借入金の返済に追われ、資金繰りに苦慮した結果、債務超過に陥ってしまう中小企業は少なくありません。
「毎月の返済負担が重く、事業の将来が見えない」
「銀行との関係が悪化し、打開策が見つからない」
このような悩みを抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。
こうした状況を改善する一つの手段がDDS(デット・デット・スワップ)です。
DDSは、既存の借入金を劣後ローンに切り替えることで、債務超過の解消や金融機関との関係改善につながる再生スキームです。
通常の借入金返済では出口が見えないケースでも、DDSを活用することで事業再生の可能性が広がります。
本記事では、DDSの基本的な仕組みから実際の活用方法、さらに注意すべきポイントまで、中小企業再生の現場で数多くの支援を行ってきた専門家の視点から詳しく解説します。
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DDSとは?
DDS(デット・デット・スワップ)とは、既存の借入金を「劣後ローン(資本性借入金)」に切り替える金融手法です。
英語の「DebtDebtSwap」の略称で、文字通り「ある債務を別の形の債務に交換する」ことを意味します。
劣後ローンとは、万が一会社が倒産した場合の返済順位が、通常の借入金より後ろに設定される特別なローンです。
そのため金融機関の評価においては、自己資本に近い性質を持つ資金として扱われる場合があります。
DDSの手続きを行うと、金融機関との合意のもと、既存の借入契約を劣後ローン契約に切り替え、返済条件も次のように変わります。
- 返済方法:毎月の元利返済→利息のみの支払い
- 元本の返済:5~15年後の期日一括返済
- 金利:通常の借入よりも低く設定されるケースが多い
この転換によって、企業は毎月の返済負担を大幅に軽減できます。
その一方で、金融機関にとっても「実質的に債務超過が解消された」とみなされる効果があるため、新規融資の可能性が高まるというメリットがあります。
DDSとDESの違い
企業再生の代表的な手法には、DDS(デット・デット・スワップ)とDES(デット・エクイティ・スワップ)があります。
DDS(Debt Debt Swap)
「債務を別の債務に交換」する手法で、既存の借入金を劣後ローン(資本性借入金)に切り替えます。
形式上は負債として残りますが、金融機関の評価上は自己資本に近い性質を持つため、債務超過の解消や新規融資につながる可能性があります。
中小企業に適用されることが多く、新株発行などが不要で比較的スムーズに手続きできる点がメリットです。
DES(Debt Equity Swap)
「債務を株式に交換」する手法で、借入金を株式化することにより負債が減少し、純資産が増加します。債務超過の解消効果はDDSより大きいものの、金融機関や債権者が株主となるため、経営権の希薄化や意思決定の複雑化といった課題も生じます。
そのため、主に大企業や事業規模の大きい企業に適用されるケースが多いのが実情です。
このように、DDSとDESはいずれも「債務超過を解消する手法」ですが、中小企業にとって現実的かつ活用しやすいのはDDSといえます。
DDSの具体的なメリット4選
債務超過に陥った中小企業がDDSを実行することで得られる主なメリットは下記の4つです。
- 金利を削減して毎月の返済負担を大幅に削減できる
- 新規融資を受けやすくなる
- キャッシュフローを改善できる
- 経営権を維持したまま財務改善を実行できる
それぞれのメリットを詳しく解説するので、参考にしてください。
メリット①金利を削減して毎月の返済負担を大幅に削減できる
DDSでは、既存の借入金を劣後ローンに転換する際に、金利を大幅に引き下げられる点が大きなメリットです。
実際に、0.4%前後と非常に低い金利が設定されることもあり、従来の借入金利に比べて返済負担を大きく軽減できます。
さらに、返済方法が「元利返済」から「利息のみの支払い」に変更されるため、毎月の資金繰りは格段に楽になります。
たとえば、毎月300万円の元利返済を続けていた企業が、DDSを活用することで月50万円程度の利息支払いのみに切り替わるケースもあります。
このように、DDSを活用することで企業の資金繰りが大幅に改善し、再生計画に必要な運転資金や投資資金を確保しやすくなるのです。
ただし、DDSは「返済免除」ではなく「返済猶予」に近い仕組みであるため、将来的な元本返済に備えて実効性ある事業再生計画を策定することが不可欠です。
メリット②新規融資を受けやすくなる
DDSによって既存の借入金を劣後ローンに転換すると、金融機関の査定上は「自己資本」とみなされるため、実質的に債務超過を解消できる点も大きなメリットです。
これにより、企業の財務体質は改善され、金融機関からのリスク評価も見直されます。
その結果、新たな運転資金や設備投資資金の融資を受けやすくなり、再生に必要な資金調達が可能になります。
たとえば、債務超過の状態では銀行からの追加融資がほぼ不可能だった企業でも、DDSを実行することで信用力が回復し、従来なら難しかった追加融資が実現するケースもあります。
これは、経営改善や事業拡大に取り組む上で非常に大きな後押しとなります。
メリット③キャッシュフローを改善できる
DDSにより返済負担が大幅に軽減されると、手元資金に余裕が生まれるのも大きなメリットです。
毎月の元本返済が不要となり、利息も大幅に抑えられるため、企業は余剰資金を戦略的な投資や日常の運転資金に充てることができます。
たとえば、これまで返済に消えていた資金を、仕入れ・人件費・広告費などの経営資源に回せるようになれば、資金繰りに追われる日々から脱却し、前向きな経営に取り組むことが可能です。
また、突発的な資金需要にも柔軟に対応できるようになり、予測困難な経済環境の変化にも迅速に対応できます。
こうした健全なキャッシュフローは、金融機関や取引先からの信頼性を高め、「資金に余裕のある会社」としての評価向上にもつながります。
メリット④経営権を維持したまま財務改善を実行できる
DDSは、債務を株式に転換するDESとは異なり、既存の借入金を劣後ローンへ切り替えるだけの手続きです。
そのため、金融機関が株主になることはなく、経営権を手放す必要はありません。
経営者は引き続き会社の主導権を握ったまま、財務改善を進めることができます。
外部株主に経営を左右される心配がないため、自社の判断で経営方針や事業戦略を柔軟に見直しながら企業再生に取り組めるのが大きなメリットです。
「DDSだけで、本当に自社の問題が解決できるのだろうか・・」
そう不安に感じている経営者の方は少なくありません。
ジーケーパートナーズでは中小企業活性化協議会の外部専門家として、これまでに数多くの債務超過企業の再生を支援してきました。
DDSによる財務改善だけでなく、事業譲渡・会社分割・特別清算といった再生スキームまで、企業の状況に応じて最適な解決策をご提案できます。
まずは、現在の状況をお聞かせください。
DDSを検討すべき企業の特徴3つ
DDSは、すべての企業に適しているわけではありません。
特に以下のような特徴を持つ企業において、有効な再生手段となる可能性があります。
- 債務超過で返済負担が経営を圧迫している企業
- 新規融資が困難だが事業継続価値がある企業
- 経営改善への意思と計画策定能力がある企業
それぞれの特徴を詳しく解説します。
債務超過で返済負担が経営を圧迫している企業
債務超過により毎月の元利返済が重くのしかかり、手元資金が枯渇して本業の収益を圧迫している企業は、DDSの検討を真剣に考えるべきでしょう。
具体的には、次のようなケースが該当します。
- 債務超過のため、通常の金融機関から新規融資を受けられず、資金繰りが行き詰まっている企業
- 毎月の返済負担が大きすぎて、売上の大部分が借入金返済に消え、事業投資や成長資金が全く残らない企業
このような状況では、
「毎月の返済に追われて設備投資どころではない」
「売上があっても返済で手元に資金が残らない」
といった悪循環に陥りがちです。
DDSを実行すれば、返済方法が「元利返済」から「利息のみの支払い」に切り替わるため、返済負担を大幅に軽減できます。
結果として、資金繰りの余裕を取り戻し、本業の収益改善や成長戦略に集中できる環境が整うのです。
新規融資が困難だが事業継続価値がある企業
債務超過によって新規融資を断られ続けているものの、技術力や顧客基盤といった競合優位性を持つ企業は、DDSによる財務改善で再生の可能性が広がります。
具体的には、次のような企業が該当します。
- 長年にわたり事業基盤を築いてきたが、過剰債務で資金繰りが悪化し、民間金融機関への返済継続が困難となっている企業
- 直近2期は黒字化しているにもかかわらず、メインバンクが過去の赤字や債務超過のみを重視し、融資に前向きでない企業
このような状況では、
「事業は順調なのに銀行が相手にしてくれない」
「運転資金が調達できず、取引先への支払いが心配だ」
といった悩みを抱える経営者も少なくありません。
DDSを実行すると、既存の借入金を劣後ローンに転換できるため、金融機関の評価上は資本とみなされ、実質的に債務超過を解消できます。
債務超過が解消されれば、金融機関からの信用力も回復し、新規融資を受けられる可能性が高まるのです。
経営改善への意思と計画策定能力がある企業
DDSは、経営陣が現状を正しく把握し、具体的かつ実現可能な事業再生計画を策定できる企業において効果を発揮します。
具体的には、次のような企業が該当します。
- 事業自体には競争力があるものの、原価管理や経費管理の不十分さから過剰債務に陥った企業が、経営管理体制の強化と明確な財務改善策を策定したケース
- 独自の商品やサービスを軸にした成長戦略を盛り込み、外部の専門家の支援を受けながら実効性ある経営計画書を作成した企業
このように、
「このままでは立ち行かないが、改善の道筋は見えている」
「具体的な収益改善策があるのに資金が不足している」
という経営者こそ、DDSを検討すべきです。
DDSを実行することで、金融機関との交渉においても説得力のある再生計画を“武器”とすることができ、結果として低金利での資金調達と返済負担の軽減を実現できます。
DDS実行時の注意点
DDSを実行する際は、以下の4点に注意が必要です。
- 特約事項による経営制約と違反リスク
- 経営者個人への負担増加
- 税務・法的要件の事前確認
- 債権者間の合意形成
以下で詳しい内容を解説します。
特約事項による経営制約と違反リスク
DDSを実行する際には、金融機関のリスク軽減のために特約事項(コベナンツ)が設けられるケースがあります。
具体的には、下記のような条項が含まれることが多く、経営の自由度が制限される可能性があります。
- 定期的な財務報告義務
- 赤字決算を出せない制約
- 新規事業や経営方針変更には事前承認が必要
これらの特約事項に違反した場合、契約違反とみなされ、借入金の即時一括返済を求められるリスクがあるため注意が必要です。
また、経営者の迅速な意思決定が阻害され、新規事業や投資のチャンスを逃すリスクも考えられます。
そのため、DDSを導入する際には、下記事項が非常に重要です。
- 特約の内容を十分に理解すること
- 将来の事業展開に支障が出ないか慎重に検討すること
- 必要に応じて専門家に相談し、交渉によって条件を調整すること
経営者個人への負担増加
DDSは企業にとって大きなメリットがある一方で、金融機関にとってはリスクが増える施策でもあります。
そのため、リスク軽減策として経営者個人に追加の負担が課されるケースが少なくありません。
具体的には、以下のような要請が行われることがあります。
- 経営者の個人保証の追加
- 経営者の個人資産を担保として提供
- 最悪の場合、経営者の退任を条件とされるケースもある
これにより、経営者の個人資産の流動性が制限され、家計や相続を含めた個人の財務計画に深刻な影響を与える可能性もあるのです。
したがってDDSを検討する際には、提示された条件を十分に精査し、金融機関との交渉や専門家のサポートを通じてリスクを最小化する対応策を取ることが不可欠です。
まとめ
DDSは、債務超過に苦しむ中小企業が既存の借入金を劣後ローン(資本性借入金)へ転換することで、毎月の返済負担を抑え、金融機関からの新規融資を受けやすくする有効な企業再生手法の一つです。
とくに、返済に追われて資金繰りが逼迫している企業や、事業継続価値はあるのに新規融資が止まっている企業にとって、経営権を維持したまま財務改善を図れる重要な選択肢になります。
一方で、特約条項による経営上の制約、経営者個人の負担増などの注意点もあり、返済免除ではなく再生計画の実行力が求められる点に留意が必要です。
最適なスキーム選定と条件交渉のために、専門家の伴走のもとで慎重に検討しましょう。
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