調整を計画的に進められる
- 不要事業・不採算部門の整理をスムーズに実行できる
- 資産売却による課税リスクを最小限に抑えられる
といったメリットがあり、事業再生の実効性を高める有力な手段となります。
M&A売却についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事|M&Aにおける売却の価格目安は?計算方法や税金についても解説
組織再編を活用し、含み益課税を繰り延べられる
組織再編を伴うM&Aでは、税務上の「適格要件」を満たして実行することが極めて重要です。
事業譲渡・会社分割・合併などの組織再編は、適格要件を満たさない場合、移転する資産に含まれる含み益が時価で課税される可能性があります。
一方、適格要件を満たして再編を行えば、下記メリットが得られます。
- 資産移転時の含み益課税を回避できる
- 不採算事業・不要資産の切り離しを税負担なく実行できる
- 事業統合や再編をスピーディかつ計画的に進められる
つまり、適格要件を踏まえた組織再編型M&Aの実行は、課税リスクを抑えながら再生のスピードと確実性を高める最も効果的な戦略といえるでしょう。
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まとめ
事業再生を成功させるためには、税務リスクをどれだけ適切に管理できるかが大きなカギとなります。
債務免除益の課税、組織再編の含み益課税、欠損金の利用制限など、再生の現場には多くの税務リスクが潜んでいます。
これらのリスクを回避するための仕組みとして「企業再生税制」が設けられていますが、この特例は決して容易に適用できるものではありません。
厳格な要件を満たすためには、再生計画の初期段階から高度で複雑なスキームを慎重に設計する必要があり、専門的な判断が欠かせません。
特に、M&Aを組み合わせた再生では、
- 繰越欠損金を最大限活用して税負担を抑える
- 組織再編を適格要件に適合させ、含み益課税を回避する
- スポンサー支援を取り込み、安定した再建につなげる
といった点を踏まえ、高度な税務知識と再生スキームの設計力が求められます。
そのため、確実な事業再生を実現するには、早い段階から企業再生に精通した税理士やM&Aアドバイザリーと連携し、税務戦略と一体化した再生計画を策定することが不可欠です。
記事で解説した複雑な再生税務は、専門家への依頼が不可欠です。
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繰越欠損金や純資産のマイナスがどのように判定されるのか、貸借対照表の数字から読み解く方法を知りたい方は、以下の記事も併せて参照ください。
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