
「赤字が続いているのに、税金の納付書が届いた……」
売上の伸び悩みや原材料価格の高騰、人件費の上昇などにより、利益が出ない状況が続く中小企業は少なくありません。
さらに、金融機関への借入返済や資金繰りに追われる中で、
「赤字なのに、なぜ税金を払わなければならないのか」
「法人税はゼロのはずなのに、納税額が発生しているのはなぜか」
「この赤字を将来の節税に活用できないのか」
と疑問を抱く経営者も多いのではないでしょうか。
実際、赤字決算であっても支払いが必要な税金は存在します。
そのため、「赤字だから税金はかからない」と考えていると、想定外の納税負担によって資金繰りがさらに悪化する可能性があります。
一方で、赤字には税負担を軽減できる制度もあります。
繰越欠損金を活用すれば将来の法人税を減らせる可能性があり、一定の条件を満たせば過去に納付した法人税の還付を受けられるケースもあります。
私たちは企業再生支援の現場で、借入金の返済負担や債務超過に悩む中小企業の財務改善を数多く支援してきました。
その中でも、「赤字なのに税金の支払いが発生し、資金繰りがさらに苦しくなった」という相談は少なくありません。
本記事では、
- 赤字決算でも発生する税金の種類
- 赤字で支払いが不要になる税金
- 繰越欠損金による節税の仕組み
- 法人税の繰戻し還付制度
- 赤字が続く企業が見直すべき資金繰りと経営上のポイント
について、中小企業経営者向けにわかりやすく解説します。
読み終える頃には、「赤字なのに税金が発生する理由」が理解できるだけでなく、自社が取るべき対応策や今後の資金繰り改善のヒントも見えてくるはずです。
赤字決算そのものは珍しいことではありません。
しかし、赤字が長期間続いている場合や、借入金の返済負担によって資金繰りが厳しくなっている場合は、税金対策だけでは根本的な解決にならないことがあります。
ジーケーパートナーズは、企業再生・財務改善・再生型M&Aを専門とするコンサルティング会社です。
中小企業活性化協議会の外部専門家として、財務デューデリジェンスや再生計画策定支援を行うほか、私的整理ガイドラインを活用した事業譲渡や会社分割など、多様な再生スキームの支援実績があります。
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会社が赤字になると税金はどうなるのか
「赤字になったから、今期は税金がかからない」と考える経営者は少なくありません。
しかし、法人にかかる税金のすべてが、利益に連動しているわけではありません。
法人が納める主な税金には、次のようなものがあります。
- 法人税 :会社の所得に対して課される国税
- 法人住民税:都道府県・市区町村に納める地方税。法人税額に応じて課される「法人税割」と、利益の有無にかかわらず課される「均等割」がある
- 法人事業税:事業活動に対して課される都道府県税。中小企業では主に所得に応じて課税される
- 消費税 :課税売上に対して発生する税金。課税事業者であれば、赤字でも納付が必要になる場合がある
このように、赤字決算で負担が軽くなる税金がある一方、赤字でも納付義務が残る税金もあります。
そのため、赤字だからといって納税資金を見込まずにいると、決算後に想定外の資金負担が発生する可能性があります。
特に借入金の返済が重い会社では、税金の支払いが資金繰りをさらに圧迫することもあるため、どの税金が発生するのかを早めに確認しておくことが重要です。
会社の赤字決算で免除される税金
赤字決算になると、所得をベースに計算される税金は免除されます。
免除される税目は以下のとおりです。
| 税目 | 免除の理由 |
| 法人税 | 課税所得がゼロのため |
| 地方法人税 | 法人税額に連動するため |
| 法人事業税(所得割) | 課税所得がゼロのため |
| 特別法人事業税 | 法人事業税額に連動するため |
ただし、法人住民税は一部免除にとどまり、均等割については赤字でも納付義務が残ります。詳細は「会社が赤字でも納税義務が残る税金」で解説します。
免除にはそれぞれ条件があり、会社の規模や税務調整の結果によって異なるため、「赤字なら自動的に免除される」と思い込まず、各税目の仕組みを正確に把握しておきましょう。
会社が赤字でも納税義務が残る税金
赤字決算であっても、利益の有無に関係なく納付が必要な税金があります。
主な税目は以下のとおりです。
| 税目 | 課税のタイミング |
| 源泉所得税 | 給与・役員報酬を支払うたびに発生 |
| 住民税(特別徴収) | 従業員の給与から毎月徴収・納付 |
| 印紙税 | 契約書・領収書などの作成時に発生 |
| 登録免許税 | 不動産登記・商業登記の手続き時に発生 |
| 固定資産税 | 毎年1月1日時点で資産を保有していれば発生 |
| 自動車税 | 毎年4月1日時点で車両を保有していれば発生 |
これらの税金は、赤字によって免除されるものではありません。
特に、法人住民税の均等割や消費税は、業績が厳しい企業でも負担が生じるため注意が必要です。
赤字が続いている企業では、借入金の返済や運転資金の確保に加え、こうした税負担も見据えて資金繰りを計画することが重要です。
会社の赤字決算時に活用できる2つの制度
赤字決算となった場合でも、その損失を将来や過去の法人税計算に活用できる制度があります。
代表的な制度は次の2つです。
- 繰越欠損金
- 欠損金の繰戻し還付
いずれも青色申告法人が対象となる制度で、適用には一定の要件があります。
これらの制度を活用することで、将来の税負担を軽減したり、過去に納付した法人税の還付を受けたりできる可能性があります。
それぞれの仕組みについて詳しく見ていきましょう。
繰越欠損金(最長10年の損失繰越)
繰越欠損金とは、赤字決算で生じた欠損金を翌期以降に繰り越し、将来の黒字と相殺できる制度です。
青色申告法人の場合、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に生じた欠損金は、最長10年間繰り越すことができます。
例えば、今期に500万円の欠損金が発生し、翌期に500万円の課税所得が生じた場合、欠損金と相殺することで課税所得をゼロにできる可能性があります。
その結果、将来の法人税負担を軽減できるため、赤字決算となった企業にとって重要な制度の一つです。
なお、欠損金の控除限度額は法人の規模によって異なります。
| 法人の区分 | 控除上限 |
| 資本金1億円以下の中小企業 | 所得金額の100%(全額控除可) |
| 資本金1億円超の大法人 | 所得金額の50%まで |
繰越欠損金を利用するためには、欠損金が発生した事業年度に青色申告書を提出していることなど一定の要件があります。
また、繰越期間を過ぎると欠損金は利用できなくなるため、発生年度や残高を適切に管理しておくことが重要です。
出典:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
欠損金の繰り戻し還付
欠損金の繰戻し還付とは、当期に生じた欠損金を前期の所得と相殺し、前期に納付した法人税の全部または一部の還付を受けられる制度です。
前期は黒字だったものの、当期に赤字へ転落した場合に活用できる可能性があります。
還付を受けることで手元資金を確保できるため、資金繰りの改善につながる場合があります。
適用を受けるためには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 青色申告法人であること
- 原則として資本金1億円以下の中小企業者等であること
- 前期・当期ともに確定申告書を期限内に提出していること
ただし、すべての企業が利用できるわけではなく、業種や法人区分によって適用対象外となるケースもあります。
また、還付申告を行った場合には、申告内容について税務署から確認や資料提出を求められることがあります。
そのため、欠損金の計算根拠や帳簿書類を適切に整備しておくことが重要です。
会社が赤字でも申告は必要か
赤字決算であっても、法人税等の確定申告は必ず行わなければなりません。
申告期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。
たとえ納付すべき法人税が発生しなくても、申告を行わなければ繰越欠損金の適用を受けられなくなる可能性があります。
また、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される場合もあります。
特に、将来の黒字と相殺できる繰越欠損金は、赤字企業にとって重要な制度です。
そのため、「税金が発生しないから申告しなくてもよい」と考えるのではなく、期限内に適切な申告を行うことが重要です。
会社の赤字が続く場合に見直すべき経営上の注意点
単年度の赤字であれば、大きな問題にならないケースもあります。
しかし、赤字が数年にわたって続く場合は、税務上の問題だけでなく、資金繰りや財務内容、金融機関との関係にも影響が及びます。
例えば、
- 借入金の返済負担によって手元資金が不足する
- 金融機関からの評価が低下し、追加融資が受けにくくなる
- 債務超過が拡大する
- 将来的な事業承継やM&Aの選択肢が限られる
といった事態につながる可能性があります。
また、繰越欠損金があっても、黒字化の見通しが立たなければ十分に活用できないケースも少なくありません。
そのため、赤字が継続している場合は、税金対策だけでなく、収益改善や財務改善を含めた経営全体の見直しを早めに検討することが重要です。
税務調査リスクは赤字でも存在する
赤字決算であっても、税務調査の対象から外れるわけではありません。
税務署は利益の有無だけでなく、申告内容に誤りがないかという観点から調査を行います。
そのため、売上の計上漏れや経費の計上内容などについて確認を受けることがあります。
また、欠損金の繰戻し還付など還付申告を行った場合には、申告内容の確認のために資料の提出や説明を求められるケースもあります。
適切な申告を行っている限り過度に心配する必要はありませんが、日頃から帳簿や証憑書類を整理し、取引の根拠を説明できる状態にしておくことが重要です。
金融機関の評価・融資審査への影響
赤字決算が一時的なものであれば大きな問題にならないこともありますが、赤字が複数期にわたって続く場合は注意が必要です。
金融機関は決算書や資金繰りの状況をもとに返済能力を判断するため、継続的な赤字は企業の信用力低下につながる可能性があります。
その結果、
- 新規融資を受けにくくなる
- 融資条件の見直しを求められる
- 経営改善計画の提出を求められる
といった影響が生じることがあります。
特に借入金の返済負担が大きい企業では、資金繰りが悪化してから対応を検討するのではなく、早い段階で財務状況を整理し、金融機関と情報共有を行うことが重要です。
繰越欠損金の繰越期間切れに注意
繰越欠損金は将来の黒字と相殺できる有効な制度ですが、永久に利用できるわけではありません。
現在の制度では、一定の要件のもとで最長10年間の繰越が認められていますが、その期間内に十分な利益が出なければ欠損金は失効します。
特に赤字が長期間続いている企業では、欠損金を保有していても黒字化が進まず、結果として十分に活用できないケースも少なくありません。
そのため、欠損金の残高や期限を管理するだけでなく、収益改善や財務改善によって黒字化を目指すことが重要です。
期限管理については、顧問税理士と連携しながら定期的に確認しておくとよいでしょう。
会社の赤字が深刻なら早期に専門家へ相談を
赤字が続いているにもかかわらず、「もう少し様子を見よう」と対応を先送りしてしまう企業は少なくありません。
しかし、時間の経過とともに手元資金は減少し、金融機関との交渉余地も徐々に狭まっていきます。
実際には、状況が悪化してから相談を受けるケースよりも、早い段階で相談を受けたケースの方が取り得る選択肢は多くなります。
経営者は追い詰められるほど視野が狭くなり、
「何とか事業を続けるしかない」
「もう廃業するしかない」
という極端な二択で考えてしまいがちです。
しかし実際には、
- 収益改善や財務改善による事業再生
- 事業譲渡や再生型M&Aによる事業承継
- 撤退や清算による損失拡大の防止
など、状況に応じた複数の選択肢があります。
重要なのは、最初から結論を決めることではなく、自社の財務状況や将来性を客観的に整理し、現実的な選択肢を把握することです。
赤字が続いている場合は、問題が深刻化する前に専門家へ相談し、今後の方向性を検討することをおすすめします。
「事業の立て直しを優先すべきか」
「M&Aによって事業を引き継げる可能性はあるか」
「撤退を検討すべき段階なのか」
赤字が続く企業では、このような判断に悩む経営者が少なくありません。
重要なのは、結論を急ぐことではなく、自社の財務状況や借入状況を客観的に整理し、現実的な選択肢を把握することです。
ジーケーパートナーズでは、企業再生・財務改善・再生型M&Aを専門とするコンサルティング会社です。
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「まだ相談する段階ではないかもしれない」と感じている場合でも問題ありません。
状況が深刻化する前に現状を整理することが、将来の選択肢を広げる第一歩です。
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