債務超過に陥った企業の買収は、一般的には買い手にとってリスクが高いと思われがちです。
しかし実際には、買い手にとって大きなメリットがあるケースも多く存在します。
本記事では、債務超過企業のM&Aについて、基本的な考え方、買い手側のメリット、価格の決め方、会計処理の注意点といった重要なポイントを、わかりやすく解説しています。
債務超過企業の買収や再生に関心のある方は、ぜひご一読ください。
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債務超過状態の企業に関するM&Aは、一般的なM&A仲介会社では対応が難しいケースが多いのが現実です。
しかし、企業再生の専門家集団であるジーケーパートナーズなら、複雑な状況にも対応し、最適な再生スキームやM&A戦略をご提案できます。
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- 債務超過とは?
- 債務超過は即倒産ではない
- 中小企業の債務超過は珍しくない
- 債務超過企業を買収するメリット
- 1. 資産の取得コストを大幅に抑えられる
- 2. 合併の場合、一定の条件を満たせば節税効果により将来の税負担を軽減できる
- 3. 事業シナジーによって相乗効果が得られる
- 4. 短期間での事業拡大が実現できる
- 債務超過企業の買収価格はいくら?
- 基本価格は1円が一般的
- 将来性や資産価値で価格が変動する
- 債務超過企業買収時の会計処理4つのポイント
- 1. 連結決算時の「のれん」の計上額は債務超過の金額に連動する
- 2. 「のれん」の償却費が、決算における営業利益に影響を与える
- 3. 株式譲渡時の税務処理には慎重な対応が必要
- 4. デューデリジェンスで隠れた負債を確認する
- まとめ
債務超過とは?
債務超過とは、会社が抱えている負債の合計が、保有する資産の合計を上回っている状態を指します。
つまり、すべての資産を売却しても、借金を返しきれない状況のことです。
債務超過かどうかは、貸借対照表(バランスシート)を見れば判断できます。
資産合計から負債合計を引いた結果である「純資産」がマイナスになっていれば、その会社は債務超過の状態にあるといえます。
たとえば、資産が1億円、負債が1億2,000万円ある場合、純資産は -2,000万円となり、債務超過に陥っていることになります。
この状態は、「株主資本(出資)」が失われており、株主が出資したお金以上の損失が発生していることを意味します。企業の財務状態としては、非常に深刻な状況です。
債務超過は即倒産ではない
債務超過に陥ったからといって、すぐに倒産するとは限りません。
実際には、債務超過の状態でも事業を継続している企業は数多く存在します。
債務超過を解消する方法には、以下のような選択肢があります。
- 本業による利益の積み上げ
- 増資による自己資本の強化
- 債権者との交渉による債務免除
- 不動産や株式などの資産の再評価 など
こうした手段を組み合わせることで、債務超過を解消できる可能性は十分にあります。
最も重要なのは、キャッシュフロー(資金の流れ)をしっかり確保しながら、計画的に財務改善を進めることです。
冷静に現状を見つめ、適切な対策を講じることで、事業再建への道は開けます。
中小企業の債務超過は珍しくない
中小企業が債務超過に陥ることは、実はそれほど珍しいことではありません。
その背景には、以下のようなさまざまな要因があります。
- 景気変動の影響を受けやすい事業構造
- 設備投資や新規事業の失敗
- 主要取引先の突然の倒産
- 経営者の病気や不慮の事態による経営機能の低下
また、中小企業は大企業に比べて資本基盤が弱く、わずかな赤字やトラブルでも債務超過に陥りやすい傾向があります。
しかし、その一方で、中小企業は意思決定のスピードが早く、柔軟な対応が可能です。
加えて、金融機関や支援機関からのサポートを得られれば、再建できるケースも多くあります。
大切なのは、問題を抱え込まず、早めに専門家に相談し、的確な対応をとることです。
債務超過企業を買収するメリット
債務超過の企業を買収することは、一見リスクが高いように思われがちですが、実は買い手側にとって多くのメリットがあります。
特に、コストや税務面、事業成長の観点から、意外なほどの効果が得られるケースも少なくありません。
主なメリットは次の通りです。
- 資産の取得コストを大幅に抑えられる
- 合併の場合、一定の条件を満たせば節税効果により将来の税負担を軽減できる
- 事業シナジーによって相乗効果が得られる
- 短期間での事業拡大が実現できる
以下で詳しい内容を解説します。
1. 資産の取得コストを大幅に抑えられる
債務超過の企業は財務的に厳しい状況にあるため、保有する資産を市場価格よりも大幅に安い金額で売却せざるを得ないケースが多く見られます。
このような状況をうまく活用すれば、買い手企業は、通常よりもはるかに低いコストで、価値の高い資産(不動産、設備、知的財産など)を取得することが可能になります。
特に、売り手企業が早急に資金を確保したい事情を抱えている場合には、売却価格がさらに下がることもあり、買収側にとっては非常に有利な条件で交渉を進められるチャンスとなります。
2. 合併の場合、一定の条件を満たせば節税効果により将来の税負担を軽減できる
債務超過の企業は、一般的に過去の赤字による「繰越欠損金」を多く抱えていることが特徴です。
この企業を買収し、合併した後に事業が黒字化すれば、一定の条件を満たすことで、その繰越欠損金を将来の利益と相殺することが可能になります。
その結果、法人税の課税対象となる所得が減るため、税金の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
この節税効果により、買収後の数年間にわたってキャッシュフローの改善が見込める点は、買い手企業にとって大きなメリットとなります。
3. 事業シナジーによって相乗効果が得られる
債務超過の企業であっても、優れた技術力、安定した顧客基盤、ブランド力などの無形資産を保有している場合があります。
こうした経営資源を自社の事業と組み合わせることで、相互に補い合う「シナジー効果」を期待できる点も、大きなメリットの一つです。
たとえば、売り手企業の研究開発部門に高い専門性があれば、自社が不足している分野をすぐに強化できる可能性があります。
また、売り手の顧客ネットワークを引き継ぐことで、自社製品の販路を拡大し、市場シェアを広げることも可能になります。
このように、財務状況だけでは見えない「隠れた価値」に着目することで、戦略的な成長につなげることができます。
4. 短期間での事業拡大が実現できる
新たに事業を立ち上げる場合、人材の採用、設備の整備、市場の開拓などに多くの時間とコストがかかります。
ゼロからのスタートは、リスクも大きく、成果が出るまでに長い時間を要するのが一般的です。
しかし、債務超過の企業を買収すれば、既に整っている事業基盤(人材・設備・顧客・ノウハウなど)をそのまま活用できるため、初期コストを抑えながら、短期間で事業を拡大することが可能になります。
特に、新しい市場への参入や事業領域の拡大を目指している企業にとっては、このような「時間的な優位性」は、競争力を高めるうえで非常に大きな価値を持ちます。
債務超過企業の買収価格はいくら?
債務超過企業の株式譲渡価格は、一般的に1円または実質0円で設定されることが多いです。
これは、企業の負債が資産を上回っており、帳簿上の純資産がマイナスになっているためですが、実際には企業の将来性や保有する資産の内容によって、一定の価格が付くケースもあります。
たとえば、有望な技術、人材、ブランド、取引先との契約などが評価される場合です。
詳しくはこのあと解説しますので、ぜひ参考にしてください。
基本価格は1円が一般的
債務超過の企業では、資産より負債の方が多いため、株式には実質的な価値がないと判断されます。
そのため、株式の譲渡価格は「1円」で取引されるケースが非常に多いのが実情です。
この「1円」は、会計上では「備忘価額(びぼうかがく)」と呼ばれ、帳簿上に資産がまったくないわけではないものの、価値がほぼゼロであることを示す象徴的な金額です。
実際のM&Aの現場でも、債務超過企業の株式はこの備忘価額で譲渡される例が数多くあります。
そのうえで、別途債務整理や再生スキームを組み合わせて取引が成立するケースが一般的です。
将来性や資産価値で価格が変動する
一方で、債務超過の企業であっても、独自の技術力、優良な顧客基盤、ブランド力など、将来的な収益につながる資産を持っている場合は、株式の譲渡価格が1円や実質0円ではなく、一定の価値が認められるケースもあります。
特に、買収側がその企業の将来性や自社とのシナジー効果(相乗効果)を高く評価した場合、実際の譲渡価格が上昇することも珍しくありません。
このように、財務状況だけでなく、企業が持つ無形の強みや成長ポテンシャルが、価格に大きく影響することがあります。
債務超過の状態は、放置すると状況が悪化しやすいため、早期の対応がとても重要です。
ジーケーパートナーズでは、負債整理から事業再生まで、会社の状況に合わせた最適な解決策をご提案しています。
専門家が丁寧にサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
債務超過企業買収時の会計処理4つのポイント
債務超過の企業を買収する際には、会計処理に関していくつか重要なポイントがあります。
これらを正しく理解し、適切に対応することが、買収後の財務リスクを回避するために欠かせません。
主な注意点は以下のとおりです。
- 連結決算時の「のれん」の計上額は、債務超過の金額に連動する
- 「のれん」の償却費が、決算における営業利益に影響を与える
- 株式譲渡時の税務処理には慎重な対応が必要
- デューデリジェンスで隠れた債務やリスクを洗い出すことが不可欠
これらのポイントについて、以下で詳しく解説していきます。
買収を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
1. 連結決算時の「のれん」の計上額は債務超過の金額に連動する
債務超過企業を買収する際、連結決算時の「のれん(営業権)」の金額は、債務超過の大きさと関係しています。
たとえば、債務超過企業を買収した場合、その企業の債務超過額と同じ金額ののれんが計上されるのが一般的です。
このように、買収金額と債務超過額の合計がのれんに反映されるため、財務への影響を事前に把握し、慎重に検討することが重要です。
2. 「のれん」の償却費が、決算における営業利益に影響を与える
買収によって計上された「のれん(営業権)」は、一定期間にわたって費用として償却する必要があります。
のれんは会計上では20年償却ですが、5年間で償却するケースが一般的です。
たとえば、のれんが5億円ある場合、5年間で償却すると、年間1億円ののれん償却費が発生することになります。
この償却費は、決算上の費用として処理されるため、営業利益を直接押し下げる要因になります。
そのため、買収を検討する際には、のれん償却による利益への影響をあらかじめ収益計画に織り込んでおくことが重要です。
3. 株式譲渡時の税務処理には慎重な対応が必要
債務超過企業の株式を譲渡する際には、通常のM&Aとは異なる税務上の取り扱いに注意が必要です。
特に重要なのが、株式の譲渡価格が1円や0円など極端に低い場合の税務処理です。
税務当局は、時価と大きく乖離した価格での取引について、場合によっては「寄付金(譲渡側)」や「受贈益(取得側)」とみなして、課税の対象とすることがあります。
また、買収後に繰越欠損金(過去の赤字)を活用して節税を図る場合でも、税法上の「引継制限」がかかることがあり、すべての欠損金がそのまま使えるとは限りません。
このように、適切な税務対応をしないまま買収を進めると、想定外の税負担が発生するおそれがあります。
そのため、債務超過企業の株式譲渡を検討する際は、税理士など専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが不可欠です。
4. デューデリジェンスで隠れた負債を確認する
債務超過企業を買収する際は、帳簿には記載されていない「簿外債務」の存在を見落とさないことが非常に重要です。
たとえば、未払残業代、社会保険料の滞納、未開示の訴訟リスクなどが後から発覚すると、それらの負担をすべて買収側が背負うことになる可能性があります。
通常のM&Aでは、こうした簿外債務が見つかった場合、「表明保証違反」として売り手に損害賠償を請求できる仕組みがあります。
しかし、債務超過企業の株式が1円や実質0円など極端に低い価格で譲渡される場合には注意が必要です。
このようなケースでは、損害賠償の上限も株式譲渡価格(=1円)に限定されることが多く、実質的に買い手が全てのリスクを負うことになりかねません。
このリスクを回避するには、会計士や弁護士などの専門家による徹底したデューデリジェンス(調査・精査)が不可欠です。
事前にリスクを把握し、契約条件に盛り込むことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
まとめ
債務超過企業の買収は、一見するとリスクが高いように見えるかもしれません。
しかし、適切な事前調査と戦略的な判断があれば、大きなビジネスチャンスに変えることができます。
たとえば、
- 資産を低コストで取得できる
- 合併の場合、一定の条件を満たせば繰越欠損金を活用することで、買収後の節税が可能
- 既存の人材・設備・顧客を活かし、即座に事業を拡大できる
といった、買い手にとって魅力的なメリットが複数あります。
一方で、連結決算時の会計面では「のれん」の計上とその償却による利益への影響に注意が必要です。
また、未払債務や法的リスクなど、帳簿に現れない負債(簿外債務)を事前に把握するための徹底したデューデリジェンス(精査)も欠かせません。
債務超過企業の買収を成功させるには、財務・法務・税務の専門知識と実務経験を持つ専門家の支援が不可欠です。
正しくリスクを見極め、的確な判断を行うことが、買収後の成果につながります。
ジーケーパートナーズでは、一般的なM&A仲介会社では対応が難しい「債務超過の案件」にも対応可能です。
これは、私たちが持つ企業再生の専門知識と豊富な実務経験があるからこそ実現できることです。
当社は、中小企業活性化協議会の外部専門家として数多くの再生支援に携わってきた実績があり、
さらに、私的整理ガイドラインを活用したスキームの構築・実行にも高い専門性を有しています。
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