
企業経営において、借入金の返済が難しくなることは決して珍しいことではありません。
特に中小企業では、景気変動や取引先の減少、原材料価格の高騰、コロナ禍以降の資金繰り悪化などにより、返済に行き詰まるケースが増えています。
こうした状況に陥った際に、経営者の頭に浮かぶ選択肢のひとつが「債務免除」です。
ただし、実務の現場では、単純に債務を免除してもらうことは非常に難しいのが実情です。
金融機関や債権者が債務免除に応じるのは、再生計画が合理的であり、将来的な事業継続の見込みがあると判断された場合に限られます。
本記事では、下記項目について詳しく解説していきます。
- 債務免除の基本的な仕組み
- 実際に行われる手続きの流れ
- 専門家に相談すべきタイミング
借入金の返済に悩む経営者の方は、現実的な再生の方向性を見極めるための参考にしてください。
債務超過や資金繰りにお困りの企業様は、ジーケーパートナーズまでお気軽にご相談ください。
企業再生の専門家として、債務免除を含む最適な解決策をご提案いたします。
債務免除とは?
債務免除とは、債権者が債務者に対して「もう返済しなくてよい」と認めることで、返済義務をなくすことをいいます。
民法第519条では「債権者が債務者に対し債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅する」
と定められており、法律上も債務免除によって債務が消えることが明確にされています。
債務免除が実行されると、債務者には本来返済すべき金額に相当する経済的利益が発生します。
その結果、下記のような効果が得られます。
- 負債が減少する
- 純資産が回復する
- 財務状況が大幅に改善する
これは単に「借金をなくす」ことを目的としたものではなく、企業が事業を続けるため、または個人が生活を立て直すための大切な手段といえます。
中小企業経営者が知っておくべきポイントは下記の通りです。
- 債務免除は、債権者の協力があって初めて成立するため、金融機関や取引先との関係性が重要
- 実務では「私的整理」や「特別清算」、「事業譲渡・会社分割」といった再生スキームの一環として用いられるケースが多い
- 会計・税務上の取り扱いも発生するため、専門家の支援が不可欠
- 特に債務超過状態にある企業にとっては、再生の第一歩となる重要な手段
以下の記事でも、債務免除とは何かを詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事|債務免除益とは?中小企業の税務実務のポイントを徹底解説
債務免除の進め方
債務免除を実現するためには、法的な要件を満たすだけでなく、税務や会計の影響を正しく把握し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。
また、債権者の理解と合意が得られなければ実行は難しく、慎重な準備と専門的な支援が求められます。
その上で、一般的な進め方は次の通りです。
- 事前準備と状況確認
- 債務免除の意思決定と合意形成
- 債務免除証書・通知書の作成
- 配達証明付き内容証明郵便での送付
- 会計処理と税務申告
以下で詳しい内容を解説します。
【ステップ1】事前準備と状況確認
債務者が債権者に債務免除を求める場合、まずは自社の財務状況を客観的に示すことが必要です。
特に、「すでに返済が難しい状態(弁済不能)」であることを裏付ける資料を整えることが欠かせません。
準備すべき主な資料は、次のとおりです。
- 財務諸表(直近3期分の貸借対照表、損益計算書など)
- 資金繰り表(向こう6ヶ月〜1年分の予測)
- 債権債務一覧表(全ての借入金と返済条件)
- 事業再生計画書(可能な範囲で)
資料を作成する際のポイントは、債務超過の期間や今後の見通しを数値で明確に示すことです。
債権者に対して「今すぐ債権を回収するよりも、事業再生を支援した方が結果的に合理的である」
と客観的に説明できれば、債務免除に応じてもらえる可能性が出てきます。
【ステップ2】債権者との交渉準備
債務免除の成否は、実際の交渉に入る前の準備段階でほとんど決まるといっても過言ではありません。
十分な準備をせずに交渉に臨むと、債権者からの信頼を失い、結果的に交渉が決裂するリスクが高まります。
交渉をスムーズに進めるためには、次のポイントを事前に整理しておきましょう。
- 債権者ごとの優先順位の設定(金融機関、取引先、役員など)
- 債務免除を求める理由の整理(経営不振の原因、改善策など)
- 事業継続による債権者メリットの説明準備
- 今後の取引関係に関する方針の明確化
取引先や金融機関に対して、今後どのような関係を築きたいのかを具体的に伝えることが、信頼回復の第一歩となります。
また、債権者にとって、債務免除は単なる「損失」ではありません。
次のような「社会的・経済的な意義」も含まれており、交渉の際にこれらの点を丁寧に伝えることで、理解を得やすくなることがあります。
- 事業継続による雇用維持
- 取引先や地域経済への影響回避
- 企業の社会的責任(CSR)の一環としての再生支援
このように、債務免除を「共倒れを防ぐための合理的な判断」として説明できれば、債権者も前向きに検討する可能性が高まります。
【ステップ3】債務免除の合意形成
債権者が金融機関や取引先ではなく、経営者本人や親族などの個人である場合には、合意形成において特有の注意点があります。
一律の対応ではなく、税務と法務の両面から慎重に進めることが大切です。
主な確認事項は次のとおりです。
- 書面での合意書作成(口頭約束は避ける)
- みなし贈与税のリスク確認
- 相続税対策としての影響検証
- 税理士への事前相談(債務者が資力喪失状態に該当するかの判断など)
個人からの債務免除は、金融機関や取引先の場合と異なり、家族関係・相続・贈与税リスクが複雑に絡むのが特徴です。
単なる「借金の帳消し」では済まないため、必ず専門家と連携して進めることが安全です。
債務免除において、金融機関との交渉は最も重要であり、かつ難易度の高いステップです。
一つでも準備不足があると、交渉が停滞し、再生のチャンスを失うおそれがあります。
効果的に進めるためには、次の流れを意識しましょう。
- 正式な債務免除依頼書の提出
- 事業再生計画の詳細説明
- 他の債権者との公平性確保
- 私的整理ガイドラインの活用検討
金融機関は常に「債権回収の最大化」を目指しています。
したがって、交渉では以下の2点を明確にすることが重要です。
- 清算した場合よりも、債務免除を行ったほうが合理的であること
- 事業再生によって、将来的に取引や回収の見込みが残ること
経営者はこの「経済的合理性」を数字で裏付けて説明することが求められます。
また、複数の金融機関が関与している場合には、公平な負担配分(債権カット率の整合性など)を図り、全体の合意を形成することが不可欠です。
【ステップ4】債務免除証書の受領
債権者から届く「債務免除の通知書(債務免除証書)」は、法的な効力と税務処理の根拠となる、非常に重要な書類です。
一度効力が発生すると、簡単に訂正することはできません。
そのため、受け取った際は内容を慎重に確認する必要があります。
債務免除証書には、次の項目が正確に記載されているかを確認しましょう。
- 債権者と債務者の正式な名称・住所
- 免除される債権の内容(債権額、発生原因、契約日など)
- 免除する金額と対象期間
- 免除の理由
- 効力発生日
- 債権者の署名または記名押印
債務免除証書は、通常、内容証明郵便(配達証明付き)で送付されます。
これは、「債権者が正式に免除の意思を示した」ことを客観的に証明するための手続きです。
受け取った後は、記載内容に誤りがないか必ず確認することが重要です。
特に、金額や対象となる債権に疑問がある場合は、そのままにせず、速やかに債権者へ確認してください。
わずかな記載ミスでも、将来的に大きなトラブルにつながる可能性があります。
【ステップ5】会計処理と税務申告
債務免除を受けた企業は、正しい会計処理と税務申告を行う必要があります。
これを誤ると、思わぬ税金が発生する恐れがあるため、必ず専門家と連携して進めましょう。
債務免除を受けると、帳簿上では次のような処理が行われます。
- 負債の帳簿価額を減少させる
- 減少分を「債務免除益(特別利益)」として計上する
仕訳例:(借方)借入金 1,000万円/(貸方)債務免除益 1,000万円
この処理により、決算書上は負債が減少し、純資産が改善します。
一方で、この「債務免除益」は課税対象となるため、税務面での注意が必要です。
債務免除によって発生した債務免除益は、原則として益金に算入され、法人税の課税対象となります。
ただし、一定の条件を満たせば、課税を回避または軽減できる場合があります。
(1)繰越欠損金との相殺
- 多くの債務超過企業は、過去の赤字による繰越欠損金を有しています
- 債務免除益と相殺することで、実質的に法人税の負担をゼロまたは軽減できるケースがあります
- ただし、繰越欠損金の使用には制限(控除限度額や期間制限)があるため、適用条件を事前に確認する必要があります
(2)企業再生税制の活用
- 「合理的な再生計画」が策定され、かつ債務免除が正式な手続きを経て実行された場合、期限切れの欠損金であっても損金算入が認められる特例があります。
- これにより、通常は使えない過年度の欠損金を活用し、税負担を軽減できる可能性があります。
- ただし、この特例を受けるためには、下記要件を満たす必要があります。
1)再生計画の妥当性
2)債権者(金融機関)との正式な合意
3)適切な手続きを経た債務免除の実行
- 単に計画を立てただけでは適用されず、要件を満たさなければ認められません。
そのため、手続き面も含めて専門家が関与しながら進めることが不可欠です。
(3)資力喪失状態の特例
- 債務者が「資力を喪失し、弁済が著しく困難な状態」にあると認められる場合、債務免除益が課税対象から除外されることがあります。
- ただし、この「資力喪失」の判断は非常に複雑で、債務超過の程度や資金繰りの状況などを詳細に検討する必要があります。
- 自己判断は避け、必ず税理士などの専門家に確認しましょう。
債務免除は、企業の財務体質を大きく改善できる一方で、税務リスクを伴う諸刃の剣でもあります。
次の3点を意識しながら、慎重に進めることが重要です。
- 自社の財務状況を正確に把握する
- 適用可能な税務特例を検討する
- 公認会計士・税理士など専門家と連携して進める
これらを踏まえて計画的に対応すれば、債務免除を企業再生の確かな一歩に変えることができます。
債務免除の相談先
債務免除は、法務・税務・会計・金融機関との調整が複雑に絡み合う手続きです。
自己判断で進めると、後々のトラブルや予期せぬ税負担につながるリスクがあります。
そのため、早い段階で適切な専門家に相談することが成功への近道です。
法務・金融機関対応に強い専門家:弁護士
債務免除を法的な観点から検討する場合は、弁護士への相談が基本です。
≪弁護士に相談すべきケース≫
- 金融機関が複数あり、交渉が難航している
- 法的紛争や訴訟の可能性がある
- 債権者間で意見が分かれている
弁護士は交渉代理権を持ち、訴訟や複雑な調整を伴うケースに対応可能です。
債務総額が大きい、金融機関が複数関与している、といった中小企業の典型的な状況では、弁護士への相談が最適です。
税務・会計に関する専門家:税理士・公認会計士
債務免除では、税務上の扱いが極めて重要です。
「債務免除益の課税」や「繰越欠損金の活用」など、専門知識がなければ大きな負担につながることがあります。
≪税理士に相談した場合≫
- 債務免除益の税務処理、繰越欠損金の活用、企業再生税制の適用判断などをサポート
- 中小企業に最も身近で、実務的な支援が可能
≪公認会計士に相談した場合≫
- 大規模な財務改善やM&Aを伴うケースで、財務の信頼性を担保
- 金融機関や投資家に対して説得力ある説明資料を作成
事業再生・M&Aに強い専門機関
債務免除は単独で進めるよりも、事業再生や事業譲渡と組み合わせることで効果的に進められるケースが多くあります。
再生に強い専門会社であれば、財務改善と同時に事業の存続や雇用の維持を考慮したスキーム設計が可能です。
≪M&A・企業再生の専門会社≫
- 再生型M&Aの支援、スポンサー企業の探索、再生スキームの設計
- 一般的なM&A仲介会社では扱えない債務超過案件にも対応可能
- 各都道府県に設置された公的な再生支援窓口
- 専門家が金融機関との協議や再生計画の策定を中立的にサポート
以下の記事では、M&Aの相談先について詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください。
関連記事|M&Aの相談先・窓口・センターを徹底比較!無料相談の活用方法も解説
公的な相談窓口
営利を目的としない中立的な立場で支援を受けられる窓口もあります。
- 後継者不在や廃業を検討している企業の相談窓口
- M&Aや事業承継の選択肢を提案
≪経営安定特別相談室≫
- 資金繰りの悪化や債務超過などの経営危機に対応
- 弁護士・税理士・中小企業診断士らがチームで助言
公的機関は中立的で安心感のある窓口ですが、実際には一般的な経営相談や制度紹介が中心となります。
一方で、債務超過企業の抜本的な再生には次のような高度な専門性が不可欠です。
- 私的整理ガイドラインを活用した金融機関との調整
- スポンサー探索による新たな資金・経営資源の導入
- 事業譲渡・会社分割と組み合わせたスキーム設計
- 債務免除とM&Aを組み合わせた再生戦略
これらは、公的機関単独では対応が難しく、企業再生の専門会社だからこそ実行可能な領域です。
ジーケーパートナーズは中小企業活性化協議会の外部専門家として数多くの再生支援実績を有し、債務超過案件にも対応できる数少ない専門機関です。
一般的なM&A仲介会社が敬遠する「債務超過案件」でも、再生スキームを絡めることで事業の存続と債権者への合理的な配当を両立できます。
借入金に悩み、資金繰りに行き詰まっている経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
状況を丁寧にお伺いし、御社にとって最適な再生スキームをご提案いたします。
まとめ
債務免除は、企業の財務改善において非常に有効な手段ですが、正しい手続きと専門家の支援がなければ大きなリスクを伴います。
まずは自社の財務状況を客観的に整理し、弁済不能状態を示す資料を準備することです。
その上で、債権者との交渉を計画的・戦略的に進めることが求められます。
さらに、債務免除を単独で行うのではなく、事業再生や事業譲渡と組み合わせることで、より効果的な解決策を実現できます。
資金繰りや借入金でお悩みの経営者の方、ひとりで抱え込まずに、ぜひ専門家にご相談ください。
ジーケーパートナーズは、下記を強みとしています。
- 中小企業活性化協議会の外部専門家としての豊富な再生支援実績
- 債務超過案件にも対応可能な数少ない専門機関
- 私的整理ガイドラインの活用からスポンサー探索、事業譲渡まで包括的にサポート
一般的なM&A仲介会社が敬遠するような難しい案件でも、最適な再生スキームをご提案いたします。
借入金に悩み、資金繰りに行き詰まっている経営者様へ。
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