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前回の記事では、「のれん」と「営業権」の違いに焦点を当て、それぞれがM&Aにおいてどのように扱われるかについて解説しました。M&Aのプロセスにおいては、これらの無形資産が企業の価値を大きく左右する要素であることを理解していただけたかと思います。今回の記事では、その内容を踏まえ、さらに深掘りして「のれん」の評価方法や償却方法、そして税務面での取り扱いについて解説します。M&Aにおいて、のれんの適切な評価とその取り扱いは、企業の価値最大化に影響を与える重要なプロセスです。本記事が、M&Aを検討する企業の皆様の参考となれば幸いです。
のれんの評価は、M&Aにおいて極めて重要でありながらも非常に難しいプロセスです。その理由は、のれんが企業の無形資産やブランド力、顧客関係、ノウハウなど、目に見えない価値を反映しているためです。これらの無形資産は、物理的な資産とは異なり、明確な市場価格が存在せず、評価には主観的な判断が大きく影響することがあります。そのため、のれんの正確な評価を行うためには、専門的な知識と第三者の客観的な意見が不可欠です。
のれんの評価方法として、一般的に用いられるアプローチには、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチの3つがあります。
マーケットアプローチは、類似した事業を行っている企業の株価や企業価値を基準に比較する方法です。このアプローチは、比較対象の企業が存在しない場合には適用が難しいという課題があります。
インカムアプローチでは、企業が将来的に得られるフリーキャッシュフローを推定し、その現在価値を基に企業価値を評価します。この方法は理論的に精度の高い評価を行える反面、計算が複雑で中小企業には適さない場合が多いです。
コストアプローチは、対象企業の貸借対照表の純資産に基づいて価値を評価する方法です。この方法は、資産が多い企業だけでなく、目に見える資産の価値を客観的に評価しやすいという利点がありますが、無形資産の価値を十分に反映しにくいというデメリットもあります。
中小企業においては、のれんの評価に特有の課題が存在します。まず、上場していない中小企業やベンチャー企業の場合、市場価格や類似企業が存在しないことが多く、マーケットアプローチの適用が難しいことがあります。また、インカムアプローチを用いる際には、正確な予実管理や中長期的な計画が求められますが、これに慣れていない企業では適用が難しい場合があります。
これらの課題に対応するためには、いくつかの具体的な評価方法が考えられます。例えば、コストアプローチのひとつに、時価純資産価額(その事業に係る資産と負債を時価に直した際の差額)に基づく評価があります。この方法では、対象企業の時価純資産額を求め、その金額に営業利益の数年分(1年~5年分)を加算してのれんを算出します。
また、実質利益(過去2~5年の平均税引き後の利益)に評価倍率(2~5倍)を乗じて算出する方法もあります。この方法では、のれんは「平均税引き後の利益×評価倍率」という形で計算され、当事者間で決定した年数や評価倍率をもとに評価されます。
以上のように、中小企業のケースでは、これらの評価方法を単独で使用するのではなく、企業の実態に即した柔軟な評価を行うことが求められます。評価においては、企業の特性や業界の動向を十分に考慮し、最適な方法を組み合わせて適用することが重要です。
ここまでのれんの評価方法について解説しましたが、評価、計上されたのれんの価値は、その後、適切に償却される必要があります。のれんの償却方法は、企業の財務状況に大きな影響を及ぼすため、会計上と税務上の両方の観点から正確に理解しておくことが重要です。ここでは、それぞれの償却方法について解説します。
のれんの償却は、企業の財務状況に直接的な影響を与えるため、非常に重要なプロセスです。会計上では、のれんは通常、将来的に期待される経済的利益が得られる期間にわたって償却されます。この期間は、一般的に20年以内とされており、企業が持つのれんの価値を段階的に費用として計上することで、財務諸表における安定性を保ちます。
また、この償却方法により、一括で大きな赤字が計上されるのを避け、企業の経営に与える影響を緩和することができます。適切な償却期間を設定するには、企業ごとの将来予測や経済状況を十分に考慮する必要があり、慎重な判断が求められます。
税務上ののれんの取り扱いは、会計上とは異なる側面があります。一般的に、のれん償却費は税務上の損金には含まれません。通常、のれんは資産計上されないことが多いですが、特定のM&A手法を用いる場合には、勘定科目として資産計上されることがあります。
具体的には、非適格組織再編(組織の再編成において、税務上の特例が適用されないケース)や事業譲渡を伴うM&Aスキームでは、のれんを「資産調整勘定」として計上し、5年で均等償却します。この勘定項目は、課税所得を減少させる効果があるため、M&Aの実施方法によって税務上の影響が大きく異なる点に注意が必要です。
なお、国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準では、のれんの定期的な償却は認められず、のれんの価値が減少した場合にのみ減損損失として計上する方式が採用されています。
のれんの評価と償却方法について理解したところで、次に考慮すべき重要な要素が税務と税金の取り扱いです。特に、M&Aにおいては、売り手と買い手の双方がどのように税務上の影響を受けるか、そして特定のM&Aスキームにおける税務対応についての基本的な知識を身に着けておくことが重要です。
売り手にとって、M&Aによる資産やのれんの譲渡に伴う利益には、法人税や所得税が課される場合があります。事業譲渡によって得られる譲渡益には法人税が課されます。また、株式譲渡によりのれんの価値を反映させた場合も、その所得に対して課税される可能性があります。なお、無償で事業譲渡を行った場合でも、税務上は時価を基にした譲渡益が認識され、法人税が発生することがある点にも注意が必要です。
買い手側もまた、M&Aによって取得したのれんに対して、税務上の取り扱いを適切に行う必要があります。のれんの取得には消費税が課される場合があり、その取り扱いについて事前に確認が必要です。また、買収後にはのれんの償却が求められることがあり、この償却費用が税務上どのように処理されるかも重要なポイントです。
これまでに解説してきた「のれん」の評価方法、償却方法、そして税務上の取り扱いはM&Aプロセスにおける極めて重要な要素です。これらのポイントを理解し、適切に対応することが、取引を円滑に進めるためには欠かせません。
売り手としては、価値を最大限に評価し、適切な償却・税務処理を行うことで、より有利な条件での取引を目指すことができます。また、買い手としても、公正な価格で取引を成立させるために、これらの知識は不可欠です。
のれんの評価や償却は、企業の財務状況とキャッシュフローに直接的な影響を及ぼします。さらに、税務上の処理が適切に行われることで、企業は余計な税負担を回避しながら、M&Aの効果を最大限に引き出すことが可能となります。これらの要素がすべて効果的に機能することで、企業の価値を最大化し、M&Aを成功に導くことができるのです。
特にのれんの扱いを含むM&Aは非常に複雑なプロセスです。そのため、M&Aに精通した財務、法務、税務の専門家の支援を適切に受けることが重要です。専門家による客観的な評価と戦略的なアドバイスを活用することで、M&Aを円滑に進め、成功の可能性を高めることができるでしょう。
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企業の売却や買収を検討する際には、適切な売却価格や買収価格を決定するための「企業価値評価(バリュエーション)」が必要です。これは端的にいえば、取引を成立させるための価格設定のプロセスです。本記事では、中小企業M&A(企業の合併と買収)における企業価値評価の基本と実践方法について解説します。また、赤字企業のケースにおける企業価値評価についても取り上げます。
企業価値評価とは、企業の全体的な価値を数値化するプロセスです。企業が保有する資産、負債、将来の収益予測などを考慮して行われます。企業価値評価は、資金調達の際に投資家が企業の価値を見極めるための基準となり、株価を算定する根拠となります。また、事業承継の際には後継者や買い手が企業の価値を正確に把握するために必要で、相続税の評価にも関わります。さらに、M&A(企業の合併と買収)においては、売却価格や買収価格を決定するために行われます。M&A時に算出された企業価値は、売り手側と買い手側が交渉する際の基準となる重要な要素です。
このように企業価値評価はさまざまなビジネスシナリオで必要とされますが、本記事では特にM&Aにおける企業価値評価に焦点を当て、その具体的な方法や実践のアプローチについて掘り下げていきます。
企業価値評価にはいくつかの方法があります。それぞれの方法は企業の状況や評価の目的に応じて適切に選択されます。
市場アプローチは、同業他社の取引価格や株価を基にして企業価値を評価する方法です。この方法は、市場での評価を反映しているため、現実的な価格を算出することができます。ただし、同業他社との比較が難しい場合や市場データが不足している場合には適用が難しいことがあります。
収益アプローチは、企業の将来の収益予測に基づいて企業価値を評価する方法です。代表的な手法にDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)があり、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価します。この方法は、企業の将来の収益力を反映するため、成長性の高い企業の評価に適していますが、予測の精度に依存しているため、不確実性が高い側面もあります。
資産アプローチは、企業が保有する資産の価値に基づいて企業価値を評価する方法です。企業の資産(不動産、設備、在庫など)の市場価値を基に評価するため、特に資産が多い企業や収益が安定していない企業の評価に適しています。ただし、無形資産の価値や将来の収益力を十分に反映できない場合があるため、他のアプローチと組み合わせて使用されることもあります。
中小企業や非上場企業の評価には特有の課題や条件が存在します。ここでは、これらの企業に適した評価手法について検討します。
収益アプローチは、中小企業にとって重要な評価手法の一つです。特にDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価するため、将来の収益性を反映することができます。しかし、この方法には精緻な事業計画が必要であり、特に中小企業の場合は予測のぶれが大きくなることもあります。
資産アプローチは、保有する資産の市場価値を基に評価する方法です。不動産や設備、在庫などの有形資産の評価が重要な要素となります。収益が安定していない企業や、資産が多い企業の場合に有効で、中小企業の評価にも適用されることが多いです。
中小企業のM&Aにおいては、営業権(のれん)も重要な要素となります。営業権とは、企業が長年培ってきたブランド力や人的資源など、帳簿上で評価できない要因によって期待される超過収益力のことです。純資産の時価に営業権を加算することで、評価対象企業の収益力を考慮して企業価値を算出します。実際の中小企業のM&Aの場面で多く採用されています。
次に、赤字企業のM&Aにおける企業価値評価について検討してみましょう。赤字企業は、その特性から通常とは異なるアプローチが求められます。ここでは、赤字企業の評価におけるポイントと適用される評価手法について解説します。
赤字企業は、収益性が低下しているため、収益アプローチの適用が難しい場合があります。そのため、資産アプローチや特定の条件を考慮した評価手法が必要となります。
赤字企業でも将来の収益改善が見込まれる場合、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)を用いて将来のキャッシュフローを評価することが可能です。再建計画やコスト削減計画など、具体的な対策を評価に含めることが重要です。
赤字企業の評価には、保有資産の市場価値を基にした資産アプローチが有効です。また、営業権(のれん)を考慮する際には、収益力の改善が見込まれるかどうかについて、慎重な評価が必要となります。一方、業績が赤字だとしても、著名なブランド資産や豊富な顧客資産がある場合、プラスに評価されることもあります。買い手の戦略によっては、価値評価が異なることもあるでしょう。
M&Aの成功に欠かせない企業価値評価について、特に中小企業や赤字企業の場合に焦点を当てて解説してきました。企業価値評価は、単なる数値の算出にとどまらず、企業の成長や再建計画の基盤となります。適切な企業価値評価は、経営者や投資家の意思決定、成長戦略、資本政策の策定に不可欠であり、公正な取引の実現にも欠かせません。本記事で解説したように、企業の特性に応じた評価手法を選び、それぞれのアプローチを適用することが重要です。評価プロセスには専門的な知識と経験が必要となるため、実務の場面においては専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
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一般的に「のれん」と聞くと、多くの人は店先に掛けられた暖簾(のれん)を思い浮かべるでしょう。これは、日本の伝統的な商習慣である「のれん分け制度」にも関連しています。この制度では、成功した店舗が新たな店舗を開くときに、暖簾を受け継ぐことで、そのブランドや信頼性をも引き継げるというものです。このように「のれん」という言葉は、広義にはブランドや評判を意味し、日本の伝統的な用語として用いられてきました。
一方で、M&A(企業の合併・買収)の文脈においても「のれん代」や「営業権」という言葉が登場します。これらは、企業経営において将来の収益力を生み出す価値を持つ無形資産を指します。具体的には、企業の純資産に上乗せされる価値の要素として「のれん」や「営業権」が挙げられます。ブランド力の大きな企業ほど「のれん代」が大きくなる傾向があり、それにより企業価値が一層高まるイメージを持つことができるでしょう。
M&A(企業の合併・買収)において、買収価格を決定する上で重要な要素の一つが「営業権」や「のれん」です。これらは譲渡金額を設定する際に非常に重要な役割を果たします。多くの経営者は、営業権の売却を考え始めると、その評価がどのように高くなるのか気になることでしょう。
M&Aにおける「営業権」や「のれん」は、ブランドやノウハウに限らず、情報や人材、将来の収益を生み出す元となる無形資産全体を指します。M&Aの譲渡価格の交渉においては、買収時点での資産の評価額だけでなく、その企業が持つブランド価値や独自の技術力、信用力などが総合的に評価され、将来的な収益力を元に算定されます。
企業が既に保持している資産や負債の価値はある程度明確に数値化されていますが、営業権やのれんは目に見えない価値が評価の対象となります。将来得られると期待される収益に基づいて、買収価格が上乗せされるのです。
例えば、ベンチャー企業やスタートアップが大企業に高額で買収されるケースの多くは、営業権やのれんが大きく評価された結果によるものです。独自の技術や革新的なサービス、強力なブランドを持つこれらの企業は、それらが高く評価されるのです。買収側の企業は、これらの無形資産から得られる将来の収益を見込むために高い買収価格を提示することができます。
営業権と のれん は、M&Aにおける買収価格の決定において重要な概念です。ここでは、それぞれの違いを説明します。
営業権とは、会社が長期間にわたって収益を上げるために重要となる無形固定資産の一つです。この無形固定資産には、営業権の他に特許権や商標権などが含まれます。営業権には、企業のノウハウやブランド力、情報や人材など、将来収益を生み出す元となる無形資産が含まれています。具体的には、以下のような要素があります。
例えば、純資産が1,000万円の企業に2,000万円の営業権を加算し、合計3,000万円で買収する場合があります。このように、企業の純資産に営業権を加算して算定されるM&A価格が一般的です。収益力が高い会社ほど営業権が高く評価される傾向がありますが、業績が悪い場合には負の営業権としてマイナス評価されることもあります。
一方、のれんとは、会社の買収において「実際の買収額」が「買収された会社の純資産額」を上回る分の差額を指します。具体的には、買収価格から純資産を控除したものがのれんです。のれんは、最終的なM&A価格から純資産を減算することで算出されます。この差額は、2006年の会社法施行により「のれん」と定められました。
営業権とのれんは、どちらも買収会社の価格と純資産の差額を表すものであり、ほぼ同義とみなして差し支えありません。しかし、それぞれの用語は歴史的背景と会計上の取り扱いに違いがあります。
営業権とのれんは、M&Aにおいて、企業の買収価格がその企業の純資産額を上回る部分を表しています。これは、買収される企業が持つブランド力、顧客基盤、従業員の能力、技術力、その他の無形資産の価値を反映しています。
営業権は、会社法施行以前には会計上の勘定科目として使用されることもありました。企業のノウハウやブランド力、顧客リストなどの無形資産全体を指し、「純資産+営業権=M&A価格」という考え方が使われていました。
一方、のれんは、2006年の会社法施行以降に会計上で正式に定義されました。のれんは、買収価格から純資産額を差し引いた差額として計上されます。つまり、「M&A価格-純資産=のれん」ということです。このため、現在の会計基準では、営業権という勘定科目は使用されず、のれんとして扱われることが一般的です。営業権と同様に、無形資産の価値を表しますが、計算方法と表記が変更された点が重要です。
それでも、「純資産+営業権=M&A価格」というシンプルな概念がわかりやすいため、M&Aの現場では営業権の名称が使われることがあります。このように、営業権とのれんは同義でありながら、会計上の取り扱いや歴史的な背景に違いがあることには留意が必要です。
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M&A(合併と買収)は、企業の成長戦略として重要な手段です。しかし、その過程では多くの注意点があります。中でも、簿外債務と偶発債務の理解は重要です。これらの債務は企業の財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があり、M&Aを成功させるためには正確に把握し、適切な対策を講じることが求められます。そこで本記事では、簿外債務と偶発債務について詳しく解説し、その対策方法についてもご紹介します。
簿外債務とは、文字通り「帳簿外」に存在する負債で、財務諸表には記載されていないものの、将来的に支払い義務が生じる可能性のある負債を指します。例としては、未引当の退職金、リース契約による将来の支払い、未払い残業代などが挙げられます。これらは財務諸表には記載されないため、一見、企業の財務状態が健全に見えますが、実際には潜在的なリスクを抱えている場合があります。
中小企業では、財務諸表が税務会計の基準に基づいて作成されているため、将来的な支払い義務が反映されないことがよくあります。税務会計は税金計算を目的としているため、将来の費用や損失の引当金を必ずしも計上しなくて済むのです。例えば、来期に賞与の支払いが見込まれていても、当期の貸借対照表に反映されないことがあります。上場企業ではこれらの項目が会計基準に従って適切に反映される一方で、中小企業では見落とされがちです。
さらに、訴訟リスクや保証債務など、将来特定の条件が満たされた場合に発生する可能性のある債務は、貸借対照表に計上されないため、M&Aを行う前にはこれらも簿外債務として認識しておく必要があります。これらは偶発債務と呼ばれます。
簿外債務にはさまざまな種類があり、以下のように分類できます。
M&Aを成功させるためには、簿外債務や偶発債務を正確に把握し、適切な対策を講じることが重要です。以下に、具体的な対策を示します。
デューデリジェンスは、M&Aの前に対象企業の財務状況や法務リスクを詳細に調査するプロセスです。財務、法務、税務の専門家を起用し、対象企業の全ての債務を徹底的に調査し、経営陣や従業員へのインタビューを通じて、簿外債務や偶発債務の存在を確認することが必要です。
契約に表明保証条項を追加し、売り手に対して簿外債務や偶発債務が存在しないことを保証させます。表明保証条項とは、売り手が提供する情報の正確性を保証する条項で、万が一虚偽の情報があった場合に損害賠償を請求する根拠となります。
適切な保険を契約することで、偶発債務に対するリスクを軽減します。また、企業内部でリスク管理体制を整備し、定期的な監査を実施することが重要です。
M&Aのプロセスにおいて、事前および事後に簿外債務や偶発債務が発見された場合、適切な対処が必要です。以下に、買い手の立場からの対処方法を事前と事後に分けて説明します。
M&Aの事前の対処では次の点への留意が必要です。
簿外債務や偶発債務が発見された場合、その金額を考慮して買収価格を再交渉します。財務、法務、税務の専門家を起用し、対象企業の全ての債務を徹底的に調査し、経営陣や従業員へのインタビューを通じて、簿外債務や偶発債務の存在を確認することが必要です。
契約に表明保証条項を追加し、売り手に対して簿外債務や偶発債務が存在しないことを、事前に保証させます。
M&Aの事後の対処では次の点への留意が必要です。
M&A後も継続的に財務諸表や契約をレビューし、早期に問題を発見します。簿外債務や偶発債務が発見された場合、速やかに対応し、必要な資金やリソースを確保します。
表明保証条項や補償契約に基づき、売り手に対して損害賠償を請求します。進行中の訴訟リスクについては、適切な法的措置を準備し、必要に応じて弁護士と協力して対応策を講じます。
中小企業のM&Aには、簿外債務や偶発債務といった隠れたリスクが含まれています。これらの債務を見逃すと、取引後に多額の支払いが必要となり、買収の価値が大幅に減少することがあります。事前にはデューデリジェンスの強化や契約条項の見直しを行い、事後には問題の早期発見と迅速な対応、法的措置を講じることで、これらのリスクを最小限に抑え、M&Aを成功に導くことができるでしょう。
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企業の財務健全性を評価する「債務者区分」は、銀行等の金融機関が融資判断をする上で非常に重要です。債務者区分は、企業の財務状況や資金繰り、収益力などをもとに、正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の5つに分けられます。この記事では、特に「破綻懸念先」と「実質破綻先」について詳しく解説します。
破綻懸念先とは、現在は経営破綻には至っていないものの、経営状態が厳しく、経営改善計画の進捗が芳しくないため、将来的に経営破綻に陥る可能性が高いと認められる企業を指します。この区分に該当する企業には、通常、次のような特徴があります。
このような企業に対して、銀行が支援を継続する場合もありますが、将来的には経営破綻に陥るリスクが高いため、新規融資は難しくなることが多いです。ただし、債務超過だからといって、必ずしも破綻懸念先に分類される訳ではありません。債務超過の解消年数がどれくらいかで判断されます。
実質破綻先とは、法的・形式的には経営破綻に至っていないものの、深刻な経営難に陥り、再建の見通しが立たない企業を指します。この区分に該当する企業の特徴は次の通りです。
このような企業に対しても新規融資は困難であり、銀行は早期に回収を試みることが一般的です。
銀行が企業に対する融資条件を設定する際、債務者区分が重要な役割を果たします。特に、「破綻懸念先」や「実質破綻先」として分類される企業は、新規融資の条件が厳しくなります。これは、銀行が将来の貸倒リスクに備えるために積み立てる「貸倒引当金」の負担が増加するためです。正常な取引先と比較して、リスクの高い企業に対しては、より多くの引当金が必要となり、その結果、銀行のコストが上昇します。このため、銀行は利益を確保するのが難しくなり、金利の引き上げやその他の厳しい融資条件が適用されることがあります。
企業が銀行から適切な融資を受けるためには、銀行が自社をどのように評価しているかを理解することが不可欠です。銀行ごとに評価基準が異なるため、同じ企業でも取引銀行によって評価が変わることがあります。最近では、企業からの照会に対して、銀行が債務者区分を含めた評価状況を開示するケースが増えています。そのため、取引銀行に問い合わせるのもひとつの方法です。これにより、銀行のスタンスを把握し、将来的な資金調達計画を適切に立てることができます。
債務者区分は企業の経営状況を示す重要な指標です。特に「破綻懸念先」や「実質破綻先」に該当する企業は、金融機関からの信頼を回復するために、迅速な経営改善策の実施が求められます。銀行との良好な関係を築きつつ、健全な財務体質の確立を目指し、事業再編やM&Aなどの経営再建手法を検討することも重要です。これにより、持続可能な成長と安定した経営を実現するための基盤を整えることができます。
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M&A(合併・買収)などによって企業の経営体制が大幅に変わるとき、取引先が契約の解除や変更を求めることができる「チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項」という重要な契約条項があります。本記事では、その定義と目的、具体例、メリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。
「チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項」とは、ある企業の株主構成が大きく変更されたり、経営陣が全面的に交代したりするなど、実質的な経営権や支配権が移転した場合に、取引先企業が契約の解除や条件変更を求めることができる権利を規定する契約条項です。
COC条項の目的は、経営権移転に伴う取引関係へのリスクを管理し、取引先企業に不利益が生じるのを防ぐことにあります。新経営陣の方針変更や財務体質の変化により、契約関係が損なわれかねないためです。また、重要な技術やノウハウが適切でない企業に渡るリスクを回避し、取引関係の安定性を確保することも狙いです。さらに、敵対的買収への防衛策としての役割も期待されることがあります。
COC条項は、通常、取引の基本契約書などに盛り込まれます。以下は典型的な条文例です。
「A社の株式の過半数が第三者に譲渡される場合、A社は事前にB社に対してその旨を文書で通知しなければならない。」
「A社およびB社は、相手方が経営統合、会社分割、事業譲渡、または株式の過半数の譲渡などにより、経営権に重大な変更が生じた場合、事前の通知なしに本契約を解除する権利を有する。」
ここでは、COC条項が実際にどのように機能するかを具体例を通じて解説します。
B社は特殊な技術を持ち、A社と技術供与契約を結んでいます。契約には「A社が第三者に買収された場合、B社は契約を解除できる」とのCOC条項が含まれています。
A社が競合企業であるC社に買収されることになりました。B社は競合企業に技術が渡るのを防ぐため、契約を解除しました。
D社は安定した財務状況を持つE社から原材料を調達しています。契約には「E社が他社に買収された場合、D社は契約を解除できる」とのCOC条項が含まれています。
E社が信用度の低いF社に買収されました。D社は財務リスクを避けるため、契約を解除しました。
H社はG社から重要なサポートを受けており、契約には「G社が買収された場合、H社は契約を解除できる」とのCOC条項が含まれています。
G社がI社に買収され、サポート体制の変更が予定されました。H社は安定したサポートを受けるために、契約を解除しました。
ここでは、COC条項の主なメリットとデメリットについて解説します。
COC条項のメリットは次の通りです。
競合企業に買収された場合でも、取引先企業が契約を解除することで情報や技術の流出を防ぐことができます。これは、取引先企業(買収される企業の取引先)にとって重要な利点です。
取引先が経営権に変更の可能性について懸念を示したとき、契約にCOC条項を盛り込むことで取引先の不安を軽減し、取引関係を継続できることができます。これは買収される側の企業にとってのメリットです。
取引先がCOC条項を利用して契約を解除することで、企業価値が低下するケースが考えられます。例えば取引がなくなることで売上が減少する場合や、販売の権利を失うような場合です。これは敵対的買収者が計画を断念する可能性を高めることになります。
一方で、COC条項には次のようなデメリットがあります。
COC条項の行使によって取引先に契約が解除されると、予定していた事業計画が崩れるリスクがあります。これは主に売り手側となる企業のデメリットです。
COC条項による契約解除に起因して企業価値が低下すると、M&Aの期待効果が減少し、取引自体が破談になる可能性があります。これは買い手企業と売り手企業双方のデメリットです。
COC条項が存在することで、潜在的な買い手がリスクを懸念し、買収を躊躇する可能性があります。これは主に売り手企業にとってのデメリットです。
買い手企業は、M&Aの初期段階でCOC条項の有無や内容を確認することが重要です。これにより、M&A後の取引先との関係維持のリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。一方で、売り手企業は取引先から取引継続の確約を得るために、事前に取引先とコミュニケーションを図る必要があります。これにより、M&A後も円滑なビジネス運営を続けることが可能になります。買い手と売り手の双方がCOC条項を適切に理解し対応できれば、M&A成立の可能性が高まることでしょう。
COC条項は、企業の支配権や経営権の変更が契約関係に与える影響を管理し、契約当事者のリスクを軽減するために設けられています。買い手企業と売り手企業の双方が、COC条項を有効に活用し、取引先との契約関係を適切に管理することが重要です。具体的なリスク管理や対応策については、M&Aや法律の専門家に相談することをおすすめします。
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経営上の困難に直面している中小企業・小規模事業者に向けた救済策、それが「経営改善計画策定支援事業」です。この事業は、財務上の問題に直面し、自力で経営改善計画を策定することが難しい企業に対し、専門機関の支援を通じて経営の健全化を図ることを目的としています。
経営改善計画策定支援事業は、経営改善計画の策定と実施に必要な支援を提供し、中小企業や小規模事業者の経営健全化を促進します。この事業により、中小企業・小規模事業者は、中小企業経営力強化支援法に基づき認定された経営革新等支援機関(以下「認定支援機関」)のサポートを受けながら、経営改善計画を策定することができます。国が計画策定費用の一部を負担することにより、企業の経営改善がより進めやすくなります。なお、経営改善計画策定支援事業は2013年3月に開始されましたが、その時の予算額が405億円であったため、通称「405事業」と呼ばれています。
この支援事業の主な対象は、財務上の問題を抱え、特に金融支援を必要とする中小企業や小規模事業者です。返済負担が重く、自ら経営改善計画を策定することが難しい状況にある企業が、この事業を通じて専門家の支援を受けることができます。
経営改善計画策定支援事業を通じて、中小企業活性化協議会が計画策定費用及び伴走支援費用の一部を負担します。これにより、企業は経済的負担を軽減しつつ、専門家(認定支援機関)の支援を得ながら経営改善に取り組むことが可能になります。認定支援機関には、商工会議所や税理士、公認会計士、弁護士等の専門家が含まれます。
405事業の支援対象となる費用項目と補助率・上限額は以下の通りです。中小版GL枠は、特に事業再生等を支援する目的で設けられており、通常枠に比べて支援金額の上限が大きい点が特徴です。
支援対象費用 | 補助率 | 上限額 |
---|---|---|
DD・計画策定支援費用 | 2/3 | 上限200万円 |
伴走支援費用 | 2/3 | 上限100万円 |
金融機関交渉費用 | 2/3 | 上限10万円 |
支援対象費用 | 補助率 | 上限額 |
---|---|---|
DD費用等 | 2/3 | 上限300万円 |
計画策定支援費用 | 2/3 | 上限300万円 |
伴走支援費用 | 2/3 | 上限100万円 |
経営上の困難に直面している中小企業や小規模事業者にとって、「経営改善計画策定支援事業」の活用は、経営改善に向けた有効な手段です。この支援事業は、財務上の問題に直面している企業が専門家の支援を受けながら経営改善計画を策定し、実行に移すための枠組みを提供します。専門家による計画策定や伴走支援の費用の一部を国が負担することで、より多くの企業がこの機会を利用できるようになっています。経営の健全化を目指した経営改善に向け、検討と活用をおすすめします。
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事業再生やM&Aを行う際に十分注意すべきなのが「詐害行為(さがいこうい)」という法的リスクです。この記事では、詐害行為とその法的意義についてわかりやすく説明し、債権者と債務者の双方の視点から、リスクと対処法についても解説します。
詐害行為とは、債務者が意図的に自己の財産を減少させる行為を指します。この行為により、債権者がその債務者から適切な弁済を受ける能力が損なわれる可能性があります。例えば、ある債務者が自身の不動産を市場価格よりもかなり低い価格で急いで売却し、その代金を隠した場合、これは典型的な詐害行為の一例と見なされます。債務者は、債権者からの差し押さえを避けるために、財産の価値を意図的に減少させています。このような行為は、債務者が債権者からの正当な債権回収を阻害しようとする試みとして行われることが一般的です。
詐害行為取消権は、債権者が詐害行為により失われた財産を回復する法的手段です。その行使には以下の要件が必要です。
債務者にとっては、特に財政的に困難な時期において、詐害行為と見なされかねない行動を避けることが重要です。透明性を持って債権者と協議を行い、必要に応じて第三者の評価を受け入れることで、事業再生やM&Aが正当な方法で進行するよう注意が必要です。
詐害行為は、M&Aや事業再生を巡る重要な問題の一つです。この問題に対処するには、債権者と債務者がそれぞれのリスクを深く理解し、公平性と透明性を保ちながら互いの利害を調整することが求められます。しかし、詐害行為の問題は複雑で、その解決には専門的な知識と経験が必要です。そのため、詐害行為に関する問題に直面した場合は、法律家や専門家へ相談することをお勧めします。最終的には、双方の開かれた対話と協力、そして専門家の助けが解決の鍵となるでしょう。
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