
「融資の返済が困難になってしまった…信用保証協会の保証がついているが、債務を免除してもらうことはできるのだろうか?」
このようにお悩みの経営者の方も多いのではないでしょうか。
代位弁済を受けたあとは、金融機関との関係も断たれ、「もう打つ手がない」「事業を諦めるしかない」と感じてしまい、絶望的な状況に陥る経営者の方も少なくありません。
しかし、信用保証協会の債務免除は決して不可能ではありません。
実際に免除が認められた事例も存在し、一定の条件を満たせば実現できる可能性があります。
ただし、必ずしも全てのケースで認められるわけではなく、事業の再生可能性や誠実な対応姿勢が大きなポイントとなります。
本記事では、
・信用保証協会の債務免除が適用される具体的なケース
・手続きの流れと注意点
・債務免除以外の選択肢(私的整理ガイドラインを用いた債務整理や、M&Aを絡めた事業承継・再生スキームなど)
について、わかりやすく解説します。
返済が難しくても、必ずしも「倒産しか道がない」というわけではありません。
信用保証協会との交渉や、再生スキームを活用した解決策を取ることで、事業を守りながら借入問題を整理する道が開けることもあります。
借入金に悩む経営者の方にとって、少しでも希望が見える内容になれば幸いです。
債務超過に陥った企業であっても、必ずしも事業を諦める必要はありません。
ジーケーパートナーズは、中小企業活性化協議会の外部専門家として、これまで数多くの中小企業の再生支援に携わってきました。
- 信用保証協会との交渉や債務整理
- 私的整理ガイドラインを活用した再生スキーム
- 債務超過案件に対応したM&Aによる事業承継・再生
といった多様な選択肢から、貴社に最も適した解決策をご提案いたします。
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債務超過については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてお読みください。
関連記事|債務超過になるとどうなる?倒産・株価の影響も徹底解説
そもそも信用保証協会とは?
まず「信用保証協会」の基本的な仕組みを知ることが重要です。
信用保証協会は信用保証協会法に基づいて設立された公的機関で、全国に51協会(47都道府県と、横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市の4市)が設置されています。
中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に、公的な保証人の役割を果たすのが信用保証協会です。
信用保証協会の主な役割は下記の通りです。
- 信用補完機能
→中小企業の信用力を補い、金融機関からの融資を受けやすくする
- 代位弁済機能
→借入企業が返済不能になった場合、信用保証協会が代わって金融機関に返済を行う
- 経営支援機能
→相談・経営診断・情報提供など、中小企業の経営改善を支援するサービスを提供
この信用保証制度は、
- 中小企業者(資金を必要とする企業)
- 金融機関(融資を行う銀行など)
- 信用保証協会(保証を引き受ける公的機関)
という三者の関係で成立しています。
経営者にとって重要なのは、信用保証協会が「代位弁済」した後の取り扱いです。
信用保証協会における債務免除の基本
信用保証協会の債務免除は本当に不可能なのか?
「信用保証協会の債務免除なんて、絶対に無理だろう…」
多くの経営者がそう考えがちですが、実際には一定の条件を満たせば債務免除を受けられる可能性があります。
ここでは、なぜ債務免除が難しいとされるのか、その背景と基本的な考え方を解説します。
信用保証協会は、信用保証協会法に基づく公的機関であり、国や地方自治体の出資・負担金、さらには保証料(中小企業が保証を受ける際に支払う手数料)を財源としています。
このため、民間金融機関と比べて、債務免除に対して極めて慎重であり、厳格な基準が設けられています。
「国や自治体のお金(税金等)を原資にしている以上、安易な債務免除は認められない」という仕組みになっているのです。
とはいえ、実際には信用保証協会でも、事業再生の可能性がある場合や、誠実に対応してきた場合には、債務免除が認められた事例もあります。
また、日本政策金融公庫などの政府系金融機関においても、同様に債務免除が行われたケースは存在します。
ただし、実例が多くはないため「債務免除は不可能」という誤った認識が広まりやすいのが現状です。
信用保証協会の債務免除が困難とされる理由
信用保証協会が債務免除を認めるかどうかは、非常に厳格な基準に基づいて判断されます。
主なポイントは以下の通りです。
- 債務者の支払能力の完全な喪失
→一時的に資金繰りが苦しいだけではなく、将来にわたって返済できる見込みがないと判断される場合
- 事業継続の見込みがないこと
→事業を再生・継続できる可能性がない、または既に廃業・清算を余儀なくされている場合
- 他の債権者との公平性の確保
→信用保証協会だけが特別扱いされるのではなく、金融機関や取引先など他の債権者とのバランスを保つ必要がある
- 社会的影響の最小化
→債務免除が認められることで、地域経済や取引先への悪影響を最小限に抑えられるかどうか
これらの基準は、信用保証協会が国や自治体の資金(税金や保証料)を原資とする公的機関であることを反映しています。
つまり、単に「支払いが困難」という状況では足りず、「将来にわたり返済能力が完全に失われている」ことが求められるのです。
そのため、債務免除は誰でも簡単に受けられるものではありません。
しかし逆に言えば、これらの基準を満たすケースでは、実際に債務免除が認められた事例が存在するということです。
債務免除が認められる基本的な考え方
信用保証協会が債務免除を検討する際の基本的な判断基準は以下の通りです。
- 債務者の支払能力の完全な喪失
- 事業継続の見込みがないこと
- 他の債権者との公平性の確保
- 社会的影響の最小化
これらの基準は、信用保証協会が税金を原資として運営される公的機関である特性を反映しています。
単に「支払いが困難」という状況ではなく、将来にわたって支払能力が完全に失われていることが求められます。
信用保証協会の債務免除が適用される具体的なケース
信用保証協会は、税金や自治体の負担金を原資とする公的機関であるため、債務免除については民間金融機関以上に厳格な基準が設けられています。
しかし、だからといって債務免除が「絶対に不可能」というわけではありません。
実際には、以下のような条件を満たす場合に、債務免除が認められたケースがあります。
- 代位弁済後の求償権免除
- 特別な事情による免除
代位弁済後の求償権免除
信用保証協会が金融機関に代位弁済を行った場合、債務者企業は金融機関への返済義務を免れる代わりに、信用保証協会に対して「求償債務」を負うことになります。
この求償債務は多くの経営者にとって大きな負担となりますが、一定の条件を満たせば債務免除が検討される可能性があります。
➀事業継続が不可能な状況
- 経営者が重篤な疾病にかかり、事業の継続が困難になった場合
- 経営者の死亡により事業承継が不可能な場合
- 自然災害により事業基盤を完全に失った場合
- 市場環境の激変でビジネスモデルそのものが成立しなくなった場合
②支払能力の完全な喪失
- 個人資産を含めた全財産を処分しても債務が残る場合
- 今後の収入獲得能力が見込めず、将来にわたり返済が不可能な場合
- 他の債務整理手続き(私的整理や破産手続き等)との一体的処理が必要な場合
信用保証協会が債務免除を判断する際の大前提は、「求償権元本を放棄しなければ、ほぼ確実に経営が破綻すること」です。
したがって、単に一時的な経営難や資金繰りの悪化といった状況では対象となりません。
さらに「遊休資産の売却」「コスト削減」「経営改善努力」など、債務者側が誠実に自助努力を尽くしていることも必須要件となります。
特別な事情による免除
信用保証協会は、通常の厳格な基準だけでなく、個別の事案において特別な事情がある場合には債務免除を検討することもあります。
考慮される主な要素は以下の通りです。
- 社会的影響の大きさ
→その企業の倒産が地域経済や雇用に重大な影響を及ぼす場合
- 政策的配慮
→災害復興支援や特定業種の再建など、国の政策目的に合致する場合
- 債権回収コストとの比較
→債権回収に要するコストが、残存債務額を上回ると見込まれる場合
このような「特別事情による債務免除」は、通常の基準ではカバーできない社会的・経済的な要因を考慮した判断となります。
ただし、実際にこのような免除が認められるケースは極めて稀であり、十分な根拠や客観的な説明資料が不可欠です。
そのため、経営者が自ら判断するのではなく、専門家のサポートを受けて信用保証協会と交渉することが極めて重要です。
債務免除の手続きと必要な条件
信用保証協会に債務免除を申請するためには、全国統一基準に基づいた要件を満たす必要があります。
これは「債務免除の妥当性を客観的に判断するため」に設けられており、経営者の主観的な訴えだけでは認められません。
➀財務状況の完全な開示
- 個人・法人の全資産状況の詳細な報告
- 収入・支出の実態を示す資料の提出
- 将来の収入見込みに関する合理的な説明
単に現在の財務状況を示すだけでは不十分で、
- 隠し資産がないことの証明
- 処分可能な資産をすべて換金した実績
を提示することが求められることもあります。
②事業状況の客観的な説明
- 事業継続の可能性についての客観的な分析
- 市場環境や競合状況に関する詳細な説明
- 事業再生計画の実現可能性に関する検証
債務免除の前提条件は、
「求償権元本を放棄しなければ、ほぼ確実に経営が破綻すること」
を証明することです。
そのためには、事業の現状と将来の見通しを、第三者も納得できる形で示さなければなりません。
③専門家による調査報告書の提出
事業継続を前提とする場合には、弁護士、公認会計士、税理士といった専門家による財務面・事業面のデューデリジェンス(調査報告書)の提出が求められます。
債務免除以外の選択肢
債務免除には非常に厳しい条件が課されるため、実際に認められるケースはごく限られています。
そのため、多くの場合は債務免除に固執するのではなく、他の解決策を検討することが現実的です。
特に「事業を継続したい」と考える経営者にとっては、債務免除よりも実現可能性が高く、かつ将来の事業発展につながる選択肢があります。
具体的には、
- 私的整理ガイドラインを活用した債務整理(金融機関や保証協会と協議し、返済条件の変更や債務カットを実現)
- 事業再生計画の策定(専門家による支援を受け、金融機関の理解を得ながら再建を進める)
- M&Aを絡めた事業承継・再生スキーム(債務超過でも事業価値を活かして新しい承継先を見つける)
といった方法が挙げられます。
これらのスキームは「単に債務を減らす」だけではなく、事業を存続させ、次の成長につなげる道を開くことができます。
求償権消滅保証制度の活用
信用保証協会では、代位弁済から一定期間が経過した後に新たな保証を受けられる制度として、求償権消滅保証制度を設けています。
この制度は、2023年9月に中小企業庁が発表した「挑戦する中小企業応援パッケージ」の一環として新設されました。
従来は相対的な取引として一部で行われていた「求償権の消滅手続き」が、制度として明確に位置づけられた点が特徴です。
求償権消滅保証制度は、従来の債務免除とは異なるアプローチで、以下のような特徴があります。
- 一定期間の返済実績が必要
→代位弁済後、一定の返済実績を積み重ねることが前提となります
- 新規事業への資金調達が可能
→新たな保証付融資を受けることができ、事業再生や新規事業の展開に活用できます
- 信用回復への道筋が明確
→単なる免除ではなく、新たな融資枠を得る仕組みのため、企業にとって「再挑戦の機会」となります
この制度では、信用保証協会が旧債務(求償権)と同額以上の保証付融資を新たに実行することで、旧債務が実質的に消滅します。
結果として債務者は同額の新しい債務を負うことになりますが、
- 新しい債務は通常の健全な借入として扱われる
- 金利は遅延損害金ではなく、一般的な貸出金利が適用される
ため、実質的に「債務免除に近い効果」を持ちながら、信用の再構築にもつながります。
M&Aによる事業再生という選択肢
信用保証協会への債務問題を抱える企業にとって、M&Aは有効な解決策の一つとなります。
単に債務を減らすのではなく、事業の価値を引き継ぎ、従業員や取引先を守りながら再スタートできる可能性があります。
M&Aを検討すべき典型的なケースは下記となります。
- 事業自体には価値があるが、資金繰りが困難な場合
- 後継者不在で将来に不安を抱えている場合
- より信用力のある企業グループに参加することで、事業継続の基盤を強化したい場合
こうしたケースでは、M&Aによって信用保証協会への債務問題を根本的に解決できる可能性があります。
M&Aでは、単に会社の株式や事業を譲渡するだけでなく、経営者個人の保証債務についても、買い手企業との交渉によって解決の道をつけられる場合があります。
これは、後継者問題や債務超過を抱える中小企業にとって大きなメリットです。
条件変更と事業承継の組み合わせ
債務免除が困難な場合でも、返済条件の変更(リスケジュール)と将来的なM&Aを組み合わせることで、段階的に解決を図る戦略があります。
具体的には、以下のような方法が考えられます。
- 返済期間の延長:返済スケジュールを長期化し、月々の負担を軽減する
- 据置期間の設定:一定期間は元金返済を猶予し、事業再生に集中する
- 返済額の減額:金融機関や保証協会と協議し、実際のキャッシュフローに即した返済額に調整する
- 将来のM&Aを前提とした計画策定:当面は負担を抑えつつ、将来的に事業価値を高めてM&Aによる最終解決を目指す
これらの条件変更を組み合わせることで、返済負担を抑えることも可能です。
その間に事業を立て直し、企業価値を高めた上でM&Aを実行することで、債務問題を根本的に解決できる可能性があります。
M&Aについては、以下の記事でも詳しく解説しておりますのであわせて参考にしてください。
関連記事|事業承継M&Aとは?メリット・デメリットから成功のポイントまで徹底解説
まとめ
信用保証協会の債務免除は、不可能ではありませんが、実現には多くの条件を満たす必要があり、そう簡単な道ではありません。
そのため、申請を検討する際には「客観的な資料の準備」と「専門家との連携」が不可欠です。
同時に、債務免除だけに固執するのではなく、
- 求償権消滅保証制度
- 返済条件の変更(リスケジュール)
- M&Aや私的整理ガイドラインを活用した再生策
といった選択肢を含め、総合的に検討することが大切です。
特に「事業を継続したい」と考える経営者にとっては、債務免除よりもこれらの制度やスキームを活用した方が、将来の事業発展につながる可能性が高いことを念頭に置いて判断することをおすすめします。
債務問題の解決には、法律・財務・事業の知見が必要となり、経営者だけで判断するのは危険です。
一般的なM&A仲介会社は「債務超過案件」を取り扱わないことが多いですが、私たちジーケーパートナーズは、中小企業活性化協議会の外部専門家として、数多くの中小企業の再生支援に携わってきました。
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